概要
振動障害とは、機械や工具などの振動により生じる健康障害です。チェーンソーや削岩機などを継続して使用した際に生じることがあります。
主に手指や腕において、血管や血流の症状(末梢循環障害)、感覚(知覚)の症状(末梢神経障害)、骨や関節、筋肉における症状(運動器障害)を生じます。治療としては、薬物療法、理学療法などの治療が行われるほか、生活習慣の見直しも重要となります。
原因
振動障害は、機械や工具などの振動が手指や腕を通して体に伝わることが原因となります。
振動そのものの強さや周波数、振動にさらされる時間などが症状の出現に関わるほか、振動に伴う騒音や工具の重量、扱うときの姿勢や寒さなども症状に影響を与える要因となります。
症状
振動障害による主な症状には末梢循環障害、末梢神経障害、運動器障害があります。
末梢循環障害
手指や腕の血管運動が影響を受け血液循環が悪化し、手指の冷えなどの症状が生じます。また、手指の血管収縮(攣縮)により手指が白く変色します。これをレイノー現象と呼びます。青白い色、暗い紫色、赤色となることもあり、5~15分ほど続きます。
末梢神経障害
手指や腕の神経の活動が影響を受け、しびれを感じる、痛みを感じる、感覚(知覚)が鈍くなる、手指や腕に力が入らない、動かしにくいなどの症状が生じます。
運動器障害
手指や腕の骨や関節、筋肉に症状が現れます。骨や関節における症状としては、関節の変形、腫れ、動かしにくさや動かしたときの痛みなどがみられます。筋肉における症状は末梢神経障害の結果として生じ、筋力が低下する、ボタンのかけ外しのような細かい動作が難しくなるなどの症状がみられます。
そのほかの症状
振動障害では、手指や腕以外にも症状が現れることがあります。騒音や寒さ、作業姿勢など振動そのもの以外の要因により、聴力障害や腰痛症などの症状が現れることがあります。
検査・診断
振動障害が疑われた場合、問診や視診、触診をはじめ、血管や血流に関する検査(末梢循環検査)、神経に関する検査(末梢神経系検査)、骨や関節に関する検査(運動器検査)など幅広い検査が行われます。
問診
職業歴や生活習慣、自覚症状、病歴などが聴取されます。自覚症状としては、手指の冷えやしびれのほか、振動を伴う作業に関わりのある症状として頭痛や耳鳴り、睡眠障害、疲れやすさなどが聴取されることもあります。
視診、触診
皮膚や爪の状態の確認、関節や筋肉の状態や動きの確認が行われます。手指や腕だけでなく、肩や腰、首などの状態も確認します。
末梢循環検査
冷水の中に手を入れて、その前後の皮膚の温度を測る検査や、爪を圧迫して色の変化をみる検査、指先の血流(脈)を確認する検査などが行われます。画像検査などが追加して行われることもあります。
末梢神経系検査
指先でどの程度の振動や温かさ、冷たさを感知できるかを検査します。そのほか、触覚の検査や、神経を電気的に刺激する検査などが行われることもあります。
運動器検査
関節の動きや筋力のほか、腕を体の後ろに回す動作などに問題がないかを検査します。必要に応じて、細かい動作ができるかの検査や、X線検査などの画像検査が行われることもあります。
治療
薬物療法、理学療法などの治療が行われますが、治療の内容は症状の種類や程度により異なります。入院による治療が必要になることもあり、また運動器障害では手術が行われることもあります。
薬物療法
症状に応じて薬剤が使用した治療が行われることがあります。手指の血管を拡張する作用のある薬剤が用いられます。
理学療法
理学療法では、主に患部を温め血液循環を改善させることで、機能の回復や代謝の促進を図ります。ホットパック(保温性の高いマット状のもの)や入浴による治療、赤外線治療なども行われます。
そのほかの治療
薬物療法や理学療法のほか、適切な運動により血液循環の改善を図る運動療法、温泉の成分や温熱作用を用いた温泉療法などが行われます。
日常生活での注意点
振動障害を発症した場合、治療を受けるだけでなく、生活習慣を見直すことが必要です。症状を悪化させる恐れのある寒さや振動への対処、栄養状態への配慮、適度な運動などを行うようにしましょう。
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