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致死性不整脈の主な治療法――薬からICD(植え込み型除細動器)まで

致死性不整脈の主な治療法――薬からICD(植え込み型除細動器)まで
川村 祐一郎 先生

旭川医科大学 保健管理センター 教授

川村 祐一郎 先生

記事1『突然死の可能性もある致死性不整脈の種類と原因』では、主に致死性不整脈の種類やその症状、原因などをお話しいただきました。心室細動では、特に緊急の救命が重要であるといいますが、救命において大きな役割を果たすものにAED(自動体外式除細動器)があります。街中で突然発作を起こして倒れたとしても、AEDが使用されれば助かる可能性も高くなります。また、致死性不整脈の治療には、薬による治療、カテーテル・アブレーション、ICD(植え込み型除細動器)があり、旭川医科大学の教授である川村祐一郎先生は、これらは大きな効果が期待できるとおっしゃいます。今回は、引き続き川村先生に、致死性不整脈の主な治療法についてお話しいただきました。

致死性不整脈において、主に心室細動の発作を起こした方の救命で大きな役割を果たすものが、AEDです。心室細動は突然起こることに加え、短時間で死に至ってしまう危険な不整脈です。AEDは、このような心室細動により意識を失った方の緊急の救命を可能にします。また、後ほど詳しく述べますが、致死性不整脈の治療には、主にICD、カテーテル・アブレーション、薬があります。私はこれを致死性不整脈における三種の神器と呼んでおり、それほど致死性不整脈において大きな効果が期待できる治療であると考えています。

街中で心室細動の方を救命するために大きな役割を果たすものが、AEDです。AEDは、心室細動の発作を起こした方に対し電気ショックをかけて蘇生する装置であり、今や病院をはじめ空港や駅、学校など、あらゆる公共施設に設置されています。お話ししたように、心室細動は発作が起こると、短期間で亡くなる可能性が非常に高くなってしまいます。それを防ぐため、最短で処置をすることができる装置がAEDです。

このAEDの使い方は簡単です。電源を入れ、ふたをあけると自動的に音声が流れる仕組みになっているため、それに従えば設置が完了します。具体的には、胸の上に2つの電極パッドを貼り、ボタンを押せば機械が自動的に診断をし、治療を行ってくれます。

AED;自動体外式除細動器の
AED:自動体外式除細動器 (画像:川村 祐一郎先生ご提供)

現状では、致死性不整脈で発作を起こした方が街中でAEDを使用される確率は2、3割ほどといわれています。それは、AEDの存在や使い方を知らない方が多いからです。お話ししたように、AEDの使い方は非常に簡単です。音声に従えばどなたでも扱うことができますし、たとえ間違ったとしても、とにかく治療を始めればよいのです。もしもAEDと関係がない病気であれば、AEDと関係がないから救急車を呼ぶよう音声が話してくれます。仮にその病気が心室細動でなかったとしても、使用するリスクよりも使用しないことで亡くなる危険性のほうが高いのです。特に、意識がない、脈拍がない、呼吸をしていないなどの症状が見られるのであれば、発見した方には必ずAEDを使用していただきたいと思います。

AEDが周囲の方の協力が必要であるのに対し、ICDは、自動的に蘇生を可能にする機器です。このICDは、一般的に、心室細動を一度起こし救命された方に適応されますが、まだ心室細動を起こしていないけれどもその可能性がきわめて高い方にも適応されます。ICDを植え込むと、患者さんが発作を起こした際に、機器が自動的に心室細動かどうか心電図を読みます。心室細動になると6秒ほどで意識がなくなりますが、電気ショックをかけるまでに10数秒かかるため、意識がないときに蘇生を受けることになります。

胸を押さえる女性

ICDを植え込む手術は、認定施設でなければ受けることができません。私たち旭川医科大学病院は認定施設の1つです。患者さんにとって、比較的負担が少ない手術になっていることもあり、当院では原則として心室細動になり救命された患者さんには、ICDをすすめるようにしています。

ICDで注意をしなければいけないことは、まれに誤作動があることです。誤作動があると、心室細動を起こしていないときに、電気ショックを受けることになります。意識があるときに棒で叩かれたかのような強い衝撃を受けることになるわけです。そのため、できる限り誤作動がないように取り組んでいますが、本当の心室細動のときに作動しなければ意味がありません。細心の注意を払いながら、私たち医師とメーカーは改良に取り組んでいるので、今後はさらに精密なものになっていくのではないでしょうか。

高圧電線

また、ICDを植え込んだ患者さんは誤作動や故障を防ぐため、高圧電線や磁石に近づいてはいけないといわれています。IHヒーターも50cm以上離れたほうがよいでしょう。

また、致死性不整脈の手術に、カテーテル・アブレーションがあります。これは、心臓に入れた細い管(カテーテル)の先から心筋の一部に高周波を流し、焼灼させる治療を指します。これにより不整脈の原因をなくすことができるといわれており、有効な治療法の1つです。心臓のどこから不整脈が起こっているかが分かれば、それを焼き切ることで二度と不整脈が起きなくなる場合もあり、有効な治療法の1つです。

不整脈で使用される薬は、主にアミオダロンという薬剤です。不整脈の治療において効果が非常に高い薬であるため、適応されることが多い薬です。しかし、不整脈を治療する薬は効果が高い分、副作用も大きいといわれています。副作用として懸念されているものには、間質性肺炎とQT延長がありますが、どちらも確率としては1%以内です。また、アミオダロンほど強くないソタロールいう薬もあり、特にアミオダロンで副作用が出た方や、肝臓や甲状腺に問題がある方は、ソタロールを使用してもよいのではないでしょうか。

薬

記事1『突然死の可能性もある致死性不整脈の種類と原因』でお話ししたように、トルサード・ド・ポワンツの原因となるQT延長は、主にマグネシウムなどの電解質が不足することにより起こります。そのため、トルサード・ド・ポワンツの方にとって、マグネシウムをとることは最大の治療になります。具体的には、液体マグネシウムを点滴静注か一発静注によって投与することが効果的でしょう。これは救急治療のガイドラインにも明記されるほど、広く一般的な治療になっています。

点滴

マグネシウムは、カルシウムに拮抗するといわれています。カルシウムがないと心臓は動かないのですが、必要以上に効きすぎると、血圧も上がり心臓の虚血につながってしまうことがあります。血液の循環が足りないなかで無理やり動かすことは、心臓にとって大きな負担となります。マグネシウムはそのような状態を和らげ、心臓を長持ちさせる機能を果たします。

マグネシウムの弊害は、飲みすぎると下痢を起こす可能性があることです。また、腎不全の方への投与には向かないといわれています。マグネシウムはもともと腎臓から出ていくものですが、腎不全の方は出すことができず、マグネシウムがたまる一方になってしまうからです。

このように現状では、特にトルサード・ド・ポワンツの治療において、マグネシウムが大きな治療効果を果たしています。

繰り返しになりますが、致死性不整脈は死に至る危険な不整脈です。心室細動の発作が起こると、救命には1分1秒を争います。これには周囲の方の協力が非常に重要です。お話ししたように、街中で発作を起こして倒れた方にはAEDを使用することが救命につながります。そのため、できる限り多くの方がAEDの存在や使い方を知ることが大切になるでしょう。また、致死性不整脈の治療法や医療機器は日々進化を続けています。今後はさらに、突然死を減らすことができる社会になれば、というのが私の願いです。

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