概要
リウマチ熱とは、A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)に対する免疫反応によって生じる炎症性の合併症の1つです。
溶連菌感染症はあらゆる年齢でかかることのある比較的身近な感染症で、主に喉に感染し、発熱や喉の痛み、リンパ節の腫れなど風邪のような症状が出現します。
治療せずに自然治癒することもありますが、治療を行わなかった場合に、治癒してから通常2~3週間後に関節や心臓、皮膚、神経系に炎症が起こることがあります。
この炎症性の合併症がリウマチ熱で、さまざまな部位に炎症が生じる結果、発熱に加えて関節痛や胸痛、発疹、不随意運動など、炎症部位に応じた症状がみられるようになります。
疫学
産業国ではリウマチ熱の発生数は激減しています。たとえば、アメリカでは20世紀初頭、リウマチ熱は小児や思春期の死因の中で極めて多い状況でした。その後、ペニシリンによる抗菌薬の導入により、1980年代では、200〜400分の1の発生数に激減しています。しかしながら、発展途上国ではいまだにリウマチ熱の発生頻度は高い状況です。
現在、日本におけるリウマチ熱の年間報告数は数例と非常にまれな合併症です。発症者は子どもに多く、特に5~15歳くらいによくみられるとされています。
原因
リウマチ熱の原因はA型溶血性レンサ球菌で、この細菌による咽頭炎に続いて発生します。溶連菌感染症にかかると体内では抗体が作られ、病原体を排除するために攻撃しますが、時に抗体が関節や心臓、神経などの組織を攻撃してしまうことがあり、その結果として各部位に炎症が起こると考えられています。
また、溶連菌感染症にかかった人が治療を受けなかった場合でも、リウマチ熱を発症する割合はごく一部であり、家族内での発症もあることから、体質や遺伝的な要素も関与しているとされています。
なお、A型溶血性レンサ球菌は主に喉に感染して咽頭炎を引き起こし、皮膚や体のほかの部位に感染することもありますが、リウマチ熱は咽頭炎にのみ続発します。皮膚や体のほかの部位に感染した後にリウマチ熱が起こることはなく、このメカニズムについては分かっていません。
症状
リウマチ熱では関節や心臓、皮膚、神経系に炎症が生じ、炎症部位に応じて発熱や関節痛、胸痛、発疹、不随意運動などの症状が現れます。症状が1つのこともあれば複数みられることもあります。
初期症状としては発熱と関節痛がもっとも多く、典型的には溶連菌感染症が治ってから2~3週間後に症状が出始めます。
関節に関する症状
関節に炎症が起こった場合には関節痛が生じ、通常は手首、足首、肘、膝の関節で発症して1つあるいは複数の関節が急に痛み出します。熱を持ったり、腫れて赤くなったり、関節がこわばって中に液体がたまったりすることもあります。
心臓に関する症状
リウマチ熱の合併症でもっともリスクが高いのは心臓の炎症です。リウマチ熱患者の50〜60%に発症すると考えられています。心臓に炎症が起こっても無症状で経過することもありますが、心臓への炎症が心内膜、心筋、心外膜などに波及すると胸痛や心拍数の増加、心雑音がみられる場合もあります。心雑音は心臓弁の炎症によって弁が十分に閉まらなくなり血液が逆流することで生じ、これまでになかった心雑音が聞こえたり、音が大きくなったり変化したりするようになります。なかでも僧帽弁や大動脈弁の心臓弁の炎症が進行すると、弁の逆流による心不全症状に進展します。疲労感や息切れ、吐き気・嘔吐、空咳などの症状が出現します。心臓の炎症は後遺症が生じる場合があることから注意が必要です。
皮膚に関する症状
リウマチ熱でみられる皮膚症状は、輪状紅斑(輪を描くように拡大する平らな発疹)や、皮下結節(皮膚の下の小さくて硬いしこり)です。
発生頻度は少なく、1日以内に消えることも多いですが、これらの皮膚症状が出現した場合にはリウマチ熱を発症している可能性が高いと考えられます。
神経系に関する症状
神経系に炎症が起こった場合には、不随意運動がみられることがあります。自分の意志とは関係なく手足や顔などが動き、まるで踊っているような動き方をすることから舞踏病と呼ばれています。通常、リウマチ熱による不随意運動はほかの症状が全て消えた後に生じます。
検査・診断
リウマチ熱は溶連菌感染症に続発することから、まずは原因菌であるA群溶血性レンサ球菌の感染を証明するために、血液検査で菌に対する抗体が上昇しているかを確認します。また、綿棒で喉の粘液を採取して菌の有無を調べます。
そのほか、血液検査で炎症を示す赤血球沈降速度(赤沈)やC反応性タンパク(CRP)を確認したり、心電図検査や心臓超音波検査によって心臓の合併症の有無を調べたりすることもあり、このような検査と症状をもとに診断されます。
治療
リウマチ熱の治療は、原因菌であるA型溶血性レンサ球菌に対する抗菌薬と、炎症を抑える抗炎症薬を用いた薬物療法が中心です。
抗菌薬は体内に残存している菌の完全除去を目的に、A型溶血性レンサ球菌に有効なペニシリン系が主に用いられます。抗炎症薬はアスピリンなどを使用し、これらを内服あるいは注射によって投与します。
心臓の炎症が強い場合には、アスピリンに加え副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)を使用して炎症を鎮めます。心不全を起こしている場合には、さらに心不全に対する治療が行われます。
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