心不全は、再発を繰り返すごとに、徐々に悪くなっていく病気であり、一生付き合っていかなければならない病気です。しかし、患者さんが徹底的な生活習慣の改善を図ることで、再発の可能性を下げることができる病気でもあります。では、どのようにすれば心不全の再発を防ぐことができるのでしょうか。横須賀市立うわまち病院 循環器内科部長の岩澤孝昌先生に、慢性心不全の症状や再発の予防方法について伺いました。
心不全とは、心臓の働きが不十分になり、息切れやむくみなどが起こることから、体調が徐々に悪くなっていく病気です。心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を担っています。このポンプ機能が落ちることによって、全身の臓器の状態の維持が難しくなっていきます。
健康な方が突然心不全になることは珍しく、心不全になる前から、高血圧、脂質異常症*、糖尿病、心房細動などの基礎疾患を持っている場合がほとんどです。
日本において、心不全を含む循環器の病気で亡くなる患者さんの数は、がんに次いで第2位であり(2019年時点)、心不全による5年生存率は50%ほどです。現状では、心不全は治らない病気であるため、上手に付き合っていくことが大切です。
*脂質異常症の記事は『心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす脂質異常症とは?』をご覧ください。
慢性心不全の症状には、次のようなものがあります。
*起座呼吸:体が横たわっている状態だと息苦しく、体を起こすと呼吸が楽になること。
心不全で再入院をする原因の多くは、次のグラフが示すとおり患者さんの毎日の生活における心がけによって、ある程度は防ぐことができるものです。心不全を再発させないためには、患者さんのやる気や努力も重要です。
心不全での入院後に退院された患者さんが、再び入院することになる一番の原因は、塩分・水分制限を守らないことです。食塩の中に入っているナトリウムには、水を貯蓄させる性質があります。私たちの体は、このナトリウムと水分のバランスを一定に保つようにできています。たとえば、塩分を取り過ぎると、喉が渇き、水を飲みたくなります。これは、取り過ぎた塩分により上がってしまった血液中のナトリウム濃度を、水分量を増やすことで薄めようとするためです。そして、喉が渇いて飲んだ水は、ナトリウム濃度を下げるために血液中に取り込まれ、血液量を増加させます。血液量が増えるということは、心臓の負担も増えるということです。心臓の負担を増やさないようにするために、患者さんには、1日の塩分摂取量を6g以下にしていただくようにお伝えしています。
そのほかには、風邪や肺炎などの感染症や、治療薬の飲み忘れなども大きな影響があります。
心不全の再発を予防する方法は、以下のとおりです。
基本的に、食事は腹八分目にしましょう。これは、1日の塩分を6g以下に控えながら、カロリーをコントロールして適正体重を維持するためです。先にご説明したとおり、短期間で体重が増加することは心不全の症状のうちの1つです。食事の過剰摂取によって体重が増えてしまうと、体重増加の原因が食べ過ぎによるものなのか、心不全の症状によるものなのか、判断できなくなってしまいます。そうならないためにも、食べ過ぎは控えましょう。
食事の内容は、肉や乳製品よりも、魚や野菜が豊富に取れてヘルシーな地中海食がよいとされています。
また、禁煙は心不全の再発予防において重要です。
日本人は平均で1日約12gの塩分を摂取しているといわれていますが、心不全の再発予防においては、先ほどお話ししたとおり、1日6g以下に控えなければなりません。近年、ファミリーレストランなどのメニュー表には塩分量が記載されていることもありますが、コンビニのおにぎりなどには、塩分量ではなくナトリウムの含有量が記載されています。
たとえば、コンビニのおにぎりには、ナトリウムが約500mg含まれています。これを塩分量に換算するためには、ナトリウムの値を2.54倍にする必要があります。
例:500mg × 2.54 = 1,270mg = 1.27g
つまり、ナトリウムの値が500mgである場合、塩分量は1.27g(1,270mg)です。したがって、おにぎりを2つ食べると塩分を約2.5g摂取することになるため、1食あたりの目安となる塩分量約2gを超えてしまうことになります。
塩分制限の徹底は、心不全の再発予防において重要なことです。最近では、減塩商品の種類も増えています。漬物を食べることを控えたり、減塩商品を利用したりしながら、塩分摂取量の制限を徹底していきましょう。
横須賀市立うわまち病院の心不全の検査、治療方法については、『横須賀市立うわまち病院の慢性心不全の検査、治療法や取り組み』をご覧ください。
横須賀市立うわまち病院 副病院長・循環器内科 部長
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