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虚血性心疾患の治療法 ~薬物療法やカテーテル治療、バイパス手術の方法や適応~

虚血性心疾患の治療法 ~薬物療法やカテーテル治療、バイパス手術の方法や適応~
藤田 勉 先生

医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO

藤田 勉 先生

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虚血性心疾患とは、心臓の栄養血管である冠動脈が狭くなったり塞がったりすることで、心臓を動かす筋肉である心筋に血液(栄養、酸素)が十分に供給されない病気の総称です。

冠動脈の狭窄(きょうさく)閉塞(へいそく)によって引き起こされるため、冠動脈を広げたりして心筋への血流を改善する治療を行います。主な治療方法として、薬物療法、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術があります。ここでは、それぞれの治療方法について詳しく解説します。

虚血性心疾患は、病気の状態によって狭心症心筋梗塞(しんきんこうそく)に分けられます。冠動脈が狭くなって一時的に心筋が血液不足に陥るのが“狭心症”、冠動脈が完全に塞がり心筋が死んでしまうのが“心筋梗塞”です。また、狭心症には病状が数か月安定している安定狭心症(労作性狭心症冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう))と、短期間のうちに病状が悪化する可能性のある不安定狭心症があります。

病気の状態によって治療法が異なり、安定狭心症では初期治療として薬物療法が選択されるのが一般的です。不安定狭心症や心筋梗塞は命に関わる危険な状態であるため、診断後速やかにカテーテル治療や冠動脈バイパス手術を行います。

病状が落ち着いている安定狭心症では、薬物療法による治療が中心です。使用する薬には、血液の塊(血栓)ができるのを防ぐ抗血小板薬、症状を安定化させるβ遮断薬、冠動脈を拡張させる血管拡張薬(硝酸薬やカルシウム拮抗薬)などがあります。このような薬を継続使用し、症状の軽減を図ります。

これらの薬のうち、ニトログリセリンなどの硝酸薬は発作時にも使用します。舌下錠、スプレー剤、内服薬、貼付剤の4つの剤型がありますが、その中で発作時に使用するのが舌下剤とスプレー剤です。舌の下に入れて舐めたり口内にスプレーを噴霧したりすることで、冠動脈が拡張して心筋の血液不足が解消され、数分のうちに症状が軽減します。

また、動脈硬化の予防が必要になるため、コレステロールを下げる必要があります。

カテーテル治療とは、カテーテルという細長い管を使用して狭窄・閉塞している冠動脈を広げる治療です。手首や肘、足の付け根などにある血管からカテーテルを挿入し、血管を通して心臓近くまで進め、狭窄部位でバルーン(風船)を膨らませる、あるいはバルーンで膨らませた後にステントという小さい筒を留置し、狭窄・閉塞している冠動脈を広げます。

カテーテル治療は主に、安定狭心症でも狭窄が高度の場合や、不安定狭心症や心筋梗塞の場合に行われます。治療は局所麻酔で行われ、体への負担が少ないことから、虚血性心疾患に対する根治的な治療としては第一選択となっています。最近は、遠位部橈骨動脈(えんいぶとうこつじょうみゃく)からカテーテルを入れる方法もあります。

冠動脈バイパス手術とは、冠動脈の狭窄・閉塞しているところには手を付けず、新しい血管(バイパス血管)を作って血流をよくする手術です。カテーテル治療が困難な場合や、複数箇所に狭窄・閉塞がある場合などに行われます。

手術では全身麻酔をした後に開胸し、体のほかの部分から採った血管を冠動脈の狭窄・閉塞のあるところよりも先の部分でつなげ、迂回路を作ります。こうすることで血液が病変部分を通らず、バイパス血管を経由して心筋に流れるようになります。

なお、冠動脈バイパス手術には大きく分けて、心臓を一時的に止めて心臓の代わりとなる人工心肺という装置を使用して行う心停止下冠動脈バイパス術と、心臓が動いた状態のまま行う心拍動下冠動脈バイパス術があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、両方とも施行可能な病院では患者さんの状態に応じて選択されます。また、最近では低侵襲手術として、胸骨切開をしない小さな傷でのバイパス手術も可能になってきています。また、ロボット手術もされています。

虚血性心疾患の主な治療法は、薬物療法、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術です。一般的に病状が落ち着いている安定狭心症では薬物療法が中心で、狭窄が重度の場合や閉塞している場合にカテーテル治療または冠動脈バイパス手術が選択されます。

このように病態に応じて適切な治療法が選択されますが、患者さんの希望も考慮して決定されます。また、薬物療法では薬の使用における注意点が多々あるほか、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術ではリスクを伴います。

納得して治療を進めていくには現在の状態や治療について正しく理解することが大切です。分からないことがなくなるまで医師と十分に話し合い理解を深め、治療を受ける場合には医師の指示に従って治療を続けていくようにしましょう。この病気になった方は、一生の管理が必要となることを忘れないようにしましょう。

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