はいこうけつあつしょう

肺高血圧症

最終更新日
2017年04月25日
Icon close
2017/04/25
掲載しました。

概要

肺高血圧症とは、肺の中を流れる血管の圧が高まり、その結果心臓に負荷がかかるようになる病気です。発症初期は症状がはっきりしませんが、進行すると動いたときの呼吸困難、息切れ、疲れやすさなどを自覚するようになります。最終的に右心不全となり、死に至ることもある疾患です。

なお、肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)では、「肺高血圧症は様々な原因により肺動脈圧が持続的に上昇した病態で、右心不全/呼吸不全が順次進行する予後不良の難治性疾患として知られている」と記載されています。

肺高血圧症は膠原病強皮症混合性結合組織病など)や血栓などを原因とすることもあれば、明らかな原因が特定できない場合もあります。

無治療のままで放置すると亡くなることも多い病気です。また、20〜30歳代の女性に多いこともあり、疾患そのものの治療はもちろんのこと精神面のサポートも重要である疾患です。

原因

肺高血圧症は、肺の中を流れる血管が狭くなることを原因として発症します。

肺の血管が狭くなる原因としては、たとえば膠原病が挙げられます。膠原病では、血管に炎症や線維化(線維のように固くなること)が生じるためです。

その他、脚の血管などで形成された血栓(血液の塊)が、肺動脈を塞ぐことで生じることもあります。この場合、血栓は血流により心臓を経由して肺動脈へ到達します。

またHIV感染症、門脈圧亢進症、先天性(生まれつきの)心疾患の一部、遺伝性疾患、薬物なども肺高血圧症の原因となります。

その他にも、左心性心疾患や肺疾患、低酸素血症による肺高血圧症があります。明らかな原因を特定できないこともあり、特発性肺動脈性肺高血圧症と呼ばれます。

肺高血圧症では肺の血管が狭くなっているため、そこに血液を送る右心室に大きな負担がかかります。この状態が継続した場合、右心不全を来すことがあります。

症状

肺高血圧症は、肺の中を流れる血管の圧が高まり、その結果心臓に負荷がかかるようになる病気ですが、初期段階では明らかな症状はありません。病状が進行すると日常生活のなかのちょっとした動作に関連して息切れを来すようになります。

また、疲れやすい、動悸(どうき)がする、咳が出る、胸が痛くなるといった症状をみることもあります。肺高血圧症にて右心不全が進行すると、亡くなることもあります。

検査・診断

肺高血圧症の診療では、胸部単純レントゲン写真、心電図、血液検査、心エコーなどが簡便な検査として行われます。

胸部単純レントゲン写真

右心房・右心室の拡大や、肺動脈の拡張が確認されます。

心電図検査

右心系への負荷を確認することができます。

血液検査

BNPと呼ばれる検査項目を通して心不全の状況を評価することが可能です。

心エコー検査

右心系への負荷をリアルタイムに評価することが可能です。

肺の血圧が上昇していることを実際の測定値として確認するためには、心臓カテーテル検査が必要となります。心臓カテーテル検査は、患者さんの体への負担がやや大きい検査です。

そのほかに必要に応じて、CT、MRI、核医学的検査(換気血流シンチグラフィー)、運動負荷検査などを行います。

治療

肺高血圧症の治療の主な目的は、肺の血管を拡張させることです。

さまざまな投与方法(注射や経口、吸入、皮下投与など)の治療薬があり、病状に応じて選択されます。具体的に使用される薬剤としてはエンドセリン受容体拮抗薬、PDE-5阻害薬、プロスタグランジンI2誘導薬などがあります。また利尿剤やカルシウム拮抗薬が使用されることもあります。

その他、在宅酸素療法を含めた酸素療法が適応になることもあります。また、肺移植も検討されることがあります。

血栓が原因となって肺高血圧症を発症している場合には血管拡張薬の効果は乏しいです。そのため、血栓を取り除くための処置(手術もしくはバルーン肺動脈形成術)がなされます。

膠原病やHIV、先天性心疾患などが原因となっている場合には、これら基礎疾患に対しての治療を行うことも重要です。

医師の方へ

肺高血圧症の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。

この病気の詳細を調べる

「肺高血圧症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

関連の医療相談が12件あります

※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

肺高血圧症を得意な領域としている医師