不整脈のなかでも、胎児期から幼児期、または幼児期以降の小児期に発症するものを小児不整脈といいます。基礎疾患のない小児不整脈の多くは、成長の過程によって発症する一時的なものであり、自然に消失します。しかし、なかには治療が必要な小児不整脈も存在します。
今回は、埼玉県立小児医療センター 循環器科 科長兼部長の星野健司先生に、小児不整脈の原因や種類、成人の不整脈との違いについてお話しを伺いました。
心臓は収縮と拡張を繰り返すことによって、全身に血液を送っています。通常は、この収縮と拡張のリズムが一定に行われていますが、このリズムに異常が生じたものを不整脈といいます。そして、胎児期から乳児期、または幼児期以降の小児期に発生するものを、小児不整脈と呼びます。
成人の不整脈は、加齢により発症することが多くあります。しかし、子どもは、成長によって神経のバランスが崩れたり、生まれつきの病気が引き起こしたり、遺伝子の変異といった理由で発生します。
不整脈は大きく、徐脈、頻脈、期外収縮の3種類に分類されます。不整脈の患者さんの多くは期外収縮であるといわれています。また、徐脈と頻脈はさらに細かく分類されます。多くは無症状であり、学校の健康診断・心臓検診で発見されます。しかし、症状がでた場合は、ふらつきや失神などの原因となり、種類によっては命にかかわる危険性もあります。
徐脈とは、脈が遅くなる不整脈です。通常の健康な方の脈は、1分間におよそ60回から100回ですが、40-60回を下回っている場合は、徐脈といわれます。
頻脈とは、脈が速くなる不整脈です。年齢により異なりますが、1分間におよそ150-200回以上の脈があった場合は、頻脈といわれます。
期外収縮とは、心臓が本来の周期を外れて早く収縮する(脈が不規則になる)不整脈です。上の図の真ん中の心電図ように、脈がワンテンポ速くなると脈が飛んでいるように感じます。期外収縮から頻脈を起こした場合は、図の一番下の心電図のように変わります。
心臓の上の部分である心房から発生するものを心房性期外収縮といい、心臓の下の部分である心室から発生するものを心室性期外収縮といいます。多くの期外収縮は、治療をしなくても自然と消失していきます。
不整脈を引き起こす原因はさまざまです。以下では患者数の多いものや治療の必要がある病気について説明します。
人間の体には、生命維持に欠かせないはたらきを担う自律神経があります。この自律神経は、心身を緊張させるはたらきの交感神経と、心身をリラックスさせるはたらきの副交感神経によって成り立っています。赤ちゃんのときは、副交感神経が優位になっていますが、成長するにしたがって次第に交感神経が優位になっていきます。この二つの神経の関係が変化する際に、上手くバランスをとることができなかった場合に不整脈が生じます。このように、自律神経のバランスが成長の過程で崩れることによって小児不整脈を発症することがあります。
生まれつき心臓に病気をもっている場合(先天性心疾患)、その病気によって徐脈、頻脈、期外収縮を引き起こすことがあります。また、先天性心疾患の手術を実施することによって術後に房室ブロック*などの不整脈を発症することがあります。
房室ブロック…心房から心室への電気の伝わりが阻害される病気。
心臓は洞結節*という場所から、電気信号が発生し、心房と心室に伝わることで収縮と拡張を繰り返しています。その電気信号を送る伝導路の他に、別の伝導路がある病気をWPW症候群(Wolf-Parkinson-White syndrome)といいます。これによって脈拍数が高くなる頻脈を発症します。
洞結節…一定のリズムで電気刺激を作る組織。
QT延長症候群とは、心電図のQT*と呼ばれる部分が伸びる病気で、頻脈発作を起こすことがあります。発作を起こすと失神の原因となり、場合によっては突然死する可能性のある病気です。また、QT延長症候群の多くは遺伝子変異が関係しています。QT延長症候群を引き起こす遺伝子もさまざまで、どの遺伝子が変化しているかによって、注意すべき点も異なります。たとえば、この病気の患者さんは水泳中に不整脈を発症する危険性が高いといわれています。しかし、遺伝子変異の種類によっては、水泳をすることに問題のない方もいます。また、性ホルモンの作用も関係しているといわれています。そのため、一部の遺伝子変異では、男性は中学生前後で症状が現れやすく、20歳以降に初回発症することは少ないといわれています。
なお、薬物治療や植込み型除細動器(ICD)などを使用することで、頻脈発作・突然死を予防することが可能です。
(小児不整脈の治療について詳しくは、記事2『小児不整脈の治療法とマグネシウムの関係について』をご参照ください)
QT…心電図の波形は主に、P波、Q波、R波、S波、T波の5つの波からできており、Q波のはじまりからT波の終わりまでをQTと呼ぶ。
小児不整脈は期外収縮などそれほど心配する必要のないものが多いですが、なかにはQT延長症候群など命にかかわるケースもあるため、早期発見はとても重要です。
小児不整脈の多くは、学校で実施される健康診断・学校心臓検診でみつかります。また、予防注射の際に心臓の音を聞くことでみつかるケースもあります。そういった検診や予防注射をしっかりと受けていただくことが、小児不整脈の早期発見につながります。
記事2『小児不整脈の治療法とマグネシウムの関係について』では、小児不整脈の治療法とマグネシウムの関係について詳しく説明します。
埼玉県立小児医療センター 循環器科
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