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病気を見過ごさないために知っておきたい、危険な動悸と不整脈のサインとは

病気を見過ごさないために知っておきたい、危険な動悸と不整脈のサインとは
眞壁 英仁 先生

戸塚共立第2病院 循環器内科

眞壁 英仁 先生

目次
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「静かに座っているのに動悸がする」「健康診断で心電図異常を指摘された」など、心臓にまつわる症状や懸念は、不安を抱かれる方が多いのではないでしょうか。動悸をはじめ、不整脈のサインとなり得る症状やその原因などを知り、適切なタイミングで治療を受けることは、不整脈の重篤な合併症である心不全脳梗塞(のうこうそく)などを防ぐうえでとても重要です。

今回は、戸塚共立第2病院 循環器内科の眞壁 英仁(まかべ ひでひと)先生に、不整脈を疑うサインや受診の目安を中心にお話を伺いました。

動悸とは、心臓の振動を普段よりも強く感じたり、早く感じたりすることです。胸の辺りが「ドキドキする」と表現されることが多く、人によっては胸の圧迫と感じる方もいますが、胸痛とは異なります。

動悸を主訴に受診される患者さんに多くみられる病気は、実は更年期障害です。特に40歳代以降、性ホルモン分泌量が低下する年代に多く、動悸とともにさまざまな体の不調も訴えられるのが特徴です。

ただし、そのような方々の中には、検査していくと不整脈が見つかる方がいます。不整脈は発見が遅れて悪化すると心臓がパンパンに腫れ、治療の幅が狭めてしまう恐れがあります。そのため、軽度の動悸で受診すべきなのだろうかと悩まずに、1度検査を受けることをおすすめします。

動悸以外にも、不整脈には罹患に伴ういくつかのサインがあります。サインは、不整脈の種類や起こっている合併症によって異なります。中にはサイン自体がみられない不整脈もあります。

以下では、注意すべきサインを中心にお話しします。

脈拍の異常

不整脈がある場合、胸に違和感を覚えることがあります。脈拍が不規則に乱れたり、規則正しい脈でも非常に速かったりするように感じたら注意が必要です。

息切れ・失神

息切れがみられる場合は、心不全によって不整脈を起こしている可能性があります。心不全は命に関わる危険な病気です。

失神がみられる場合は、高度房室ブロックという種類の不整脈が疑われます。これはペースメーカーの留置が必要となります。

このように息切れや失神は、不整脈の中でも緊急性の高いサインといえます。心不全、高度房室ブロックともに急いで治療を行う必要がありますので、これらのサインが現れた際は速やかな受診をおすすめします。

高齢化による変化

若い頃に1度不整脈と診断され、経過観察でよいと言われてそのままになっている方もいるかと思います。普段と変わらない生活を送っていただいて構いませんが、もし動悸がしたり、ふらっと気を失いそうになったりした際には受診いただくことをおすすめします。

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不整脈にはさまざまな種類がありますが、その中で現在もっとも多いのが心房細動です(2023年4月時点)。心房細動は無症状の方もいるため、気付かないうちに心不全や脳梗塞をきたす可能性のある非常に危険な不整脈です。自覚症状がないまま放置した結果、脳梗塞を発症して半身麻痺に至った例もあります。

会社の健康診断などで心電図検査をした際、異常が出ていれば、自覚症状がなくても不整脈のサインとなります。ただし、検査時に不整脈が出ているとは限らないので、心不全を見つけることが困難な事例も多いと考えられます。

家庭で調べる方法としては、スマートウォッチなどをうまく活用するとよいでしょう。不整脈が出た際に教えてくれたり、指で数十秒ほど押さえると心電図を記録してくれたりする機能を持つスマートウォッチもあるようです。波形がきれいに取れるものが多く、実際の診療の際にも大変役立っています。

心臓は、上側から下側に向かう電気興奮によって動いています。不整脈は、この電気興奮の伝導が不安定になることで起こります。歳を取ると出てきやすい不整脈の1つである心房細動を例に説明しましょう。

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心房細動が起こっているとき、心臓内の電気興奮は、伝導を妨げられて渦を巻いている状態です。たとえば、川が流れているところに岩があり、本来の水の流れが妨げられてぐるぐると渦を巻いている様子を想像してください。これが心臓の中で起こっているイメージです。

人間は歳を取ると、関節や腰が固くなり痛みが生じますが、同じように心筋細胞も硬くなって線維化します。硬くなることより電気興奮の伝導が妨げられ、心臓内でも複数の渦が発生するという仕組みです。

多くの不整脈に共通しているリスク因子は、自律神経の乱れです。自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられます。本来、日中の活動的なときは血圧を上げるために交感神経が優位に、逆にリラックスするときは血圧を下げるために副交感神経が優位になることで、自律神経のバランスは保たれています。たとえば、就寝前に手足が温かくなるのは、副交感神経のはたらきによって末梢(まっしょう)の血管が開くためです。

疲れや不規則な生活、ストレスなどは自律神経の乱れを招き、不整脈のリスクにつながります。あまり知られていないと思いますが、ご家族に不整脈の方がいる場合には遺伝する可能性があります。

なお、先ほどお話しした心房細動については、高血圧症肥満症糖尿病睡眠時無呼吸症候群などもリスク因子といわれています。

心房細動は、異常な電気興奮によって、左房が1分間に300~600回ほど小刻みに震えている状態です。細かい震えによって、心筋細胞の線維化が進行すると、心臓はパンパンに大きくなります。最終的に心不全まで至ると、入退院を繰り返しながら薬物療法を続けるといった状況を招く可能性もあります。そのため、早期にきちんと治療を行うことが重要です。

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