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冠攣縮性狭心症とはどんな病気?~胸の痛みや不快感などの症状が起こる~

冠攣縮性狭心症とはどんな病気?~胸の痛みや不快感などの症状が起こる~
柴山 謙太郎 先生

東京心臓血管・内科クリニック 院長

柴山 謙太郎 先生

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心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送り届けるための血管を冠動脈といいます。冠動脈は心臓の表面を網の目状に覆うように走っています。この血管に血流障害が生じて心臓が活動するために必要な血液が十分供給されなくなることで、さまざまな症状が出る状態を“狭心症”と呼びます。

狭心症は、原因や症状が異なるいくつかの種類に分けられます。このうち、冠動脈が一時的に過剰に収縮してしまうことで血流障害を生じてしまうものを“冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)”とよびます。

冠攣縮性狭心症は、冠動脈の血管の筋肉がけいれんして過剰に収縮することによって生じます。一過性の血流障害が生じることによって心筋に必要な血液が一時的に不足してしまうため、胸の痛みや不快感などの症状が起こります。異なる原因で生じる“労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)”では運動したときなどに症状が出やすいのに対して、冠攣縮性狭心症は夜間や早朝の安静時に症状が出ることが多いのが特徴です。

狭心症は、発作が起こっていないときに検査をしても異常所見が見つからないことが多いため見逃されやすい病気です。しかし、発作がひどくなると心臓の筋肉が死んでしまうこともあります。十分な治療を行わずにいると心筋梗塞不整脈につながり、場合によっては生命を脅かすこともあります。

冠攣縮性狭心症のリスクを高める要因の1つとして、喫煙が指摘されています。冠動脈の攣縮は動脈硬化との関係が深く、この点からも禁煙が重要とされています。ほかにも飲酒やストレス、遺伝的要因なども発症と関係があるといわれています。

日本人では、男性のほうが女性よりも冠攣縮を起こしやすく、女性では閉経後にリスクが高くなります。また、冠攣縮性狭心症の患者数は高齢であるほど増える傾向にあります。狭心症全体の中で冠攣縮性狭心症が占める割合は病院によってばらつきはありますが、平均すると概ね40%程度となります。

冠攣縮性狭心症には人種差があることも特徴です。日本人は欧米人と比べて冠攣縮の頻度が高いことが知られています。心筋梗塞を発症した患者さんに冠攣縮が起こる確率は、欧米人と比べて日本人では2倍以上高く、日本人の心疾患に冠攣縮が大きく関係している可能性が指摘されています。

また、日本人では夜間の突然死の頻度が高いことも冠攣縮の起こりやすさと関係があるといわれています。人種差の背景には、喫煙などの生活習慣に加えて遺伝的な要因があると考えられています。

自覚症状としては、胸の中央にある骨(胸骨)の下のあたりの圧迫感や、締めつけられる、詰まるというような感覚があり、痛みの場所をピンポイントで示すことのできない漫然とした痛みが特徴です。冠攣縮が起こっているにもかかわらず、無症状のことも多くあります。

また、痛みは胸に生じるとは限らず、肩、首、顎、みぞおちなどの痛みとしても現れます。腕のしびれや、左肩から腕にかけて力が抜けるような感じが生じることもあります。

症状は、夜間や早朝など安静にしているときに出やすいことが特徴です。比較的強い痛みが数分~15分程度続き、冷や汗や吐き気などが現れ、ときには不整脈となり意識を失う場合もあります。発作が毎日何回も起こることもあれば、数か月~数年症状が出ないこともあります。なお、症状や症状の現れ方に個人差が大きいことも、この病気の特徴です。

冠攣縮性狭心症の症状は多彩で、痛みの場所や痛みが現れる頻度には個人差が大きく、症状のみで診断することはできません。また、冠攣縮が起こっていても自覚症状がない場合もあります。しかし、無治療のままにしておくと心筋梗塞不整脈などにつながり、生命が脅かされる危険があります。正しく診断を受け、適切な治療を開始するためには心電図や心エコーなどの検査が必要です。気になる症状がある場合は、循環器内科など専門の外来を受診するようにしましょう。

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