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大動脈弁狭窄症の症状 ~初期は無症状のことが多い? 胸の痛み、息切れなどに要注意~

大動脈弁狭窄症の症状 ~初期は無症状のことが多い? 胸の痛み、息切れなどに要注意~
杉本 匡史 先生

三重大学医学部附属病院 中央検査部 助教

杉本 匡史 先生

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大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)とは、心臓にある大動脈弁が狭くなり、そこを通る血液の流れが悪くなった状態を指します。血液は全身(大静脈)→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身(大動脈)というルートで循環しており、左心室と大動脈の間に弁(大動脈弁)がついています。

大動脈弁は大動脈から左心室に血液が逆流しないよう開閉する仕組みになっていて、大動脈弁が狭くなると全身に流れる血液量が減ったり、心臓に負担がかかったりします。その結果、さまざまな症状が現れるようになります。

大動脈弁

大動脈弁狭窄症の代表的な症状は、狭心症、失神、心不全症状です。大動脈弁狭窄症は狭窄の程度が軽度から中等度であると無症状で経過することが多く、狭窄の程度が高度になって初めて症状が現れるようになります。ただし、かなり進行しても症状が出ないこともあります。

大動脈弁が狭くなると、その手前にある左心室に圧負荷がかかり、左心室の壁(心筋)が分厚くなります。心臓自体に酸素や栄養を送る血管のことを冠動脈といい、左心室の壁が分厚くなると冠動脈によって供給される血液が不足するため、左心室は酸素や栄養の不足に陥り、胸の圧迫感や痛みが起きやすくなります。また、大動脈弁狭窄症には冠動脈の狭窄も合併する頻度が高いため狭心症の原因となります。通常、胸の圧迫感や痛みは歩行など運動時に生じ、このような症状は数分間安静にするとなくなります。

心臓から送り出される血液の減少により脳への血流が低下すると失神が起こります。失神は通常、ふらつきやめまいなどの前触れがなく生じます。

心不全とは、血液を送り出す心臓のポンプ機能が正常に働かなくなる状態のことです。狭くなった大動脈弁の影響で左心室の機能が低下し左心不全を起こすと、体を動かしたときに息切れや呼吸困難、疲労感が生じたりするようになります。また、右心不全が合併すると両足がむくんだりするようになります。

大動脈弁狭窄症は高齢者に多い病気ですが、先天性のものもあり、新生児や乳児に発症することもあります。新生児や乳児の場合には、呼吸や脈が速い、ミルクの飲みが悪い、体重が増えないなどの症状がみられるようになります。

頻度としてはそれほど高くありませんが、大動脈弁狭窄症感染性心内膜炎を合併することがあります。感染性心内膜症は、狭くなった大動脈弁が傷つき、血液に乗って流れてきた細菌がその傷に感染することで発症します。

発症すると、発熱といった症状のほかに、動脈に菌の(かたまり)が詰まって塞栓症(そくせんしょう)を引き起こす場合や、大動脈弁の逆流により心不全を引き起こす場合もあります。塞栓症により脳梗塞が起こると、急に半身の手足が動かなくなる、片方の手足がしびれる、ろれつが回らない、ものが二重に見えるなどの症状が現れます。

重度の大動脈弁狭窄症と診断された方に狭心症、失神、心不全といった症状が出るようになると予後は悪く、根治的治療を行わない場合の平均余命は2~5年といわれています。また、感染性心内膜炎の合併により大動脈弁が破壊されると急激に症状が出現し、突然死に至ることもあるため注意が必要です。

大動脈弁狭窄症は症状が出てから診断されると予後が悪いため、無症状のうちに診断されることが望ましいとされています。日常診療や健康診断などで聴診による心雑音をきっかけに大動脈弁狭窄症と診断されることが多くあるため、無症状であっても聴診で異常を指摘された場合には早めに精密検査を受けたほうがよいでしょう。

また、胸の圧迫感や痛み、息切れ、呼吸困難、失神、両足のむくみなどの症状があれば速やかにかかりつけ医もしくは循環器内科を受診するようにしましょう。

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