記事1『マグネシウム不足の影響-インスリン抵抗性を介して糖尿病の原因に!そして突然死にも関連』記事2『マグネシウム不足に拍車をかける従来の糖尿病治療の問題点とは?』では、マグネシウム不足が糖尿病を招き、そのうえ糖尿病の治療によってさらなるマグネシウム不足が助長されるメカニズムについてお話しいただきました。しかし、マグネシウムの不足が悪影響を及ぼすのは糖尿病患者さんだけではありません。実は循環器領域では以前よりマグネシウム不足が突然死のリスクを高めることが明示されています。
今回はマグネシウム不足と心疾患患者さんの突然死のリスクについて、引き続き旭川医大名誉教授・札幌南一条病院 循環器・腎臓内科 顧問の菊池健次郎先生にお話しいただきました。
循環器領域では、マグネシウムが不足すると突然死のリスクを高めることはよく知られています。今回はこのメカニズムについてご説明します。
まず、血中のマグネシウムには2種類の形態が存在します。
・アルブミンや塩と結合したマグネシウム
・(上記のようなものと結合していない)イオン化したマグネシウム
実はこのうち、体内で生理的に役割を果たす(生理活性を持つ)のは、イオン化したマグネシウムです。この血中イオン化マグネシウムが低い(マグネシウム不足)と心電図のQTc(心拍補正QT時間)とそのばらつき(QTc dispersion:QTcd)が大きくなることが明らかにされています。
心電図にはP波、Q波、R波、S波、T波という5つの波があります。QTcは、このうちのQ波の始まりからT波の終わりまでの時間をRR間隔で補正計算したもので、心筋が電気的に脱分極(興奮)し、次いで、再分極(回復)するまでの時間で、QTcdはこのQTc時間の心筋の部位(心電図の電極:通常は12誘導の部位)の間のばらつきを表します。QTcdが大きくなることは、心筋に異常があり、部位による再分極(回復)時間・不応期(心筋が刺激に反応できない時間)が一様でなく、致死的な心室性不整脈が出易くなることを意味し、突然死につながることが知られています。
上記のグラフは健常成人と心疾患を持つ患者さんの血中イオン化マグネシウムとQTcdの相関を示したものです。ご覧の通り赤点で示された心疾患を持つ患者さんも水色点の健常者のいずれにおいても、イオン化マグネシウムが低い例ほどQTcdが大きい関係が認められ、かつ、健常者に比べ、心疾患患者さんでは同じイオン化マグネシウム値であってもQTcdが大きくなることがわかります。つまり、血中マグネシウム値が低いと突然死に繋がる致死的な不整脈・トルサード・ポワン(TdP)の出現リスクが高まり、特に、心疾患を持つ患者さんでそのリスクがより強まるといえます。
札幌南一条病院 循環器・肝臓内科 顧問、旭川医科大学 名誉教授
「心疾患」を登録すると、新着の情報をお知らせします
本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。
なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。