概要
ブルガダ症候群とは、12誘導心電図で特徴的な波形(ST上昇)がみられる一連の病気を指す言葉です。
ブルガダ症候群の患者の多くは心臓の構造や機能に異常がなく、発作を起こすまでは日常生活に支障がありません。しかし突然、心室細動が起こり心停止を起こす可能性があります。
ブルガダ症候群は家族に同じ病気の人がいる場合にみられることもありますが、日本ではそうでないことのほうが多いです。心電図検査を受けた人の0.2%程度でブルガダ症候群の波形が見つかり、受診のきっかけとなることが多いです。30~50歳代の男性に多く、男女比は10:1といわれています。
原因
心臓は規則的な電気信号によって拍動を維持していますが、ブルガダ症候群では心臓の電気刺激に異常が起こり、電気信号が不安定になることで致死的な不整脈が生じると考えられています。
ブルガダ症候群の原因にはさまざまなものがありますが、頻度が高いものとしては心臓のナトリウムチャネルの遺伝子の異常が知られており、約20%の患者でこの異常がみられるといわれています。また、男性に多い病気であることから、男性ホルモンが関わっているとも考えられています。そのほかにも複数の遺伝子異常が関わっているといわれていますが、それぞれの頻度は高くありません。
症状
ブルガダ症候群は多くの場合無症状であり、健康診断などで偶然発見されます。
心室細動*が一時的に生じると、失神(一時的に意識を失った状態)がみられることがあり、心室細動の程度によっては心停止に至ることがあります。
心室細動は前触れなく突然現れるもので、そのほかに自覚症状などは認められません。そのため、かつて“ぽっくり病”といわれていた病気の中に、この病気が含まれていたと考えられます。
*心室細動:致死的な不整脈のこと。心停止が突然起こり、死に至る可能性もある。
検査・診断
前述のとおりブルガダ症候群は、健康診断の心電図で異常が見つかったことをきっかけに受診につながることが多いです。また、ブルガダ症候群の一部は遺伝子の異常が発症に関わっているといわれているため、近親者に若くして突然死した人がいる場合も、ブルガダ症候群を疑うきっかけとなることがあります。
ブルガダ症候群の検査では採血や胸部X線検査に加え、12誘導心電図、心臓超音波検査、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、加算平均心電図などのさまざまな心電図検査が行われます。また、遺伝子の異常を調べるために遺伝子検査を行うこともあります。
遺伝子検査以外の項目は外来で検査が可能ですが、不整脈が起こる可能性が高い、または心電図だけではブルガダ症候群かどうか分からない場合には、不整脈を誘発する検査を入院して行うことがあります。
ブルガダ症候群は分からないことが多く、原因や重症度分類などがはっきりしないことが少なくありません。そのため、これらの検査を行ったとしても正確な診断が難しいこともあります。
治療
ブルガダ症候群の心電図(ブルガダ型心電図)が認められても、全ての人が致死的な不整脈である心室細動を起こすわけではありません。精密検査の結果、心室細動を起こす危険性が低いと判断された場合は、経過観察のみで特別な治療を行わないこともあります。治療を行う場合には、植込み型除細動器(ICD)と呼ばれる医療機器を使用します。また、発作を予防するために生活指導が行われることもあります。
植込み型除細動器(ICD)
心室細動を起こす危険性が高い場合には心室細動による突然死を予防するために、植込み型除細動器(ICD)を心臓に植込みます。ICDは過去に心停止を起こしたことがある人や、心停止に至らなくても心室細動や多形性心室頻拍と呼ばれる危険な不整脈がみられる人には必須とされ、それ以外でも失神の既往がある場合や、近親者に突然死した人がいる場合などは植込みが推奨されます。また、ICDを植え込んでいる人では発作の回数を減らすために、内服薬や点滴薬を併用することもあります。
生活指導
ブルガダ症候群による不整脈の発作は、夜間や早朝、飲酒後や食後に起こりやすくなることが知られています。そのため、禁酒する、満腹になるまで食べないなどの生活上の注意が必要になることがあります。発熱が発作につながることもあるため、発熱時にはすぐに医療機関を受診することが必要です。また、薬の中にはブルガダ症候群を悪化させるものがあるため、かかりつけ以外の医療機関やほかの診療科を受診する際にはブルガダ症候群であることを伝え、処方薬に注意する必要があります。
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