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患者数が増加する大動脈弁狭窄症の原因とは ~代表的なものは加齢だが先天的な要因がある場合も~

患者数が増加する大動脈弁狭窄症の原因とは ~代表的なものは加齢だが先天的な要因がある場合も~
高梨 秀一郎 先生

川崎幸病院 副院長 川崎心臓病センター長 心臓外科主任部長

高梨 秀一郎 先生

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大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)とは、心臓にある大動脈弁の開きが悪くなることで、心臓から全身へ血液が流れにくくなる病気です。日本では65歳以上の2~3%が罹患しているとされ、65~100万人の潜在患者がいると推定されています。大動脈弁狭窄症は比較的身近な病気ですが、重度になると一般的に予後不良となり、突然死に至ることもある危険な病気でもあります。本記事では、大動脈弁狭窄症の病態と原因について解説します。

心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれていて、血液は全身(大静脈)→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身(大動脈)というルートで循環しています。弁は各部屋の区切りに計4つ存在し、血液が逆流しないよう、血液が流れるときに開いて流れ終わると閉まるようになっています。

大動脈弁は左心室の出口にある弁で、3枚の薄い膜(弁尖(べんせん))によって構成され、この3枚の弁尖が開閉して血液が逆流しないよう機能していますが、何らかの理由で弁の開きが悪くなることがあります。これが大動脈弁狭窄症です。

大動脈弁の開きが悪くなると血液が通過する面積も狭くなるため、全身に流れる血液量が減少します。また、狭くなった大動脈弁の部分で抵抗が起こるため左心室に圧負荷がかかり、左心室が分厚くなっていき、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能が弱まっていきます。このような結果として、胸の圧迫感や痛み、失神、心不全症状(体動時の息切れ、疲労感、両足のむくみ)など、さまざまな症状が現れるようになるのです。

大動脈弁の開きが悪くなるのは弁が硬くなるためですが、その主な原因には、加齢、先天性二尖弁、リウマチ熱の後遺症があります。

動脈の血管が硬くなる動脈硬化と同じように大動脈弁が硬くなり、弁尖同士がくっついてしまうことで狭窄が起こります。これは長年使われ続けたことによる弁の自然老化と考えられていますが、高血圧や高コレステロール血症などの生活習慣病が関与しているのではないかともいわれています。この加齢性大動脈弁狭窄症は、近年高齢化に伴い増加傾向にあります。

大動脈弁を構成する弁尖は本来3枚ありますが、生まれつき2枚しかない人もいます。これを先天性二尖弁といい、およそ100人に1~2人が二尖弁だとされています。弁尖が2枚しかないと弁により大きな負担がかかるため、正常な弁よりも硬化や変性が起こりやすくなるといわれています。

先天性二尖弁は年齢が若いうちから狭窄が進行するとされ、若い人の中ではもっとも多い原因です。先天性二尖弁による大動脈弁狭窄症は、新生児や乳児に発症することもあります。

リウマチ熱とは溶連菌の感染後に発症する合併症の1つで、子どもに多く見られる病気です。子どものときにかかったリウマチ熱が原因で弁の変性が少しずつ進行していき、感染から何十年も経ってから狭窄が起こるようになります。かつてはリウマチ熱による大動脈弁狭窄症は多かったのですが、現在は抗生物質の普及によってリウマチ熱自体が減ったことで、リウマチ熱性大動脈弁狭窄症も少なくなっています。

このように大動脈弁狭窄症はさまざまな原因によって起こりますが、原因にかかわらず、狭窄は徐々に進行していきます。初期には無症状のこともめずらしくなく、体動時の胸の痛みや息切れ、失神、全身のむくみなどの症状が現れるようになると一般的に予後は悪いといわれています。また、かなり進行しても症状が出ないこともあります。

大動脈弁狭窄症は高齢者に多い病気です。特に気になる症状がなく元気な場合でも、定期的に健康診断人間ドックを受けるようにしましょう。

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