脂質異常症とは、健康診断の血液検査でも分かるLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などの数値が基準値以外となる状態のことです。進行すると、血管の内側の壁に脂肪分が沈着することで、血液の通る部分が狭くなったり、全身の動脈が硬くなったりし、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす可能性があります。
本記事では、脂質異常症の症状や原因、診断基準などについて、横須賀市立うわまち病院 循環器内科部長の岩澤孝昌先生に伺いました。
脂質異常症とは、動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりする動脈硬化を引き起こす病気です。基本的には、自覚症状はありません。動脈硬化が進行すると、次第に血管の内側が狭くなって血液が通りにくくなります。この狭くなった部分に、血液の塊である血栓が詰まってしまうと、詰まった場所が心臓であれば急性心筋梗塞、脳であれば脳梗塞を引き起こします。
〈脂質異常症が引き起こす病気〉
脂質異常症は、動脈硬化性疾患を引き起こす可能性があります。動脈硬化性疾患とは、血管の内側に脂肪の塊がこびりついていくことで血管の壁がどんどん厚みを増していき、血行が悪くなり、詰まりやすくなることで起きる病気を指し、次のような病気が挙げられます。
脂質異常症の原因には次のものが挙げられます。
〈電子レンジで温めた揚げ物にも注意〉
過酸化脂質とは、酸化した油のことです。時間が経過した油を使用した揚げ物などを想像する方も多いと思いますが、それだけではなく、電子レンジで温めた揚げ物の油も過酸化脂質に変化するため、注意が必要です。
脂質異常症には、生活習慣から発症する脂質異常症と、遺伝的にコレステロール値が高くなる家族性高コレステロール血症があります。家族性高コレステロール血症の場合、生活習慣を改善しても、なかなか数値は下がりません。
脂質異常症の自覚症状は、基本的にはありません。しかし、家族性高コレステロール血症の場合には、黄色腫とよばれる黄色い腫瘍が皮膚やまぶたに現れることがあります。また、アキレス腱が通常の方よりも太い方は、家族性高コレステロール血症の可能性があります。これは、アキレス腱が傷ついたときに、コレステロールが溜まり続けることで厚みが増しているためです。通常、アキレス腱の太さはだいたい9mm以下ですが、それ以上太い方は、病院で血液検査をされることをおすすめいたします。
ライフスタイルの欧米化が進む近年では、脂質異常症と診断される方が増加傾向にあります。
詳細については後述しますが、脂質異常症と判断されるのは、以下の場合です。
2017年に脂質異常症と診断する基準に変更がありました。そのため、それまでの健康診断では基準値内とされていた方であっても、あらためて基準値外となってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
〈LDLコレステロールに対する変更〉
診断基準の変更前(2017年まで):
診断基準の変更後(2017年以降、2019年11月時点):
〈non-HDLコレステロールの追加〉
また、これまではLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライドの3つで判断していましたが、新しく“non-HDLコレステロール”という項目が追加されました。これは、動脈硬化を引き起こす因子となるコレステロールを表す値であり、動脈硬化のリスクを総合的に評価するための指標となります。
健康診断で基準値外の値となり、「脂質異常症の可能性があります」と指摘された場合は、一度受診しましょう。コレステロール値が上昇する原因は、これまでご説明したものだけではなく、甲状腺疾患などのほかの病気によることがあるためです。
脂質異常症は、性別による違いがある病気です。
閉経前の女性は男性よりもLDLコレステロール値が低く、HDLコレステロール値が高い傾向にあります。一方で、閉経すると、LDL コレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低くなり、閉経前とまったく逆の状態になることが多々あります。
また、女性は男性よりも動脈硬化性疾患になりにくいとされています。コレステロール値の異常が、家族性高コレステロール血症によるものや、ほかの病気によって引き起こされているものでなければ、1年後の健康診断まで経過観察を選択される方もいらっしゃいます。そのため当院では、ただコレステロール値をみるのだけでなく、総合的に検討したうえで、治療に介入しています。
記事2『脂質異常症の予防法――コレステロール制限について』では、コレステロール含有量が少ない食事など、脂質異常症の予防法についてお伝えいたします。
横須賀市立うわまち病院 副病院長・循環器内科 部長
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