しんしつさいどう

心室細動

最終更新日:
2025年04月14日
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2025/04/14
更新しました
2017/04/25
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医師の方へ

概要

心室細動とは、心臓の下部にある心室が無秩序に非常に速く震える病気です。

心臓には血液を全身や肺に送り出すポンプの役割があり、弱い電気を流すことで動く仕組みになっています。通常、心臓を動かす電気信号が何らかの原因で混乱すると、リズミカルな収縮ができなくなりますが、そういった状態を不整脈と呼びます。

心室細動は、心室内の電気的活動が無秩序に発生し、心筋が震えるようにランダムに細動することでポンプ機能を失う不整脈です。この状態では全身、脳への血液供給が途絶え、数秒以内に意識を失い、心停止に至るため非常に危険です。心臓が原因で起こる突然死の多くは、心室細動が関与しているとされています。

心室細動は非常に緊急性の高い状態であり、治療では迅速な対応が極めて重要です。最初に心肺蘇生(CPR)を行い、その後AED(自動体外式除細動器)を使用して電気ショックを与えることで、正常な心拍リズムの回復を目指します。心室細動から回復した場合でも、再発のリスクが高いため、植え込み型除細動器(ICD)の装着や薬物療法による継続的な治療を検討します。

原因

心室細動を引き起こす主な原因としては、以下のものが挙げられます。

心筋梗塞(しんきんこうそく)

心筋梗塞は、冠状動脈(心臓に酸素や栄養を送る血管)の閉塞(へいそく)により心臓の機能が低下する病気です。心筋梗塞が発生すると、心筋の虚血状態が原因となり、数時間以内に心室細動を引き起こすことがあります。

心筋症

心筋症は、心筋の異常により心機能が著しく低下する病気です。主な種類として、心筋が薄くなり心臓が拡大する拡張型心筋症や、心筋が異常に厚くなるものの心臓の大きさ自体は変わらない肥大型心筋症があります。さらに、心サルコイドーシス心アミロイドーシスといった全身性疾患に伴う心筋症もあり、これらは心筋の炎症や異常なタンパク沈着により、電気的異常や心室細動を引き起こすことがあります。

QT延長症候群

QT延長症候群は、心臓の電気的活動における異常により、心電図上のQT間隔が延長する病気です。QT間隔とは、心電図で確認されるQ波の開始からT波の終了までの時間を指します。この間隔の延長は、致命的な不整脈であるトルサード・ド・ポアンツ(Tdp)の発生リスクを上昇させます。Tdpは心室細動へと進展し、突然死のリスクとなる危険性があります。先天性(遺伝性)のものと後天性のものがあり、後天性の場合は薬剤や電解質異常が原因となることがあります。

ブルガダ症候群

ブルガダ症候群は、主に心電図異常を特徴とし、普段の心機能には異常が認められないことが多いですが、突発的に心室細動を引き起こすことがあります。

特発性心室細動

心停止から蘇生された患者に対しては、詳細な原因究明が行われるのが標準的です。しかし、心電図検査や画像診断を含む精密検査を実施しても原因が特定できない場合があり、これを特発性心室細動と呼びます。これは、特定の病気が見つからないにもかかわらず、突如として致死的な不整脈を引き起こす病態を指します。

症状

心室細動が発生すると、心停止の状態に陥り、数秒以内に意識消失や呼吸停止といった重篤な症状が出現します。患者によっては、意識を失った直後にけいれん発作が見られることもあります。適切な治療が速やかに行われない場合、全身の臓器が障害を受け、命に関わる危険な状態になります。心肺蘇生(胸部圧迫や人工呼吸、AEDなど)によって一命を取り留めた場合であっても、脳にダメージが残る可能性があります。

検査・診断

心室細動の診断では、心電図検査を行います。この検査は心臓の電気的活動を記録し、心室細動特有の異常波形を検出します。

また、心室細動が停止した後は、心筋梗塞心筋症心不全など心室細動の背景となる疾患を評価するために、心エコー検査が実施されます。超音波を用いたこの検査により、心臓の構造や動きなどを詳細に評価します。

QT延長症候群ブルガダ症候群といった病気では、心電図検査で特徴的な異常所見が認められることがあり、時として学校や職場での定期健康診断における心電図検査で初めて発見されることもあります。

治療

心室細動は命に関わる危険な不整脈であり、発生時には迅速な治療(心肺蘇生)が必要です。治療後も再発のリスクが高いため、再発予防に向けた治療が行われます。

心室細動発生時

心室細動が発生した場合、最も重要なのは迅速なCPRと早期の除細動です。直ちに胸骨圧迫を開始し、胸を強く、速く、絶え間なく圧迫します。可能であれば人工呼吸を併用しますが、人工呼吸が困難な場合は胸骨圧迫のみでも実施することが推奨されます。

心肺蘇生と並行して、できるだけ早くAEDを使用し、電気ショックを行うことが最も重要です。AEDは心室細動の救命に非常に効果的であり、使用開始までの時間が早いほど生存率が向上します。心室細動の患者では、胸骨圧迫とAEDの迅速な使用が生存の鍵となるため、周囲の方々が適切な処置を速やかに行うことが命を救ううえで重要となります。

心室細動の再発予防

心室細動は、再発時に命の危険が非常に高い不整脈です。そのため、心室細動から回復した患者に対しては、今後の再発を防ぐための適切なフォローアップと管理が極めて重要です。

特に、心室細動の原因が一時的なもの(可逆的な原因)ではない場合、ICDの装着が推奨されます。ICDは心臓のリズムを常に監視し、危険な不整脈が発生すると自動的に電気ショックを与えて正常なリズムに戻す装置です。この装置は突然の心停止を防ぐことができるため、心室細動の再発リスクがある患者にとって非常に重要な治療手段となります。

加えて、抗不整脈薬が補助的に使用されることもあります。これらの薬剤は心室細動の発生頻度を減らすことを目的に処方され、患者の病状や原因に応じて選択されます。

さらに、心室細動の原因となる病気(心筋梗塞心筋症、電解質異常など)がある場合は、その治療を適切に行うことが再発予防に重要です。定期的な診察や検査を受け、心臓の状態を管理することが、突然死のリスクを減らすために欠かせません。

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