インタビュー

S-ICDの術後―日常生活で気をつけるべきポイントは?

S-ICDの術後―日常生活で気をつけるべきポイントは?
清水 渉 先生

日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 大学院教授

清水 渉 先生

この記事の最終更新は2017年10月10日です。

記事1『不整脈治療で使われるS-ICDとは? ICDとの違い、適応やメリット・デメリット』では、S-ICDとICDの違いや適応、手術の手順などについてお伝えしました。S-ICD植え込み後は、ほとんどは健康な方と同様の生活を送ることが可能ですが、一部、気をつけるべき点があります。S-ICD植え込み後に、日常生活で気をつけるべきポイントやS-ICDが作動した場合の対処法、痛みなどについて、引き続き日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 大学院教授 清水 渉先生にお話をうかがいました。

S-ICDを植え込み後に最も注意していただきたい点は、S-ICDを植え込んである胸部に、衝撃を与えないようにする点です。故障の原因となります。

しかし、従来のICDやペースメーカーのようにリードの負担を考慮する必要がないため、S-ICDはICDやペースメーカーと比べて動作の制限は少ないです。

ウォーキングなどの適度な運動も自由に行えます。むしろ、適度な運動は心臓に負担のかかる高血圧などの生活習慣病予防の観点からも、行っていただくことが望ましいです。

S-ICDを含むICDを植え込むと、原則、自動車の運転が禁止されます。運転を行うには医師の診断書を警察署に提出し、運転の可否が判断されます。運転が可能となった場合でも、6か月ごとに診断書を提出しての再審査が必要です。

また、トラックやタクシーの運転などの第二種免許による職業運転、中型免許(8t限定を除く)、大型免許を用いた運転は許可されていません。発作による失神やICD等での電気ショック治療が、重大な事故に結びつく可能性があるためです。そのため、現在、運転士などの仕事に就いている方は内勤に変えるなど、職場で対応していただく必要があります。

携帯(またはスマホ)を使用する中年〜高齢男性

従来のICDと同様、体内に電気が流れる機器や強い磁場が発生する機器は使用を控えることが勧められています。

携帯電話やスマートフォンなどの電子機器は、機器の取り扱いの注意事項をしっかり守っていれば安全に使用できます。

<S-ICDの動作に影響を及ぼすものや場所>

  • マッサージチェア
  • 電気布団
  • 体脂肪計
  • 全自動麻雀卓
  • アマチュア無線
  • 電気自動車の急速充電器
  • 業務無線
  • 発電および変電施設内
  • 高周波溶着器
  • 誘電型溶鉱炉
  • 各種溶接機
  • 脱磁気装置
  • 磁気バイス
  • 電磁石
  • MRI
  • 放射線治療器
  • 電気メス
  • 体外式除細動器(AEDを含む)
  • 電位治療器
  • ジアテルミー装置
  • 通電鍼治療器
  • 高周波・低周波治療器 など

S-ICDが1日に複数回正常に作動した場合は、疾患が悪化している可能性があります。そのため、1日に複数回の作動があればすぐに医療機関を受診してください。

不整脈の頻度が安定している患者さんや、S-ICDの作動が1度だけの患者さんであれば、S-ICDが作動しても緊急受診の必要はないでしょう。

症状が安定していても、定期検査は必ず受けてください。

心室細動などでは意識がない状態でS-ICDによる電気ショック治療が行われることが多いため、この場合は痛みを感じることは少ないでしょう。しかしながら意識がある状態で電気ショック治療が行われると、体が硬直するような、胸を強く叩かれたような痛みが伴います。

睡眠時に不整脈が起き、本人が気づかないまま電気ショック治療が行われることもあります。

S-ICDを含むICDには、不適切作動のリスクがあります。たとえば、運動などで一時的に一定の心拍数を超えた場合に、機械が心室頻拍心室細動と判断して電気ショック治療を開始する場合があります。

その際には意識がある状態での電気ショック治療となり、強い痛みが生じます。

不適切作動が生じる場合には再度設定を変えて、対処が可能です。

なかには、不適切作動を経験して精神的苦痛を覚える方もいます。その際には抗不安薬などの処方を行うときもあります。

清水 渉先生

S-ICDはリード断線のリスクが低いことから、ICDよりも動作の制限が少なく、日常生活を送りやすいと考えます。ICDと同様に激しい運動は控えるべきですが、ウォーキングなどの運動であれば楽しむことができます。

不適切作動のリスクもあるものの、多くは再設定により対処が可能です。

何よりも、本治療によって不整脈による突然死を防ぐことができる点は大きいでしょう。S-ICDを検討し、植え込み後の日常生活について気になる場合は医師に相談してみてください。

受診について相談する
  • 日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 大学院教授

    清水 渉 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。
この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

実績のある医師

周辺で心筋梗塞の実績がある医師

東京都立多摩総合医療センター 副院長(前循環器内科部長)

たなか ひろゆき

内科、血液内科、リウマチ科、外科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、血管外科、頭頸部外科、精神神経科、総合診療科、病理診断科

東京都府中市武蔵台2丁目8-29

JR武蔵野線「西国分寺」南口 JR中央線も乗り入れ  バス(約5分):総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き、西府駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 徒歩14分

順天堂大学 心臓血管外科 主任教授、虎の門病院 循環器センター外科 特任部長

たばた みのる
田端先生の医療記事

4

内科、血液内科、リウマチ膠原病科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科

東京都港区虎ノ門2丁目2-2

東京メトロ銀座線「虎ノ門」出口3 徒歩5分、東京メトロ日比谷線「霞ケ関」丸ノ内線、千代田線も利用可 徒歩8分

NTT東日本関東病院 循環器内科 部長

あんどう じろう

内科、消化器内科、循環器内科、腫瘍内科、血液内科、糖尿病・内分泌内科、高血圧・腎臓内科、感染症内科、精神科、呼吸器内科、緩和ケア内科、脳神経内科、脳血管内科、小児科、外科、乳腺外科、形成外科、脳神経外科、心臓血管外科、整形外科、呼吸器外科、歯科口腔外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、リウマチ膠原病科、放射線科、リハビリテーション科、救急科、麻酔科(ペインクリニック内科)、病理診断科

東京都品川区東五反田5丁目9-22

都営浅草線「五反田」 徒歩5分、JR山手線「五反田」東口より病院シャトルバスも運行あり 徒歩7分

関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が25件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「心筋梗塞」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app