概要
低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が低下した状態を指します。一般的には血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満になった場合に、低カリウム血症と診断されます。
カリウムは体内に存在する電解質の1つで、細胞内の浸透圧を調整するはたらきや、神経の興奮や心筋のはたらきを助ける役割も果たしています。また、腎臓の機能が正常な場合は、ナトリウムを体外に排出するのを促す作用を持つため、塩分の取りすぎによる血圧の上昇を抑えるはたらきもあります。
そのため、カリウムが不足するとこれらのはたらきが正常に行われなくなり、大きく不足した場合には脱力感、手足のだるさ、筋肉痛、こわばり、麻痺、不整脈、呼吸困難などの症状が出現することがあります。
原因
低カリウム血症は、食事からのカリウム摂取不足や低マグネシウム血症(血液中にマグネシウム濃度が低下した状態)によって起こる場合もありますが、典型的には嘔吐や下痢、利尿薬などによって大量のカリウムが体外に排出されることで生じます。また、カリウムの細胞内移動によって起こることもあります。
摂取量不足
カリウムは、野菜、豆類、魚、果物など多くの食材に含まれています。偏った食事などで摂取量が不足すると低カリウム血症になる場合があります。
排出量の増加
嘔吐や下痢が続くと消化管から大量のカリウムが失われます。また、利尿薬(ループ利尿薬、チアジド系利尿薬)や漢方薬(甘草)、アミノグリコシド系抗菌薬、グリチルリチン製剤などによって過量のカリウムが尿中に排出されることも原因の1つです。このような薬を原因とする低カリウム血症は薬の服用から数週間後に起こることが多いですが、数年以上経過してから発症することもあります。
また、クッシング症候群をはじめとした副腎疾患があると、ホルモンの影響で腎臓から大量のカリウムが排出され、低カリウム血症を引き起こす場合があります。
細胞内移動
糖尿病の治療薬として知られるインスリンや、気管支拡張剤のサルブタモールなどの特定の薬は血液中のカリウムを細胞に移動させる作用があるため、使用すると低カリウム血症になりやすくなります。
症状
軽度の低カリウム血症では、症状が現れることはほとんどありません。血液中のカリウム濃度が3.0mEq/L未満の重度になると、脱力感、手足のだるさ、筋肉痛、筋力低下、こわばり、麻痺、不整脈などの症状がみられます。症状が進行すると、歩行不能や起立不能、呼吸困難、褐色尿、多尿などが生じることもあります。
なお、心疾患がある人や心疾患の治療薬であるジゴキシンを使用している人は、軽度の低カリウム血症でも不整脈が起こることもあるといわれています。
検査・診断
低カリウム血症を発症しているかどうかは、血液検査で血液中のカリウム濃度を測定することで分かります。一般的には血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満の場合に、低カリウム血症と診断します。
その後、発症の原因を調べるために薬の服用歴を確認したりしますが、原因がはっきりしない場合には尿検査で尿中に排出されるカリウム量を測定します。
低カリウム血症になると不整脈が出現することがあるため、心電図検査で不整脈の有無を確認する場合もあります。
治療
低カリウム血症では不足したカリウムを補うことが治療の基本です。通常、カリウムの補充はカリウム製剤の内服によって行い、カリウム濃度が著しく低い重症例などではカリウム製剤を点滴で補充します。
腎機能が正常である場合には、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬(腎臓からのカリウムの排出を抑える利尿薬)で治療を行うこともあります。
また、病気が原因となっている場合にはその病気に対する治療を行い、薬が原因となっている場合には原因薬を中止します。薬を原因とする低カリウム血症では、軽度であれば原因薬を中止するだけで改善する場合もあります。
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