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慢性心不全の治療とは? ~薬が処方されたり、食生活の改善や禁煙などの指導が行われる~

慢性心不全の治療とは? ~薬が処方されたり、食生活の改善や禁煙などの指導が行われる~
鈴木 誠 先生

横浜南共済病院 循環器内科 総括部長

鈴木 誠 先生

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心不全とは病名ではなく、心臓が悪い(心臓のはたらきが不十分である)ために体のさまざまな場所に負担がかかることで動悸、息苦しさ、むくみなどの症状が生じる状態を指します。心不全は主に2種類に分けられ、心臓のはたらきが急激に低下して心不全に陥った状態の“急性心不全”と、症状が安定している状態の“慢性心不全”があります。

慢性心不全の治療の目的は主に、症状の改善、再発や急性増悪*の予防です。治療方法は急性か慢性かということや、原因などによって異なります。本記事では、慢性心不全をテーマに治療について詳しく解説します。

*急性増悪……慢性心不全が急激に悪化して急性心不全を発症すること

慢性心不全の治療ではまず、原因となる病気の治療を行います。そもそも心不全は心臓のはたらきが何らかの原因で低下している状態であるため、治療の原則はその原因となる病気を診断し、その病気を治療することから始めます。慢性心不全の主な原因としては、高血圧糖尿病などの生活習慣病心筋梗塞(しんきんこうそく)弁膜症心筋症といった心臓の病気などが挙げられ、それぞれに適した治療が行われます。

そのほか、症状を緩和する、症状が出ないようにする、心臓の状態が悪くなるのを抑えるといった目的で薬が処方されたり、心不全悪化のリスクを避けるために、食生活の改善や禁煙、減酒などの指導が行われることもあります。以下で詳しく解説します。

慢性心不全では症状の緩和、再発や心臓が悪くなることを抑える目的で薬による治療が行われることが一般的です。薬によって症状の緩和、再発の予防、生命予後(病気の経過が命に与える影響)の改善が期待できますが、服薬を中断すると症状が悪化し心不全を繰り返す可能性があるため、自己判断で断薬したりせず医師の指示にしたがって服薬をする必要があります。

薬には以下のようなものがあります。

ジギタリス製剤

心房細動*を伴う場合に用いられ、心拍数をコントロールし症状を改善する薬です。

利尿剤

心臓から血液を送り出す能力が低下し、血液が停滞することで引き起こされる呼吸困難、むくみなどを改善する薬です。

*心房細動……不整脈の一種で、心臓の心房がけいれんするように不規則に震える状態

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン拮抗薬、β遮断薬など

心臓にかかる負担を軽減することで心不全の再発・急性増悪を防ぐ薬です。これらを患者の状態に合わせて組み合わせて使用します。

心不全治療では、薬だけでなく生活習慣の改善も重要となります。具体的には以下のとおりです。

低栄養状態に陥ると生命予後を悪化させるといわれるため、食事内容には注意が必要です。塩分過多の食事は体の水分量を増加させ、血液量も増加するため心臓に負担をかけてしまいます。そのため、塩分の制限を行う必要もあります。

ただし、心不全患者における細かな栄養管理方法は確立されていないため、医師や管理栄養士の指示のもとバランスのよい食生活を心がけるとよいでしょう。

禁煙によって心不全患者の死亡率や再入院率が低下することが明らかとなっています。そのため、喫煙者に対しては禁煙が強く推奨されています。アルコールは摂取量によって心臓のはたらきを強めることも弱めることもあるため注意が必要ですが、適度な摂取量であれば心不全の発症率を低下させるというデータもあります。いずれにしてもアルコールの過剰摂取は心不全発症のほか、アルコール性心筋症の原因となるため、ほどほどの飲酒量に抑えることが重要です。

急性心不全の場合は安静にする必要がありますが、慢性心不全の場合は症状に合わせた適度な運動が推奨されています。心不全患者は早歩きや階段において息切れ・呼吸困難の症状が現れることがありますが、この原因は心機能ではなく筋力に比例することが研究で明らかになっています。そのため、適度な運動で筋力をつけることで息切れや呼吸困難の症状が改善される場合があります。ストレスが急性心不全の原因となることもあるため、適度な運動と休息をバランスよく取るとよいでしょう。

慢性心不全の治療の基本は、原因となる病気の治療のほか、薬による治療、生活管理が重要です。薬にはさまざまな種類があり、患者の状態に合わせて組み合わせて処方されます。生活管理では、食事管理や禁煙、減酒などにより、症状の発現や悪化を防ぐことができるとされています。また、適度な運動を行うことで症状が緩和されることがあります。

このように慢性心不全の治療法は多岐にわたるため、不明点があれば医師に相談をし、いずれも自己判断せずに医師の指導のもと、正しい方法で治療をすることが非常に重要です。

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    鈴木 誠 先生

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    北里大学北里研究所病院 循環器内科部長

    とうじょう たいき
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    東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 器官システム制御学講座 循環制御内科学 准教授

    まえじま やすひろ

    内科、血液内科、膠原病・リウマチ内科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、美容外科、皮膚科、泌尿器科、肛門科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科

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