一般的に突然死の約半数は、心臓に何らかの原因がある心臓突然死だと言われています。また心臓突然死は不整脈が原因で起こることが多く、最も代表的なものが「心室細動」です。しかし、この「心室細動」は救命することが可能な不整脈でもあります。ここでは、「治療が必要な不整脈と治療が不要な不整脈」でもご紹介した致死性不整脈について、「心室細動」を中心にご紹介していきます。
頻脈性不整脈・徐脈性不整脈のどちらにも心臓突然死を引き起こす可能性のある不整脈があります。代表的なものは以下の通りです。
・頻脈性不整脈:心室細動、持続性心室頻拍、トルサード・ド・ポワンツ
・徐脈性不整脈:完全房室ブロック
完全房室ブロックは突然死の原因になることがあります。いきなり初回の発作で心停止に陥った場合、院外で救命措置をすることは難しいですが、頻度としては極めて少ないでしょう。失神や徐脈による心不全の兆候があれば、正確な診断を行った上で、必要に応じて人工ペースメーカ植え込みを行うことが一番確実かつ唯一の治療法であり、予防法です。
心室細動は最も怖い不整脈かつ、最も多い心臓突然死の原因と言えます。文字通り、心室が細かく震えている状態となってしまい、心臓から脳や心臓、身体全体に血液を送り出すことができなくなります。この状態はいわゆる心停止と呼ばれ、数分で呼吸は止まり、血流がないため脳、腎臓、肝臓など重要臓器に障害をきたして死亡してしまうのです。
心室細動は原因なく発症する「特発性」、遺伝性の「Brugada症候群(ブルガダ症候群)」などのほかに、心筋梗塞や様々な心筋症の合併症としても起こります。
心臓突然死の多くがこの心室細動が原因である一方、他の突然死の原因と比較して「救命」できる可能性が高いのもまた心室細動です。心室細動は速やかな除細動(心臓に電流を流し、心室細動を停止させる)によって停止させることが可能であるからです。とはいえ、心室細動を起こしたらまず救急車を呼ぶのが一番ですが、救命かつ社会復帰の可能性を高めるためには、救急隊の到着を待たずに、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)と除細動を行う必要があります。そのため、その場にいる誰もが電気ショックをかけて除細動することができる小型の機械(AED)の普及が推進され、実際に一般の人がAEDを使用して救命した例もみられてきています。
また、心室細動を起こしたことがあったり、起こす可能性が高いと考えられる患者さんには、小型の植込み型除細動器(ICD)を胸に埋め込む治療が行われることがあります。ICDは、心拍をモニタリングし、心室細動や持続性の心室頻拍を起こしたときに自動的に除細動してくれる器械です。突然死を防ぐ反面、1年以上作動することがなく、医師の許可がなければ自動車の運転ができないなどといった制約があります。そこで最近では、植込み型除細動器(ICD)を埋め込む必要があるかどうか判断するまでの間、着用型自動除細動器(WCD)も使用されています。
持続性心室頻拍、トルサード・ド・ポワンツについても基本的な考え方は同様です。持続性心室頻拍も特発性のほか、心筋梗塞や様々な心筋症が原因となる場合があり、ICDが最大に有効な治療となります。またトルサード・ド・ポワンツも、先天性QT延長症候群など生まれつきの原因によるものの場合にはICDの植え込みが必要です。
一方、電解質異常(体の中のミネラルバランスの異常)や薬剤などの影響による後天性QT延長症候群などが原因であれば、原因を改善することでICDの植え込みは必要なくなることがあります。
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