概要
混合性結合組織病はリウマチ膠原病のひとつです。厚生労働省では、「全身性エリテマトーデスを思わせる臨床所見、全身性硬化症を思わせる臨床所見、多発性筋炎/皮膚筋炎を思わせる臨床所見が、同一患者に同時あるいは経過とともに認められる」「血液検査で抗U1-RNP抗体が高い抗体値で得られる」という2つの特徴を持つ疾患を混合性結合組織病と定義しています。女性に多く、発症年齢は30〜40歳代が多いといわれていますが、小児から高齢者まであらゆる年齢に発症します。
原因
抗U1-RNP抗体
混合性結合組織病の発症原因はまだ解明されていません。しかしこの病気に罹患した方の血液を調べるとすべての例で抗U1-RNP抗体が陽性を示します。抗U1-RNPとは、自分自身の体の成分と反応を起こす自己抗体のひとつですが、自己抗体の発現が確認されることから、混合性結合組織病はなんらかの自己免疫システムの異常が原因だと考えられています。
遺伝的な要因
混合性結合組織病の発症には遺伝的な要因も指摘されています。しかし、混合性結合組織病そのものが遺伝するということはなく、混合性結合組織病になりやすい体質が引き継がれるという認識でとらえておくのがよいと考えられています。
症状
初期症状としては、寒冷刺激や精神的緊張によって血管が収縮することで手や指が蒼白化したあと暗紫色、紅潮を経て元の色に戻る「レイノー症状」と、手の甲や指が腫れぼったくなる「ソーセージ様手指」が知られています。混合性結合組織病では全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎に似た臨床症状・検査所見が現れますが、どの疾患の特徴が前面にあらわれてくるかで大きく異なります。
混合性結合組織病における全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎に類似した症状
- SLE様症状:多発関節炎、リンパ節腫脹、顔面紅斑、心膜炎、胸膜炎、腎炎(蛋白尿や血尿など)
- 強皮症様症状:手指に限局した皮膚硬化、肺線維症、食道運動機能の低下、消化管病変(食道以外も含む)
- 多発性筋炎/皮膚筋炎様症状:近位筋の筋力低下
肺高血圧症
混合性結合組織病では、肺高血圧症が認められることもあります。肺高血圧症とは、心臓から肺へとつながる血管(肺動脈)の末梢が狭くなり血流が滞ることで肺動脈の血圧が上がってしまう病態です。症状が続くと、肺動脈に血液を送っている右心室(心臓の右側の心室)に大きな負荷がかかり、右心室の機能が低下する右心不全を引き起こし、命に関わる病態となります。
神経症状
そのほかにも、無菌性髄膜炎、三叉神経障害などの神経症状が認められることもあります。無菌性髄膜炎では発熱、髄膜刺激症状が現れます。治療に用いられる非ステロイド性抗炎症薬が発症を惹起している場合があります。三叉神経障害は、三叉神経の第2、3枝領域に好発するとされており、顔面片側性の知覚・味覚障害を呈します。
検査・診断
混合性結合組織病では、抗U1-RNP抗体が陽性であることが必要です。また、全身性エリテマトーデスや全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎にともなう疾患標識自己抗体が陽性になった場合には、混合性結合組織病より全身性エリテマトーデスや全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎やオーバーラップ症候群の可能性を考えます。血液検査の結果から、補体や血球の減少、筋酵素増加などがみられることがあります。
また、混合性結合組織病では肺高血圧症の発症の有無を評価することが重要です。肺高血圧症は心臓超音波検査や心臓カテーテル検査などにより、心臓肥大や右心室の機能を調べることで診断可能です。
治療
混合性結合組織病は発症要因が解明されていないため、根本治療は見出されていません。それぞれの症状を緩和・進行抑制のための治療法(主に薬物治療)が選択されています。レイノー症状や末梢循環障害には禁煙が必要とされています。症状が強く現れている場合には、血管拡張薬(カルシウム拮抗薬、プロスタグランディン製剤)や抗血小板薬が用いられます。
胸膜炎、発熱、関節炎などの軽症から中等症の病態には、プレドニゾロン20〜30mg/日が用いられます。出血傾向を伴う血小板減少、ネフローゼ症候群、重症筋炎、間質性肺炎急性増悪、中枢神経症状などの重症な病態に対しては、プレドニゾロン1〜1.2mg/kg/日のステロイド大量療法やステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日を3日間連続投与)が行われることもあります。
ステロイド薬で効果が不十分な場合や重篤な副作用のためステロイド薬の大量療法ができない場合には、免疫抑制剤が用いられます。近年、難治性病態に対しては早期より積極的にシクロホスファミドの間欠的大量静注療法が行われるようになっています。
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関連の医療相談が2件あります
全身性エリテマトーデスについてのお伺い
10年以上前から関節リウマチの治療をしている母親なのですが、3年前に13万近くあった血小板が半年位で6万くらいになり現在3万位に減ってきました。2018年9月から関節リウマチの薬(リウマトレックス)を止めプレドニゾロンを2㎎から徐々に増やし8㎎まで増やし、血小板の変化を診てもらいましたが変化なく、今年に入りてんかん重積発作で3度救急搬送されました。 検査の結果、MRI、MRA、CT、髄液検査、ウイルス検査、特に問題なし。強いて言うならMRIの画像で脳の表面にベトっとした影があるが解らないとの診断でした。 血小板が減少してしまう症状は外来診察して原因を見つけている間にてんかん重積発作を起こした為原因不明の状態です。 そこでお伺いしたいのが、 全身性エリテマトーデスと言う疾患についてなのですが、現在関節リウマチの治療をしていましたが、自己免疫の変異により全身性エリテマトーデス(中枢神経ループス)を合併する事はあるのでしょうか。 全身性エリテマトーデス(中枢神経ループス)は脳神経への影響がありけいれん、意識障害、精神症状、血小板減少症状が現れ、蝶型紅斑も特徴的だと思うのですが、母親は頬に少し赤みが出てり手のひらが真っ赤になったり、血小板減少し始めてから脱毛、昨年末頃首の痛みや腰の痛みにより寝たきりになる事も多く発熱する事もあり痙攣重積発作も発症しましたが脳卒中や脳外傷、ウイルスも検出されなかったことから全身性エリテマトーデスではないかと予測したのですが可能性はありますでしょうか。 現在は3度目の重積発作後薬による副作用なのか発作の後遺症なのか全身性エリテマトーデスの進行による意識、神経、精神障害なのか解りませんが、寝たきり状態でこちらからの問い掛けにもたまに返答する程度で良く話していた母親ですが今では別人の様に無表情になってしまいました。 今強い抗てんかん薬を投与していますが、もし全身性エリテマトーデスが原因で現在の状況になっているのであれば薬の変更など可能なのでしょうか。 宜しくお願い致します。
リウマチ因子485
今年8月初旬人間ドックを受けました。 要精密検査と、要観察と言う評価があり、とても不安になっています。 RFリウマチ因子 485 白血球 3.9 尿沈渣 白血球10〜19個 赤血球一個以下 細菌+ 扁平上皮20個以上 e- GRF(三式)78.8 中性脂肪 34 血圧 98/52 基準値の範囲外になったのは上記のものです。 「腎、泌尿器の異常は精密検査が必要です。 炎症反応検査の異常については経過観察してください。血圧は基準値より低めです。症状が続けば医療機関を受診してください。」と検診センターよりコメントがありました。 自分でも色々しらべて膠原病の可能性があると思い、膠原病を専門にしている町医者さんに行ったところ、 尿検査は、血尿、尿タンパクがマイナスなので大丈夫、腎機能も軽度低下なので大丈夫、それよりリウマチ因子が高すぎるからなにかの病気を疑うとのことで、採血をしました。 結果は10日後しかわからないそうで、すごく不安です。 先生からはドライアイとドライマウスはあるか?と聞かれドライアイは自覚症状としてかなりあると伝えてます、シェーグレン症候群を疑っているのだと思いますが、リウマチ因子が485と異常値だとどんな病院の可能性がありますか? 関節痛は、右肩関節がしばらく前から痛くて、腕をあげると痛いですが腫れてはいません。 手首や指は異常なしで、湿疹や紅斑はないです。 疲れやすい、だるいは昔からありますが 仕事、家事、育児のせいだと思っています。 ご専門の先生、ご経験のある先生宜しくお願いします
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