まんせいしんふぜん

慢性心不全

最終更新日:
2021年05月12日
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2021/05/12
更新しました
2017/04/25
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概要

心不全とは、一般的には“心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気”と定義されています。医学的には“心腔内に血液を充満させ、それを駆出するという心臓の主機能のなんらかの障害か生じた結果出現するため、心外膜や心筋、心内膜疾患、弁膜症、冠動脈疾患、大動脈疾患、不整脈、内分泌異常など、さまざまな要因により引き起こされるもの”です。そのような状態が急性に出現、あるいは悪化した病態を急性心不全、慢性に継続し日常生活に支障をきたしている病態を慢性心不全と従来は分類されていました。現在では、心不全が疑われる症状や兆候が現れる前から早期に治療を行うことの有用性が確認されたことから、心不全を急性と慢性に分類することの重要性が薄れています。

しかしながら、慢性的に心不全状態が継続している慢性心不全は、狭心症(きょうしんしょう)心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓弁膜症心筋炎などさまざまな心臓の病気の最終的に行き着く状態であり、進行すると日常生活に大きな支障をきたすばかりでなく突然死の原因になることも少なくありません。そのため、できるだけ早い段階で適切な治療を始めることが大切であると考えられています。

原因

原因としては、狭心症心筋梗塞などの冠動脈疾患、心臓弁膜症心房細動などの不整脈心筋炎先天性心疾患などの心臓に慢性的なダメージや負担を与える病気が挙げられます。

また、これらの心臓の病気以外にも高血圧動脈硬化貧血甲状腺機能低下症など心臓に負担をかける病気によって慢性心不全に至るケースも少なくありません。このようなさまざまな病気が背景にあり、さらにストレスや睡眠不足、過労、風邪などの些細なきっかけが加わると急激に心臓の機能が低下することもあります。

一方で近年の研究では、慢性心不全を発症すると交感神経のはたらきや血圧上昇などを引き起こすホルモンの分泌量が上昇することも分かっています。その結果、心臓にさらなる負担がかかることとなり、慢性心不全の症状が悪化するという悪循環に陥るとされています。

症状

心不全は心臓の機能の不調により、体の活動に十分な酸素や栄養素が行き渡らなくなります。その結果、手足の冷え、動悸、息切れ、食欲低下、倦怠感(けんたいかん)などの症状が現れるようになります。また、体のさまざまな部位で血液がうっ滞するため、むくみや体重増加が生じたり、重症な場合には肺に水がたまることによる呼吸困難・肝臓や脾臓(ひぞう)の腫大といった症状が現れたりするようになります。

呼吸困難などの重篤な症状は横になった状態のときに現れやすいため夜間に目立つ症状ですが、進行すると安静にしていても現れるようになります。そのため、活動性は著しく低下して日常生活に支障をきたすようになることも少なくありません。

また、進行するほど心臓への負担が大きくなり、突然死の原因にもなりうる不整脈が引き起こされることもあります。

検査・診断

慢性心不全が疑われるときは、次のような検査が行われます。

画像検査

心不全であるかどうかや、心不全の重症度を簡易的に評価するために、まずは胸部レントゲン検査を行うのが一般的です。また、冠動脈や心臓の筋肉の状態を詳しく調べるためにCTやMRIなどの画像検査が行われることもあります。

心臓超音波検査

体表面から心臓に超音波を当てて、心臓の動きなどを詳しく調べる検査です。心拍出量などの推定も可能であり、心機能を評価するのに適した検査でもあります。

また、心臓弁(弁膜症)などの状態を詳しく評価することもできます。

心電図検査

心臓の筋肉の動きを体表面に装着した電極が感知して波形として記録する検査です。波形の異常を評価することで、心臓のどの部位に異常があるのか大まかな目安を立てることが可能となります。

血液検査

心不全を発症すると、“脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)”と呼ばれる物質が体内で多く産生されるようになります。そのため、慢性心不全が疑われるときは血液中のBNP量を測る検査を行うのが一般的です。BNP量は心不全の重症度に比例するため、重症度を評価する指標にもなります。

また、慢性心不全はさまざまな病気によって引き起こされるため、血液検査で貧血の有無やホルモン濃度などを調べることで慢性心不全の原因を探ることも可能です。

治療

慢性心不全と診断された場合は、第一に原因となっている病気の治療を行います。そのうえで、慢性心不全の症状を改善するには病状に合わせて次のような治療が行われます。

薬物療法

慢性心不全で症状があり、心臓超音波検査で左室駆出率(心臓の収縮機能を示す値)が40%未満の場合には以下のような薬物療法を行うことが推奨されています。

  • 体内の余分な水分を取り除くことで心臓への負担を軽減する利尿薬
  • 慢性心不全で増悪因子となっているレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)ホルモンの作用を阻害するRAAS阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
  • 長期的に心臓を保護する作用があるとされるβ遮断薬
  • 心臓のはたらきを補助するとされているジギタリス

一方で、心臓超音波検査で左室駆出率が40%以上の場合は、症状を軽減する目的での利尿剤以外は有効な薬物療法がいまだ明確に決められていない状況です。

酸素療法

重度な心不全では肺に水がたまることなどによって十分な呼吸ができなくなり、さらに心臓のポンプ機能の低下に伴って全身に十分な酸素が行き渡らなくなります。そのため、酸素を補うために酸素吸入治療が必要になるケースも少なくありません。

非薬物療法

標準的な薬物療法でも十分な治療効果が得られない場合は、両心室ペーシング植え込みや致死性不整脈に対し植え込み型除細動器、さらには補助人工心臓から心臓移植を検討する必要があります。また、心臓リハビリテーションは早期から積極的な導入が推奨されています。

予防

慢性心不全を予防するには、何よりも慢性心不全を引き起こす病気の発症を防ぐことが大切です。原因となる病気の多くは、高血圧脂質異常症糖尿病、肥満などによる生活習慣病が根底にあるため、日ごろから食事や運動習慣を整え、ストレスや疲れをため過ぎない規則正しい生活を送るようにしましょう。また、禁煙や節酒も慢性心不全の予防につながります。

さらに、慢性心不全は徐々に症状が進行していく病気であり、できるだけ早い段階で治療を開始することが望まれます。そのためには、定期的に健康診断を受けたり、生活習慣病の正しい治療を続けたりすることも重要な予防策の1つです。

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