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先天性QT延長症候群

最終更新日:
2025年01月10日
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2025/01/10
更新しました
2017/04/25
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概要

先天性QT延長症候群とは、生まれつき心電図上での“QT時間”が異常に長くなり、失神や命に関わる不整脈を引き起こすことのある病気です。

心臓は、収縮と弛緩を繰り返し全身に血液を送っています。心臓は微量の電気刺激によって規則正しく拍動しており、この電気的な活動を波形として記録するのが心電図検査です。心電図の波形において心臓が収縮し始める時にできる波をQ波、収縮した心臓が弛緩する時にできる波をT波と呼び、Q波の始まりからT波の終わりまでの時間をQT時間といいます。

このQT時間が異常に長くなったものがQT延長で、先天性QT延長症候群では生まれつきにQT延長がみられます。QT延長があることで、心室細動やトルサード・ド・ポアント(トルサデポアン)と呼ばれる、失神や命に関わることもある不整脈が起こりやすくなります。

原因

先天性QT延長症候群の原因は、心臓の電気的興奮を作り出すイオンチャネルや、これに関わるタンパクなどをコードする遺伝子の変異とされています。2025年1月現在、原因として9つの染色体上に15個の遺伝子型(LQT1~LQT 15、JLN1とJLN2)が報告され、遺伝子変異が確認できる確率は約50~70%、頻度としてはLQT1型、LQT2型、LQT3型の3つの遺伝子変異が90%以上を占めるといわれています。このような遺伝子変異によって、主に心臓のイオンチャネルに異常が生じて心電図上でのQT時間が延長します。

QT時間は心臓の収縮から弛緩までの時間であるため、延長すると収縮後の回復が遅れて心筋細胞が過敏になります。その結果、命に関わる不整脈が起こりやすくなります。

先天性QT延長症候群の発生頻度は約2,500人に1人といわれています。先天性QT延長症候群は遺伝性の病気で、原因のほとんどが常染色体顕性(優性)遺伝形式を取り、基本的には50%の確率で親から子に遺伝します。ただし、遺伝子変異があったとしても不整脈やQT延長が起こらない場合もあります。

症状

先天性QT延長症候群でみられる症状は不整脈で、発作として立ちくらみ、動悸、失神、けいれんなどの症状が現れます。多くの場合、このような発作は短時間で自然に治ります。しかし、治まらない場合には命に関わることもあります。

そのほかの症状として、原因遺伝子によっては生まれつきの難聴、手足の脱力、身体の形態異常、先天性心奇形、合指症、免疫不全、自閉スペクトラム症などを伴うことがあります。

先天性QT延長症候群の原因遺伝子のうち大半を占めるLQT1型、LQT2型、LQT3型では、それぞれで失神発作が生じる状況に特徴があります。

LQT1型の多くは運動中(特にマラソンや水泳などの持続する運動)にみられ、LQT2型は突然目覚まし時計が鳴ったときなど、驚いたときや恐怖を感じたときに起こりやすいとされます。LQT3型は安静時や睡眠中に失神発作などがみられることが多いです。

検査・診断

QT時間の延長は心電図で確認できますが、先天性QT延長症候群の診断にはSchwarzの診断基準が用いられます。

Schwartzの診断基準では、心電図上でのQTc(心拍数で補正した QT間隔)延長の度合い、T波の形状、特殊な不整脈があるかどうか、失神発作の既往、家族歴などを点数化し、一定の点数を超えると先天性QT 延長症候群の可能性が高いと判断します。

そのうえで運動負荷試験や薬物負荷試験、ホルター心電図、遺伝子検査などが行われ診断されます。遺伝子検査は診断だけでなく、治療薬の選択や生活指導などにも役立ちます。

治療

先天性QT延長症候群では、発作の予防を目的として、過剰になった心臓のはたらきを抑えるβ遮断薬で治療を行います。そのほか、メキシレチン塩酸塩やベラパミル塩酸塩などの抗不整脈薬、カリウム製剤やナトリウムチャネル遮断薬などが用いられることがあります。このような薬物療法の効果が乏しい場合や、心停止の既往がある場合は、植込み型除細動器や交感神経の外科的切除による治療が考慮されます。

また、原因遺伝子によって異なりますが、生活上の注意点として、一般的には激しい運動や興奮する状況、発作を誘発しやすい薬を避けることが大切です。特にLQT1型は交感神経刺激に対する感受性がもっとも強いため、運動制限が必須とされます。

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