概要
多発性筋炎とは、自己免疫の異常を原因として発症する病気のひとつを指します。
筋肉の炎症によって身体の各部の筋力が低下することにより、座った状態から立ち上がるといった動作や食べ物などの飲み込みに影響がでることがあります。また、間質性肺炎やがんの発生などが起こることもあります。
多発性筋炎は、国の指定難病等医療給付制度に指定されている難病であり、日本では2万人以上の患者さんがいると推定されています。
原因
多発性筋炎は、自己免疫の異常を原因として発症します。自己免疫とは本来、ウイルスや細菌など身体にとって害になる可能性のあるものから自分自身を守るために重要な働きをしています。
しかし、多発性筋炎ではこうした自己免疫が誤って自分自身の身体を攻撃するように仕向けられてしまい、さまざまな症状を引き起こすようになります。患者さんの筋肉では、栄養血管の閉塞や単核球を主体とした炎症細胞の浸潤が動脈を中心に観察され、筋周膜部位に位置する筋線維の萎縮や壊死所見が見られます。
なぜこのような自己免疫の異常が生じるのかは完全にはわかっていません。しかし、病気の発症には体質的なものに加えて、ストレス、感染症、妊娠、薬など何かしらのきっかけが関与していることも推定されています。
症状
筋肉に炎症が生じることにより、筋力の衰えが引き起こされます。体幹部の筋力低下と筋痛から始まり、次第に四肢の近位筋・遠位筋共に左右対称性に筋力低下を認めます。同時に多くの患者で関節痛も伴います。
これらに関連して、以下のような症状が現れることがあります。
- 階段の上り下りがしにくい
- 座った状態から立ち上がりにくい
- 大きな声が出ない、鼻咽腔の閉鎖ができなくなると開鼻声となる
- ものが飲み込みにくい
など
特に、飲み込みに関連した筋肉が支障を受けることで、誤嚥(食べ物などが誤って喉頭と気管へ入ってしまうこと)を起こしやすくなります。その結果、誤嚥性肺炎を発症して呼吸障害が生じることもあります。
また、心臓の筋肉が障害を受けることで、不整脈が出現したり心臓のポンプ機能が低下したりすることもあります。
そのほかにも、全身倦怠感や体重減少といった全身症状を自覚することもあります。また、間質性肺炎を発症して咳や呼吸障害が生じることもあります。さらに、がんの合併、そのほかの膠原病との合併などが生じる可能性があります。
検査・診断
多発性筋炎では、自己免疫機能の異常を反映して特殊な抗体が産生されます。この抗体や筋肉の炎症を確認することを目的として、血液検査が行われます。
また、筋肉や筋力の変化を評価するために、徒手筋力検査、MRI検査、針筋電図、筋生検などの検査も検討されます。筋力の低下様式や筋肉の変化、自己免疫の変化などを考慮して診断されます。
多発性筋炎では、経過中に筋炎以外の合併症が生じることもあるため、これらを評価するための検査が検討されることもあります。たとえば、間質性肺炎が疑われる際には、レントゲン写真やCT、血液検査などが適宜考慮されます。
治療
多発性筋炎では、症状にあわせて、ステロイド、NSAID、ガンマグロブリンや免疫抑制剤などを使用することで自己免疫による炎症反応を抑えることが治療の中心になります。ただし、ステロイドの使用が長期間に渡ることも少なくありません。
その経過中に感染症にかかりやすくなったり、胃潰瘍が生じたりします。そのほかにも、骨粗しょう症の発症やうつ症状の出現なども懸念され、多彩な副作用が出現する可能性があります。そのため、ステロイド以外にも免疫抑制剤の使用も検討されます。
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