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心疾患と深い関わりを持つ、マグネシウムの効果とはたらきとは

心疾患と深い関わりを持つ、マグネシウムの効果とはたらきとは
長谷部 直幸 先生

旭川医科大学  循環・呼吸・神経病態内科 教授

長谷部 直幸 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年06月10日です。

生活の中で、マグネシウムという栄養素を意識することはあるでしょうか。マグネシウムは一般的に認知度が低く、あまり重要視されませんが、実は体の機能維持に欠かすことができないミネラルです。また、マグネシウムはあらゆる心疾患老化の防止に有効ですが、そのことも世間にはそれほど知られていません。マグネシウムは体内でどのようなはたらきをするのかについて、旭川医科大学内科学講座教授の長谷部直幸先生にお話を伺いました。

マグネシウムは、エネルギー代謝や糖利用、たんぱく質合成など人の生命維持と、血管や神経を含むあらゆる細胞の機能維持に必要不可欠なミネラルです。乳幼児から高齢者まで、年代や性別を問わず適正量を十分に摂取することが理想的ですが、ホルモンバランスを整えるはたらきがあるため、特に生殖年齢(子どもを産む年代)にある女性は不足しないように注意しましょう。

マグネシウムは、体内に存在する酵素のうちおよそ300種類の補酵素としてのはたらきを持ちます。酵素とは体を活性化させる源であり、酵素が不足すると血液が汚れ、あらゆる病気を引き起こしやすくなります。補酵素とは、この酵素が生命体内で活動するために必要不可欠な物質で、パートナーのような存在です。たとえばカルシウムの吸収を司る酵素は単体では機能しませんが、補酵素であるマグネシウムによって、この酵素が正常に機能します。このようにマグネシウムは、カルシウムの吸収を司る酵素・細胞膜の機能を維持する酵素・細胞質の環境を保つ酵素など、およそ300種類の酵素を正常に機能させる役目を果たすため、体には必要不可欠といえるのです。

マグネシウムは大部分を食事から摂取しますが、食生活の偏りのために不足してしまうことがあります。また、ストレスの多い環境でも不足してしまうことがあります。正常な体内機能維持に重要な役割を果たすマグネシウムが不足し、やがて体内で欠乏すると、体にさまざまな問題が引き起こされます。

【マグネシウムの欠乏によって生じる身体的な問題の1例】

動脈硬化や老化が進行すると、心臓の筋肉に血液が十分に行き渡らない状態(虚血)となり、心不全不整脈心室細動などの心疾患を引き起こす遠因になることがあります。

*老化の進行については、記事3『老化を進める活性酸素と抗酸化物質であるマグネシウムのはたらき』でご紹介します。

マグネシウムには血圧を下げる効果があります。そのメカニズムは次の2つから説明できます。

マグネシウムが血圧を下げるメカニズム(1)

自律神経は、体内の機能にアクセルをかける交感神経と、ブレーキをかける副交感神経の2つから成り立っています。交感神経のはたらきが強くなると体はどんどん活動性を増すのですが、一方でストレスが蓄積されてしまいます。一方、副交感神経はブレーキとして機能し、体に負担がかかりすぎないようにコントロールしてくれます。交感神経と副交感神経のバランスが成り立つことで、体の機能は保たれているのです。

マグネシウムには、交感神経を抑制するはたらき、すなわちアクセルを緩める効果があります。たとえば心臓なら、心臓の筋肉(心筋)にある血管は、交感神経の末端から放出されるカテコラミンという物質に反応して収縮します。血管が収縮すると血圧は上がりますが、マグネシウムはこのはたらきを抑制し、血管を拡張します。血管の拡張により血圧は下がり、同時にさまざまな臓器の血流が改善されるため、臓器の保護につながります。

カルシウム拮抗薬は血管拡張を促す薬剤で、高血圧・心臓病の治療などにおいて頻繁に用いられますが、マグネシウムはこれと同じ効果をもたらすことから「天然のカルシウム拮抗薬」と呼ばれることもあります。

マグネシウムが血圧を下げるメカニズム(2)

交感神経がはたらくと、副腎からアルドステロンという物質が分泌されます。アルドステロンはナトリウムを体内に溜め込むはたらきをしますが、これは塩分を摂っていることと同じで、血圧が上昇し、動脈硬化につながります。マグネシウムには、このアルドステロンの分泌を抑制する効果があり、塩分を体内に溜め込むのを防ぐため、血圧の低下につながります。

心臓を取り巻く冠動脈の血行が滞り、酸欠と栄養不足によって心臓の筋肉(心筋)が壊死した状態を心筋梗塞といいますが、マグネシウムは、心筋梗塞の防止に効果があります。私たちの基礎研究では、マグネシウムの投与によりウサギの心筋梗塞の大きさが約半分に軽減されることを報告しました。

冠動脈の血行が悪化した際、心筋はアデノシンという物質を放出し、心臓を保護します。マグネシウムは、このアデノシンの分泌を促す酵素の補酵素(酵素を活性化させるための物質)であるため、マグネシウムの摂取は心筋梗塞の防止に効果的だといえます。

マグネシウムの摂取は心筋梗塞の防止に効果的

私たちはマグネシウムを主に食事から摂取しています。そのため、日々の食事の中でマグネシウムを積極的に摂取することが、マグネシウム不足を改善するためには一番の近道であると考えます。しかしマグネシウムは現代的な肉食・白米中心の食生活では不足しやすく、多くの現代人は慢性的なマグネシウムの欠乏状態にあります。ですから、マグネシウムが多く含まれる食品を知っておき、意識して食事の中に取り入れる工夫が重要です。

マグネシウムは、もともと海の中に存在している物質です。たとえば昆布、わかめ、ひじきなどの海藻類はもちろん、海水から精製された塩にも豊富に含まれています。

マグネシウムを多く含む食品の例

  • 海藻類(昆布、わかめ、ひじきなど)
  • 海水から精製された塩
  • ナッツ類(ひまわりの種・ゴマ・くるみ・アーモンド・カシューナッツなど)
  • 豆類(きな粉・大豆・木綿豆腐・油揚げ・納豆など)

マグネシウムを含む食品

*マグネシウムを多く含む食品については、関連記事『マグネシウムで糖尿病予防・改善』にて、より詳しくご紹介しています。

厚生労働省が補充を推奨している微量栄養素は、カルシウムとマグネシウムの2つです。日常的に不足しがちな栄養素であるからこそ、意識的に食事に取り入れることが大切です。カルシウムとマグネシウムは両者がバランスよく体内にあることが重要なので、体内の機能を維持するために最適な比率である2:1の割合で摂取するのが理想的といわれています。

腎臓の機能が悪い場合に利尿薬を用いることがありますが、腎臓と心臓の両方が悪い患者さんが利尿薬を使用する場合には注意が必要です。利尿薬や下剤は体外に水分を排出する力を強めますが、同時にマグネシウムの排出を促進する作用を持つものもあるからです。心臓の悪い方にとって、マグネシウムが排出されることは好ましくありません。種類が豊富な利尿薬の中でも、心不全の治療に用いる代表的なループ利尿薬は、マグネシウムとカリウムを体外に排出する作用があり、マグネシウム摂取の観点からすると推奨はできません。もしループ利尿薬を服用するのであれば、同時にアルドステロン拮抗薬を服用するとよいでしょう。アルドステロン拮抗薬は、マグネシウムとカリウムの排出作用を持つアルドステロンという物質のはたらきを抑制する薬剤であるため、これを服用することにより、血液中のマグネシウム・カリウムの濃度を保つことができます。

また私は、市販の下剤が安易に使われがちな現状を危惧しています。下剤は便を強制的に体外へ排出する作用がありますが、体にとって重要な栄養素まで排出されてしまい、体内のバランスが崩れる要因になります。便秘を解消したい方には、マグネシウムの摂取をおすすめしています。なぜならマグネシウムには、穏やかに排便を促す効果があるからです。この方法であれば、マグネシウムを摂取しながら健康的に排便を促すことができるため、マグネシウム摂取は一石二鳥の方法といえるでしょう。

排便を促すはたらきを持つマグネシウムは、摂りすぎると下痢になる可能性があります。しかしながらマグネシウムはある程度摂取基準の上限を超過しても体への影響はほとんど生じないとされており、摂りすぎによる問題はまず起こりえません。

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  • 旭川医科大学  循環・呼吸・神経病態内科 教授

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