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インタビュー

公開日 : 2017 年 12 月 07 日
更新日 : 2017 年 12 月 07 日

周産期心筋症は、もともと心臓病のなかった方が周産期に心不全を発症する疾患です。記事1『周産期心筋症とはどんな病気? 原因・症状・合併症について』では、周産期心筋症の原因や症状についてご説明しました。本記事では、周産期心筋症の検査と治療、患者さんの予後について、熊本大学医学部附属病院の河野宏明先生にお話を伺います。

周産期心筋症の検査

心臓超音波検査(エコー)・心電図・血液検査・胸部レントゲン撮影を行う

周産期心筋症を疑うときには、基本的に心臓超音波検査(エコー)、心電図、血液検査を行います。加えて、多くのケースでは産科の主治医と相談のうえ胸部レントゲン撮影を行います。また心臓カテーテル検査を行うケースもありますが、これは母体が放射線を浴びるため、胎児への影響を考慮し、出産後に限り検査が検討されます。

【周産期心筋症の検査】

  • 心臓超音波検査(エコー)
  • 心電図
  • 血液検査
  • 胸部レントゲン撮影
  • 心臓カテーテル検査(出産後に限り検討する)

周産期心筋症の治療—慢性的な症状への治療

基本方針:最終的には薬なしで過ごせる状態を目指す

周産期心筋症の患者さんの多くは、慢性的な症状に対する薬物治療を行い(詳しくは後述します)、心臓の収縮力の回復を試みて、最終的には薬なしで生活できる状態を目指します。

(1)利尿剤による治療

周産期心筋症の治療では基本的に、まず利尿剤を使います。周産期心筋症は記事1『周産期心筋症とはどんな病気? 原因・症状・合併症について』でお話したように、心臓の収縮力が低下して起こります。心臓のなかで最も重要な役割を果たしているのが、左室です。左室は大動脈に血液を送り出す、つまり血圧を作り出している部分です。心臓はこの左室を中心に収縮と拡張を交互に繰り返しています。

心臓の収縮力が低下すると、左室から大動脈に血液が出て行かなくなります。一方、左室には左房から血液が流入します。左室から血液が出て行けないということは、左室に血液が残っていることを意味し、左房に血液が停滞することになります。左房には酸素をたくさん溶かした血液が肺から流入します。しかし、左房に血液が停滞すると肺から左房に血液が流れなくなり、肺に血液が溜まることになります。これが心不全の状態です。空気が入るべき肺の中に液体の血液成分があふれてしまうのです。このことを肺水腫と呼びます。結果として呼吸困難が出現します。このような場合、利尿剤によって体内の水分量を減らし、心臓の負担を軽減します。

利尿剤の副作用:腎障害と胎児への影響

利尿剤は腎臓への負担が大きく、副作用として腎障害を起こすことがあります。

また胎児に栄養を送るためには、子宮や羊水の量を十分に確保しなければなりません。しかし母体に利尿剤を使うと、体内の水分量・血液量が減ってしまいます。胎児に十分な栄養を送るという視点では、利尿剤の使用は好ましくないのです。さらに、利尿剤は子宮内の羊水の量を減少させます。

周産期心筋症の患者さんは水分摂取量、塩分摂取量に注意

利尿剤には副作用があるため、使用を必要最低限に抑えることが理想です。そのためには、水分摂取量について留意すべきでしょう。夏にはテレビなどで水分をこまめにとるよう注意喚起がされますが、周産期心筋症の患者さんは心臓の収縮力低下によって体内の水分を排出しにくい状態ですから、一概に水分を摂取するのがよいとはいえません。ましてや利尿剤による治療をしている場合には、その効果を半減させることにもなります。周産期心筋症の患者さんは、主治医とよく相談し、自身の適切な水分摂取量を理解しておくことが大切です。また、塩分は体内に水分貯留を引きおこします。塩分の摂取にも十分にご注意ください。

コップに入った水

(2)降圧剤や塩分制限による血圧のコントロール

血圧が高い場合には、降圧剤や塩分制限、利尿剤(血圧を下げる効果があります)によって血圧のコントロールを行います。入院中に塩分制限をする際には、1日7gを目安に食事内容を調整します。

(3)患者さんに合わせた薬剤治療を継続的に行う

先に述べたように、慢性的な症状に対しては体内水分量の調節や血圧のコントロールを行います。夏には水分摂取量が増え、冬には塩分摂取量が多くなるといった季節的な生活の変化を考慮しながら、患者さんの状態や食事内容を加味して、オーダーメイド的に薬物治療を継続します。最終的に、薬なしで生活できる状態を目指します。

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