概要

皮膚筋炎とは、皮膚や筋肉に炎症が起こる病気の1つです。筋炎はさまざまな原因により生じますが、その中でも膠原病(こうげんびょう)に伴うものが皮膚筋炎と多発性筋炎です。いずれも筋肉に炎症が起こる病気ですが、これらは皮膚の症状によって区別され、特徴的な皮膚症状を伴う場合に皮膚筋炎、伴わない場合に多発性筋炎と診断されます。

膠原病とは、体内の自身の免疫の異常によって体のさまざまな臓器に炎症を引き起こす病気の総称で、代表的な病気として関節リウマチ全身性エリテマトーデス全身性強皮症などが挙げられます。皮膚筋炎でも筋肉以外に関節、肺、心臓、消化管などの臓器が障害され、がんを合併することもあります。

皮膚筋炎と多発性筋炎を併せた患者数は現在、日本国内で2万人以上と推定されています。男女比は1:3と女性に多く、全年齢でみられ、学童期までの小児に小さな発症のピークがありますが、中年以降の発症がもっとも多いとされています。

 

原因

皮膚筋炎は、自己の免疫異常を原因として起こります。免疫は本来、外から体内に侵入してくる抗原(細菌やウイルスなど)から体を守ろうとする防衛システムですが、何らかの原因によって自らの臓器を攻撃してしまうことがあります。

なぜ自己の免疫に異常をきたすのかについてはまだ詳細は解明されていませんが、生まれつきの体質やウイルス感染、紫外線、喫煙といったさまざまな生活環境の要因、がんやそれに対する特定の治療薬などが加わることで発症すると考えられています。

なお、皮膚筋炎は遺伝する病気ではありません。しかし、家族内で発症した例も報告され、免疫に異常をきたしやすい体質は遺伝するとされています。

症状

皮膚筋炎では全ての患者に特徴的な皮膚症状が見られ、大部分の患者で筋肉の症状も見られます。人によっては、関節症状、呼吸器症状、心臓の症状、全身症状などを伴うこともあります。

皮膚の症状

皮膚の症状は皮膚筋炎の代表的な症状の1つです。特徴的な症状として、ヘリオトロープ疹(むくみを伴うまぶたの紫紅色の紅斑)、ゴットロン丘疹(手指関節の伸展部の皮膚表面のかさかさして盛り上がった紅色の皮疹)が挙げられます。

ゴットロン丘疹と同様の皮疹は、手指だけでなく、肘や膝、足首などの関節にも生じることがあり、これをゴットロン徴候と呼びます。日光が当たりやすい部位や物理的な刺激を受けやすい部分にも紅斑が生じやすく、首から胸にかけてV字状に出現するものをV徴候、肩から上背部にかけてショールを巻いたように出現するものをショール徴候、太ももの側面に出現するものをホルスター徴候と呼びます。

このような皮疹はかゆみを伴うこともあり、かゆみから始まる場合もあります。また、皮下脂肪に炎症や石灰化が生じたり、皮膚の潰瘍(かいよう)を形成したりすることもあります。

皮膚筋炎では皮膚症状が必発しますが、筋肉の症状がなく、皮膚症状だけ現れる場合もあり、これを無筋炎性皮膚筋炎といいます。

筋肉の症状

皮膚筋炎の代表的なもう1つの症状が筋肉の症状で、筋肉が障害されることによって疲れやすくなったり、痛みが出たり、筋力の低下に伴い力が入らなくなったりします。症状の出方は緩やかであることが多く、初期には自覚症状がない場合もあります。

筋力の低下については二の腕や太もも、首など体の中心に近い筋肉に現れやすく、腕の筋肉が低下すると腕が上げづらい、太ももでは階段を上るのが難しい、座った状態から立ち上がりにくい、首では寝ている状態から頭を持ち上げにくいなどの症状が出ます。

また、喉の筋力が低下することもあり、この場合には食べ物が飲み込みにくい、むせる、喋りにくいといった症状が見られるようになります。

関節の症状

手足の関節の痛みや腫れが現れる場合もあります。膠原病の1つである関節リウマチのように骨の破壊や変形が起こることはほとんどありません。

呼吸器・心臓の症状

皮膚筋炎に間質性肺疾患を合併したり、心臓の筋肉が障害されたりすることもあります。間質性肺炎を合併すると、動作後の息切れ、痰が少ない乾いた咳、息が吸いにくいといった呼吸困難の症状が現れます。間質性肺疾患は死因として重要です。心臓の筋肉が障害された場合には、不整脈心不全症状として、脈の乱れ、動悸、呼吸困難が現れることがあります。

そのほかの症状

そのほかの症状として、レイノー症状(寒い場所で手足の指先が真っ白や紫色に変色する)が見られることがあります。発熱、倦怠感や疲労感、食欲不振などの全身症状が起こる場合もあります。

検査・診断

血液検査や筋電図検査、筋生検、MRI検査などさまざまな検査を行い、その結果から筋炎であることが判明し、特徴的な皮膚症状がある場合に皮膚筋炎と診断します。

検査所見として、血液検査では筋肉の炎症を反映する筋原性酵素のアルドラーゼ(ALD)やクレアチンキナーゼ(CK)が上昇します。また、CRPといった炎症マーカーの上昇を伴う場合や、筋炎患者に特異的に検出される自己抗体である、抗Jo-1抗体をはじめとする抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1-γ抗体が陽性になる場合もあります。

筋電図検査は、筋肉に微量の電気を流して筋肉の反応を測定することで、筋力低下の原因が神経によるものなのか、筋肉によるものなのかを確認するのに役立ちます。筋生検は筋肉の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査です。これによって筋炎の診断が確定します。

皮膚筋炎では筋肉だけでなく、肺や心臓などの臓器が障害されることもあるため、必要に応じて胸部X線検査、心電図、胸部CT検査、心臓超音波検査などの検査も行います。

また、皮膚筋炎では、がんが併発していることもあり、年齢や性別に応じたがんのスクリーニング検査が必要です。

治療

皮膚筋炎の治療は薬物療法が中心となります。主に経口ステロイドを使用し、一般的には中~高用量ステロイド療法を2週間ほど行います。はじめは大量服用が必要ですが、病気の回復を見ながら2~3か月かけて徐々に一定の量にまで減量していきます。

ステロイドの使用量や期間を低減するため、メトトレキサート、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を用いることもあります。皮膚症状のみの場合は、ステロイドやタクロリムス外用による局所治療が優先されます。

また、筋力低下の更なる改善を目的に点滴静注による免疫グロブリン大量療法を行うこともあります。間質性肺疾患では急速に悪化すると命に関わることもあるため、早急な治療が必要となり、ステロイドや免疫抑制薬(タクロリムス、シクロホスファミドなど)を用いて治療を行う場合もあります。

筋炎に伴う筋力低下が見られた場合には、薬物療法とともに早期からのリハビリテーションが重要な治療です。リハビリの開始時期やその運動強度は患者さんによって異なりますが、リハビリにより筋肉の炎症を抑える効果や筋肉内のエネルギーを産生するミトコンドリアの機能が改善することが分かってきたため、最近では、早期より病状に応じたリハビリを導入していくことが重要であると考えられています。

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