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「呼吸困難(息切れ・息苦しい)」の原因は何か?息苦しさを引き起こす肺高血圧症とは?

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  • 公開日:2017/02/01
  • 更新日:2017/03/17
「呼吸困難(息切れ・息苦しい)」の原因は何か?息苦しさを引き起こす肺高血圧症とは?

目次

「息切れ」や「息苦しさ」を感じた時、どのような原因が考えられるでしょうか。これらの訴えで病院を受診される方はとても多く、原因も多岐に渡ります。長年の喫煙が引き起こす慢性閉塞性肺疾患(COPD)、狭心症に心不全などを想起される方が多いのではないでしょうか。

そんな「息切れ」や「息苦しさ」を引き起こす原因の一つに、「肺高血圧症」という病態があります。特別な誘引なく起こる特発性のもの、膠原病などから二次的に発症するもの、そしていま最も注目されているものに肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)から進行する慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)があります。

この記事では横須賀市立うわまち病院循環器内科部長の岩澤孝昌先生に、肺高血圧症について、そしてCTEPHについてお伺いしました。

肺高血圧症とは?

肺高血圧症とは?肺動脈の血圧が上がる病気

肺高血圧症は、何らかの原因によって肺動脈圧が上昇することにより右心系に負荷がかかり、その結果、右心不全をきたす病態です。肺高血圧症にはさまざまなタイプがありますが、指定難病である肺動脈性肺高血圧症をはじめその多くが難治性です。また代表的な自覚症状は「息切れ」ですが、肺高血圧症にだけみられる特別な症状はないため、病院受診が遅くなったり受診してもなかなか診断に結びつかないことも少なくありません。肺動脈性肺高血圧症は男女比が1:2.6と女性に多いうえに、平均年齢も42歳と若くして罹患するのが特徴です。

肺高血圧症の定義、分類と原因

肺高血圧症は血液検査の結果や腫瘍のように異物の存在から診断されるものではありません。ある一定の水準より肺動脈圧が高いか、により診断されます。まずは心臓超音波検査で推定値を出し、疑いが高ければ心臓テーテル検査で実測値をとるのが一般的です。

また、肺高血圧症の定義は4~5年ごとに開かれる国際会議の場(2008年 Dana Point、2013年 Nice)で見直しが行われています。2016年現在、2013年のニースで策定された定義(ニース分類)が利用されていますが、その定義では下記に該当する患者さんが肺高血圧症・重症肺高血圧症と診断されます。

  • 安静時平均肺動脈圧 ≧ 25mmHg:肺高血圧症
  • 安静時平均肺動脈圧 ≧ 35mmHg:重症肺高血圧症

安静時平均肺動脈圧はスワンガンツ(Swan-Ganz; S-G)カテーテルと呼ばれる右心カテーテル法により測定します。20mmHg以下が正常値であり、20~25mmHgの範囲はその境界となります。

肺高血圧症の分類と原因

第五回肺高血圧ワールドシンポジウム

2013年のニース分類では、肺高血圧症を原因の違いにより以下の5群に分類しています。

第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)

  • 第1’群:肺静脈閉塞性疾患および/または肺毛細血管腫症
  • 第1’’群:新生児遷延性肺高血圧症

第2群:左心性心疾患による肺高血圧症

第3群:肺疾患や低酸素血症による肺高血圧症

第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)

第5群:原因不明の複合的要因による肺高血圧症

このように、肺高血圧症の種類やその原因は多種多様ですが、この5分類の中でも我々医師にとって特に重要なものは特定疾患として難病に指定されている第1群の肺動脈性肺高血圧症(PAH)と第4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)です。一方、症例の数でいえば、第3群の患者さんが多いことがわかっています。

肺高血圧症はどうして起こる?肺動脈が狭くなるメカニズムとは

肺高血圧症には様々な分類があり、それについては前述したとおりです。それでは肺動脈内の血圧はどのように上昇するのでしょうか。大きく分けて次の2種類があります。

  1. 肺動脈内腔が狭くなるため(肺動脈内腔狭小化)
  2. 肺動脈の先の肺組織や左心系(左心房と左心室)の抵抗が上がり血液を送り出しにくくなっている

第1群と第4群が1.に、第2群と第3群が2.に当てはまります。

1.についてはさらにそれぞれのメカニズムがあります。

肺動脈内腔狭小化の原因

① 血管収縮

私たちの体の中には、血管を拡張させる因子と収縮させる因子があります。肺高血圧症の患者さんの体の中では、血管を拡張する因子が少なくなり、逆に血管を収縮させる因子が増えていると考えられています。

② リモデリング(再構築)

血管の内部を構成するさまざまな細胞が異常に増殖し、血管の内側の厚みが増していきます。

③ 血栓

血管が傷ついたときに出血を防ぐために作られる血のかたまりを血栓(けっせん)といいます。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)では、血栓を肉芽組織が取り囲み、吸収するなどして器質化した状態がみられます。

「息切れ」「息苦しさ」の症状がある場合、まず肺高血圧症を疑ってみる

肺高血圧症の患者さんはどれくらいいるのか

特定疾患医療受給者証交付数

肺動脈性肺高血圧症(PAH)と慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は特定疾患になっているため、医療受給者証の交付数から患者数の動向を判断することができます。平成25年時点で肺動脈性肺高血圧症(PAH)がおよそ2,500人、そして2010年(平成22年)頃を境に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という病態もぐっと増えてきているという傾向がみられます。

肺高血圧症症例の平均年齢・性別

横須賀市のデータでは肺高血圧症発症時の平均年齢はおよそ70歳と高齢で、その内訳は女性が64%、男性が36%という比率になっています。

残念ながら肺高血圧症固有の症状はない

肺高血圧症の初期によくみられる症状

  • 軽い動作をしたときの息切れ
  • 呼吸困難(息苦しさ)
  • 全身倦怠感、疲労感
  • 立ちくらみ、めまい
  • 顔、足などのむくみ

肺高血圧症の進行期にみられる症状

  • 運動時の動悸(どうき)、めまい、失神
  • せき、喘鳴(ぜんめい・呼吸時のゼイゼイ音)、嗄声(かせい・声のかすれ=肺動脈拡張による反回神経障害)、血痰
  • 胸痛
  • 腹囲増加(腹水)
  • うつ状態(疲労からくる精神的ストレスのため)

肺高血圧症の症状を詳しく診ていくと、「軽い動作をした時の息切れ」と「呼吸困難」が重要であることがわかります。立ちくらみやめまい、足のむくみなどは右心症状であり、これらの症状が出ているということは右心不全をきたしており、もはや軽い症状ではありません。

肺高血圧症を早期発見するために知っておきたいこと

年齢のせいにせず、違和感があった場合は早めの検診が重要

軽い動作や運動をしたときに息切れがあった場合には、その「息切れ」という主訴を重要視し、できればそれが軽い運動のときに出た段階で見つけることが大切です。我々は地域の内科医の先生方に、失神したりむくみが出てきたりしたときにはもう遅いのだということをお伝えし、「息切れ」が労作や運動に伴って出てきたときには、なるべくその時々で早めに教えてくださいということをお願いしています。肺高血圧症の患者さんは中高年の女性に多くみられるため、更年期や貧血の症状ではないかということで見過ごされてしまうと、肺高血圧症の診断にたどり着くことが困難です。「息切れ」といえば「肺高血圧症」も鑑別にいれるという意識付けが重要です。

私たちの体はじっとして動かないでいると肺動脈圧はあまり上がりませんが、肺高血圧のごく初期の段階では運動時に肺動脈圧の上昇が顕著になるとされています。そこで、カテーテル検査をする部屋で寝たまま自転車を漕いでもらい、その状態でスワンガンツカテーテルを使って肺動脈圧の上昇をみるという検査を行っている病院もあります。

肺高血圧症の診察所見は早期発見には役立たない

肺高血圧症の診察所見としては下記のものが挙げられます。

聴診所見

  • 第2心音(S2)の亢進
  • P2成分の亢進
  • 右室S3、
  • 三尖弁逆流
  • 肺動脈閉鎖不全雑音

右心不全の徴候

  • 頚静脈圧の上昇
  • 肝腫大
  • 肝の拍動
  • 足の浮腫(むくみ)
  • 腹水など

肺高血圧症を合併する病態の臨床所見

  • 強皮症の皮膚変化
  • 肝疾患の出血斑
  • ばち指(先天性心不全)
  • 異常な呼吸音など

しかし、これらはある程度、肺高血圧症が進行してからあらわれる所見が多く、あり、早期発見にはあまり役に立ちません。たとえば、聴診所見や右心不全の症状などがそれに当たります。そのため自覚症状を注視する必要があります。

心電図に関しては、肺高血圧症のときに出てくる特徴的な心電図所見がいくつかあります。しかし、我々が調査したところではこれも残念ながら相当進んでからでなければみられないということがわかりました。

見過ごされている肺高血圧症の患者さんは非常に多い

肺高血圧症の患者さんの多くは普通に外来を受診し、「息が切れる」などの症状を訴えています。しかしその段階では胸部X線撮影でも「異常なし」とされる方がほとんどだったということです。紹介元別にデータをみると救急搬送されてくるような方は9%と少なく、近隣の病院や一般のクリニックからの紹介がほとんどです。

肺高血圧症という病気は頻度が高くないと思われていますが、実は目の前に患者さんがいて息切れを訴えているのかもしれません。そして特徴的な所見がないために、そのままスルーされやすい患者さんが想像以上に隠れているとも考えられるのです。

データで見る肺高血圧症の自覚症状

肺高血圧症105症例の自覚症状

横須賀市のデータから自覚症状の内訳をみても、半分の方はやはり息切れを訴えています。そして4分の1の方がさらに呼吸困難までを訴えています。胸痛を訴えていたのは13人、むくみを訴えていたのは8人、失神も8人です。このあたりの症状が出ているのはもう重症の方ということになります。心肺停止で救急搬送されて肺高血圧症だとわかった方も5人いらっしゃいました。非常に重い症状から軽い症状まで多岐にわたっていますが、多くの方はやはり軽い症状を訴えて来られているということがわかります。

早期発見に有効な検査 - 心臓超音波検査・心カテーテル検査

早期発見には心臓超音波検査(ドップラーエコー)が最も有用

「肺高血圧症の症状」でも述べたように、胸部X線撮影や心電図検査で所見が現れるのは肺高血圧症がかなり進んだ段階になってからです。これは胸部CT検査でも同じことがいえます。より早期のうちに発見するためにもっとも有用なのは心臓超音波検査(ドップラーエコー)です。

心臓超音波検査が最も有用

より詳しい検査には心カテーテル検査が有効

また、肺高血圧症の確定診断や経過を診ていく上では、心カテーテル検査による肺動脈圧の測定が必要になります。基本的にスワンガンツカテーテルと呼ばれる心カテーテル検査を行います。このカテーテル検査によって安静時の平均動脈圧が25mmHg以上であることが肺高血圧症診断の基準になります。

超音波検査はあくまでもスクリーニングのためのものであり、その結果だけで薬剤による治療を開始するわけではありません。必ずこの心カテーテルの検査に基づいて、25mmHg以上であれば治療介入して積極的に圧を下げるようにします。

肺高血圧症の治療分類

先にもご説明しましたが、肺高血圧症は下記のとおり分類されます。肺高血圧症はその原因も多岐に渡っているため、分類ごとにその治療方法も異なります。

第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)

  • 第1’群:肺静脈閉塞性疾患および/または肺毛細血管腫症
  • 第1’’群:新生児遷延性肺高血圧症

第2群:左心性心疾患による肺高血圧症

第3群:肺疾患や低酸素血症による肺高血圧症

第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)

第5群:原因不明の複合的要因による肺高血圧症

例えば、第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)には投薬治療がメインになります。また、第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)では外科手術がメインになります。

※肺動脈性肺高血圧症(PAH)と慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)について詳しくは以下の記事を参照ください

記事2 「慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する外科治療(PEA)とバルーン肺動脈拡張術(BPA)とは!?」

記事3 「指定難病 肺動脈性肺高血圧症(PAH)は投薬治療の進化が著しい疾患」

PAHとCTEPH以外ではどうでしょうか。第2群の左心不全による肺高血圧症や第3群の肺疾患による肺高血圧症などは、その原因となるそれぞれの疾患をしっかりと治療することが重要になるため、これらについては原疾患に対する治療を並行して行いながら診ていく必要があります。

特に手強いのは肺疾患による肺高血圧症です。肺線維症や間質性肺炎、タバコの吸いすぎによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんなどが肺高血圧症になった場合、薬剤を投与してもむしろ低酸素血症を助長することがあり、今のところ効果的な治療があるとはいえません。ただしCOPDの急性悪化によって右心不全の症状が現れ、なおかつ肺高血圧を合併している患者さんにおいては薬剤を併用すると心不全の状態が良くなるという傾向があり、そのようなケースにおいては薬剤による治療介入の余地があると考えられます。

甲状腺機能の異常はニース分類の第5群、原因不明の複合的要因による肺高血圧症のひとつに列挙されています。我々の研究における肺高血圧症の登録患者さんの中にも甲状腺機能亢進症の方が4名ほどおられましたが、その方々は甲状腺機能亢進症を適切に治療することによって肺高血圧症が治っています。メルカゾールなどホルモン値を抑える働きをする薬剤を投与して、肺動脈圧が正常になったところで再度入院してスワンガンツカテーテル(心カテーテル検査)を行ったところ、まったくの正常値になっていました。

膠原病に関連した肺高血圧症の治療とは?

強皮症(きょうひしょう)などのいわゆる膠原病(こうげんびょう)は、肺高血圧症における重要なキーワードのひとつであるといえます。強皮症は全身性と限局性の2種類に分かれますが、肺線維症になるような全身性強皮症よりも、むしろ指先など末梢の皮膚硬化がみられる限局性の皮膚硬化症と呼ばれる患者さんにおいて、肺動脈圧が40~60mmHgといった高い状態でみつかることがあります。

そのような末梢に生じた強皮症の皮膚潰瘍に対して、肺高血圧症の治療薬であるエンドセリン受容体拮抗薬のボセンタンなどを使うときれいに治るケースがあるということがわかっています。そこで、強皮症に対する薬物治療をきっかけに肺動脈圧がどう変わったかをみてみると、ボセンタンを投与した人の肺動脈圧がはっきりと下がるということがわかってきました。

そのため現在は、膠原病の患者さんに対しても肺動脈性高血圧症と同じようにエンドセリン受容体拮抗薬あるいはPDE5阻害剤といった内服薬を使っていただき、肺動脈圧が上がらないように予防しています。

その他の混合性結合組織病(MCTD)や全身性エリテマトーデスなどの場合は、ステロイドなどを用いてそれぞれの病気に対する治療をしっかりと行うことによって肺動脈圧も下がるため、我々循環器内科医が治療に介入することはあまりありません。

我々はリウマチ内科などで強皮症を含む膠原病を特に扱っている近隣の医療機関と連携をはかり、もちろん横須賀市立うわまち病院の内科でも、患者さんを見逃さないように留意しています。

肺高血圧症診断・治療の課題 -三浦半島地区を例に

2010年当時、この三浦半島地区での肺高血圧症の診断や治療がどうなっていたのかというと、実際のところ十分に浸透・普及しているとはいえない状況にありました。

  • 肺高血圧症患者が診断されているか
  • 診断された患者が最新の治療を受けているか
  • 肺高血圧症の臨床症状、診断、治療方法についての知識を地域で共有し効率的な地域医療連携は確立しているか

患者さんが少なかったということはあるにせよ、バルーン拡張術も普及しておらず、薬剤についても東京や神戸などの先駆的な地域に比べると十分な処方がなされていないというのが実際のところだったのです。そこで横須賀市内科医会で横須賀市立うわまち病院の管理者である沼田先生をはじめとして、肺高血圧症について三浦半島全域をあげて取り組んでいくことが検討されました。

そして2011年、我々横須賀市内科医会では、横須賀市およびこの周辺地域の肺高血圧症患者さんがより早期に診断され、その原因や重症度に適した最新かつ最良の治療を受けられるよう、内科医会自主研究として「肺高血圧症への挑戦」と題した地域医療連携システムの構築を目指しました。

杏林大学医学部循環器内科教授の佐藤徹先生をはじめ、日本国内においてこの領域で一所懸命に取り組んでこられた先生方は、これまで古典的な薬だけで工夫をしながら治療に取り組んでこられました。そういったエキスパートの先生方も新しい薬剤を普及させなくてはいけないということで、我々のところへ講演に来てくださいました。また、他にもさまざまな肺高血圧の先生方を講師に迎えて勉強会も行いました。

肺高血圧症における地域医療連携の実際の流れ

我々は横須賀市内科医会を通じて約400の医療機関にパンフレットを配布し、患者さんに自覚症状が出た場合には、どんな軽い症状でも紹介していただき、超音波検査でスクリーニングを行うようにしました。

スクリーニングの対象となる患者さんは以下の通りです。

①労作時に息切れがある

②12誘導心電図にて以下の所見がある

  • 右房負荷(II 誘導のP波が 0.25 mV 以上)
  • 右室肥大や負荷の所見

▶ V1にてR波が高く、V6にて深いS波を有する

▶ 右軸偏位、右脚ブロック、右室ストレインパターン、SIQIIITIIIの所見を有する

③胸部レントゲンにて肺動脈の拡大や心拡大がある患者

④先天性心疾患、膠原病(特に強皮症、SLE、MCTDなど)、肺疾患があり肺高血圧症が疑われる患者さん

これらに当てはまる患者さんには肺高血圧症が潜んでいる可能性があるため、スクリーニングのために横須賀市立うわまち病院の外来に来ていただくことにしました。医療機関に配布したパンフレットには、典型的な心電図所見と肺の動脈が太くなっている胸部X線画像を掲載しました。

肺高血圧症への挑戦

実際の肺高血圧症の診療の流れを以下に示します。医療連携で肺高血圧症の疑いがあった方については横須賀市立うわまち病院でスクリーニングを行い、そして右心カテーテル検査を施行します。そのときに問題があれば肺動脈造影も行い、膠原病・特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)・慢慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)・先天性心疾患の4つに分けます。そしてその後の治療方針を選択していくという流れです。

横須賀市内科医会における肺高血圧症治療方針

下記のグラフは横須賀市立うわまち病院での2002年からの年次肺高血圧症登録症例数です。今回の研究に登録されたのが、2011年以後の105例となります。

この研究の開始後、肺高血圧症として登録されている患者さんが年々増加傾向であることがわかります。

肺高血圧症例の年次症例数

肺高血圧症への挑戦-積極的な治療戦略とさらなる予後改善をめざして

急性肺塞栓症以外の肺高血圧症82例において、血栓内膜摘除術(PEA)やバルーン肺動脈拡張術(BPA)をはじめ、エポプロステノールのためのカテーテル挿入なども含め、患者さんの体に負担のかかる侵襲的な治療を選択した症例の内訳を以下に示します。

急性肺塞栓症以外の82例において選択された侵略的治療戦術略の内訳

我々のデータは三浦半島の中の出来事であるため、症例数はそれほど多いわけではありません。バルーン肺動脈拡張術(BPA)の施行例も、病変数としては14病変に過ぎません。しかし、今回の活動を通じて肺動脈性肺高血圧症がみつかってきたり、あるいは慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の患者さんでバルーン拡張術が必要な患者さんが出てきたり、中には生体肝移植を予定しているようなびまん性肝内シャントという症例が肺高血圧症をもとにみつかったりしています。

また、急性期に失神で来られた患者さんが肺高血圧症だということで診てみたところ、肺動脈血管肉腫といって、肺動脈内に腫瘍が進展していたという例がありました。この患者さんはかなり若い方でしたが、失神を連続して起こしていました。腫瘍の完全摘出はできませんでしたが、失神しない程度には動脈内のものを外科的に取り除きました。最後は緩和治療を行いながらできるだけ奥さまと一緒に過ごしていただくようにしましたが、1年後に亡くなられています。

横須賀市内科医会における地域医療連携の取り組み「肺高血圧症への挑戦」の成果としては、新たな肺高血圧症の患者がスクリーニングされ、積極的な肺動脈圧正常化を目標とした治療が導入されるようになってきたといえるでしょう。今後もこの活動によって、三浦半島地区における肺高血圧症の予後を改善していくことが求められると考えています。

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岩澤 孝昌

岩澤 孝昌先生

横須賀市立うわまち病院 循環器科 部長

1992年自治医科大学医学部を卒業。2001年より横須賀市立うわまち病院の前身である国立横須賀病院循環器科医師として勤務。

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