概要
心臓の電気活動に異常をきたすことから突然の頻脈(脈が速い状態)や異常な脈拍リズムを引き起こす病気を指します。異常な脈拍リズムとしては、「トルサードドポワンツ」と呼ばれるものがあります。異常心拍を起こすと血液を十分に全身に送ることができなくなり、失神やけいれん、ときには突然死を起こすこともあります。
原因は先天的なものと後天的なもの(たとえば薬剤に関連したもの)に分けることができます。突然死につながるとても危険な心疾患の一つではありますが、内服薬やペースメーカー、植え込み型除細動器などを使用することで突然死を未然に防ぐことも可能です。
原因
心臓が正常に血液を送り出すには、心臓が適切なタイミングで収縮・拡張をする必要があります。心臓が収縮をしたときには血液が送り出され、拡張をしたときには心臓に血液が補充されます。心臓の収縮・拡張運動は、電気活動により精密に調整を受けています。QT延長症候群では、心臓が収縮をした後、血液が心臓に戻ってきているタイミングでの電気活動に異常が生じています。
電気活動の異常を引き起こす原因は、大きく分けて先天的なものと後天的なものがあります。
先天性のQT延長症候群
「ロマノ・ワード症候群」と「ジャーベル・ランゲニールセン症候群」があります。両者には遺伝の仕方や併発する症状などに違いがありますが、いずれも突然死のリスクがあります。先天性QT延長症候群では遺伝子異常が存在することもわかっており、およそ半数以上の症例で遺伝子異常が確認できます。QT延長症候群でみられる遺伝子異常としては、心臓の電気運動に関わるものが知られています。
後天性のQT延長症候群
薬、電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症)、徐脈(脈が遅い状態)など、何らかの要因に伴って発症します。薬としては抗生物質、てんかん薬、高脂血症薬、糖尿病薬などが含まれます。後天性QT延長症候群についても、一部の方で遺伝子的な要因が関わっていることが知られています。
症状
多くの方は、普段は何の症状もありません。別の理由(学校検診など)から、たまたま行われた心電図検査で偶然に指摘を受けることもあります。また、家族のなかで突然死を起こした方がいる、といった情報から病気が疑われることがあります。
症状を発症した場合には、失神やけいれん、突然死などが起こります。こうした症状は、運動、恐怖や驚きといった感情ストレス、睡眠中の騒音などによって目覚めたときなどをきっかけとして生じます。 何によって症状がでやすいかについては個人差があり、QT延長症候群のタイプに応じて異なります。
検査・診断
QT延長症候群は、心臓の電気活動に異常を起こしている状態です。したがって、心電図検査にて、心臓の電気活動を確認します。具体的には、心臓が、収縮するための電気活動をしてから拡張をするまでの時間(すなわちQT時間)が、正常よりも長いことからQT延長症候群を診断します。
QT時間が延長しているだけであれば、心臓のポンプ機能に異常はありませんが、QT延長症候群では異常な脈拍を示すことがあります。この異常心拍のことを「トルサードドポワンツ」や「心室期外収縮」と呼びます。こうした異常心拍も心電図にて確認することが可能です。
治療
QT延長症候群の治療は、急性期と慢性期に分けることができます。
急性期
急性期とは、異常心拍を発症している段階で、心臓のポンプ機能に異常がある状態です。
このときには、失神やけいれんなどを生じており、一刻も早く血行動態(血管、心臓などを流れる血液の状態)を戻すことが必要になります。具体的な方法としては、不整脈を取り除くための薬剤を使用したり、一時的にペースメーカーを使用したりすることになります。また、原因となった薬剤や電解質異常を補正することも重要になります。
慢性期
慢性期の治療では、致死的な不整脈(トルサードドポワンツや心室期外収縮など)をいかに予防するか、という点を重視します。
QT延長症候群では、致死的な不整脈が起こる原因をみつけることができる場合もあります。もし運動が原因となる可能性があるのであれば、それを避けるような生活を送ることが大切になります。また、一部の抗生物質や抗てんかん薬などが原因になることもあるため、使用については慎重になることが必要です。
また、内服薬(β遮断薬、ナトリウム遮断薬、カルシウム拮抗薬など)やペースメーカーが適応になることもあります。これらは、必ずしもすべてのQT延長症候群で使用されるわけではなく、一人ひとりのタイプに応じて適切に選択をする必要があります。さらに、上記治療でもうまく発作をコントロールできない場合などにおいては、植え込み型除細動器が使用されることもあります。これを使用することで、仮に発作が起きた場合も正常な心拍に戻すことが可能になります。
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