概要
レイノー現象は、寒冷刺激や精神的ストレスをきっかけに、手足の指先の色が白色や青紫色に変化する症状のことです。これらの症状は、手足の指先の細い血管が過剰に収縮することにより、血管が狭くなって血流が悪くなることで発症します。
レイノー現象には、原因不明の一次性(レイノー病)と、ほかの病気に関連する二次性(レイノー症候群)に分けられます。二次性の場合、全身性強皮症や混合性結合組織病などの自己免疫疾患*などの病気が背景にあることがあります。
典型的な症状は、手や足の指先が急激に白くなり、その後青紫色に変化し、最終的に赤くなるという三相性の色調変化です。この過程で、痛みやしびれ、チクチクする感覚を伴うことがあります。症状は通常数分から30分程度続き、血流が回復すると徐々に改善します。
治療の基本は、症状を引き起こす要因を避けることです。具体的には、保温や禁煙、ストレス管理が重要となります。薬物療法では、主にカルシウム拮抗薬などの血管拡張薬が用いられます。二次性レイノー現象の場合は、原因となる基礎疾患の適切な治療も並行して行う必要があります。
*自己免疫疾患:体の免疫機能が誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃する病気。
原因
レイノー現象は、手足の指先の細い血管が過剰に収縮することで発生する血流障害です。主に寒冷刺激や精神的ストレスが引き金となって発症します。寒冷刺激が大きな要因となるため、特に気温が低い冬に発症することが多く、外に出た時や冷たい水に手をつけた時によく起こります。また、夏でも冷房の効いた部屋に入った時にみられる場合があります。
レイノー現象は、原因によって一次性(レイノー病)と二次性(レイノー症候群)に分類されます。
一次性(レイノー病)
一次性はレイノー病とも呼ばれ、原因となる基礎疾患がなく起こるレイノー現象です。特に若い女性に多くみられ、通常は重度の合併症を伴わず予後は良好です。
二次性(レイノー症候群)
二次性は、基礎疾患が原因となって発症するレイノー現象で、レイノー症候群とも呼ばれます。主な原因疾患には以下のようなものがあります。
症状
レイノー現象の症状の特徴は指先の色の変化です。手の指先によくみられますが、足の指にも発生します。
レイノー現象では、血管の強い収縮により一時的に血流が悪化し、血液の供給が乏しくなるために皮膚が白色に変化します。この状態が長く続くと血液中の酸素濃度が低下し、チアノーゼという酸欠状態になって皮膚が紫色に変化します。皮膚の色調の境界は明瞭で、多くの場合痛みは伴いませんが、しびれやチクチク感、灼熱感を覚えることがあります。また、1本の指に起こる場合もあれば、複数の指に起こる場合もあります。
一次性では、これらの症状は軽度であることが多く、自然に症状が消失することもあります。一方、二次性では、基礎疾患に関連する症状を伴うことがあります。たとえば、自己免疫疾患が原因である場合、皮膚の硬化や関節のこわばりなどの症状が現れることがあります。また、二次性の場合、症状が長年持続することがあり、血流障害が長期化すると指先に潰瘍*ができたり、一部が壊死**したりする可能性もあります。
レイノー現象が初発症状となって発見される基礎疾患も多いため、このような症状に気付いた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
*潰瘍:皮膚や粘膜の一部が欠損して、くぼみができた状態。
**壊死:細胞や組織が死滅すること
検査・診断
レイノー現象そのものは、症状や発症のきっかけから診断することが可能です。ただし、より詳細な評価を行うために、赤外線を利用して皮膚の温度を測定するサーモグラフィや、血管の容量変化を調べる指尖容積脈波などの検査が行われることがあります。
レイノー現象は、全身性強皮症や関節リウマチ、甲状腺機能低下症、動脈硬化などの病気や、特定の薬によっても引き起こされることがあります。そのため、原因となる病気がないか確認するために、血液検査や尿検査、画像検査が行われることもあります。これらの検査を通じて、レイノー現象が一次性(原因不明)なのか、二次性(ほかの病気や薬が原因)なのかを判断します。
治療
レイノー現象の治療では、症状を引き起こす原因を避けるための生活指導や薬物療法が行われます。レイノー現象がほかの病気に伴う二次性のものである場合は、原因となる病気の治療をしっかりと行うことが重要です。
生活指導
レイノー現象の治療の基本は、誘発要因を避けることです。主に寒冷刺激や精神的ストレスによって起こることから、手袋や靴下を着用する、部屋が冷えすぎないようにする、精神的ストレスを抱え込まないようにするなどの対策が大切です。夏季も冷房の強い場所を避けるなど、年間を通じた温度管理が重要です。また、たばこは血管を収縮させるため、喫煙習慣のある方は禁煙を心がけましょう。
薬物療法
薬物療法としては、血流を改善するためにカルシウム拮抗薬、プロスタグランジン製剤、ビタミンE製剤などの血管拡張薬や抗血小板薬などが用いられることがあります。薬剤性のレイノー現象の場合は、主治医と相談してほかの薬への変更を検討することも重要です。
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