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カテーテル治療とは? その成り立ちと進歩

カテーテル治療とは? その成り立ちと進歩
日比 潔 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター循環器内科 准教授

日比 潔 先生

目次
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カテーテル治療とは、カテーテルと呼ばれる細い管を、脚の付け根などにある動脈から挿入し、病変部まで到達させて治療する方法です。1977年に世界で初めて行われたカテーテル治療は、これまでに大きな進歩を遂げました。現在では、外科手術と比べて患者さんの体にとって負担の少ない治療として活用されています。カテーテル治療の成り立ちや進歩について、横浜市立大学附属市民総合医療センターの日比潔(ひび きよし)先生にお話を伺いました。

カテーテルとは、直径2mmほどの細い管のことで、さまざまな疾患の治療に用いられます。カテーテル治療では、主に脚の付け根、手首、肘などにある動脈からカテーテルを挿入し、血管の詰まった箇所など病変部まで到達させて、風船で拡張することで治療します。

カテーテル 画像提供:日比潔先生

心臓には、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養素を運ぶための血管(冠動脈)が張り巡らされています。この冠動脈が動脈硬化注1などによって狭くなったり塞がってしまったりすると、心臓のポンプ機能が低下します。このような病気を、冠動脈疾患(または虚血性心疾患)といいます。

冠動脈疾患は治すことが難しく、なかなか治療法が確立しない時代が続きました。しかし、1969年に、米国で冠動脈バイパス術注2が開発され、その有効性が認められました。日本でも、1970年から冠動脈バイパス術が開始されました。

注1 動脈硬化・・・動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりすることで動脈本来の構造が壊れ、働きが悪くなる状態を指します。

注2 冠動脈バイパス術・・・詰まっている血管とは別のきれいな血管を使い、詰まっている部分を迂回(バイパス)する経路を作り、血液循環を回復させる手術を指します。

1969年から開始した冠動脈バイパス術は、胸を切開する術式であるため侵襲性が高い(患者さんの身体的負担が大きい)ものでした。そのため、高齢者や手術リスクの高いケースでは合併症が起こりやすいという問題がありました。

冠動脈バイパス術の問題点を解決するために、血管内で治療を行うという新たな着想に基づいた研究が行われるようになりました。そして1977年に、ドイツの医師、アンドレアス・グルンツィッヒ先生が、バルーン(風船)を用いたカテーテル治療を始めました。

グルンツィッヒ先生が始めたカテーテル治療は、先端にバルーンを取り付けたカテーテルを冠動脈に挿入し、血管が狭くなった箇所でバルーンを膨らませることで血管を拡張する治療法です。

バルーンを用いたカテーテル治療のよい点は、胸を切開しないため、患者さんの身体的負担が少なくて済むことです。

一方、バルーンカテーテル治療の問題点は、血管を拡張したあとにバルーンを引き抜くため、治療から数か月経過して血管が再び狭くなってしまう「再狭窄」が起こる可能性がある点です。また、バルーンで血管を拡張した際に、血管の一部に亀裂が生じ、ごく短時間のあいだに血流が不良となって、急性冠閉塞(急激に冠動脈の内腔が閉塞する)を引き起こすリスクもあります。

バルーンカテーテル
画像提供:PIXTA

このバルーンカテーテル治療を応用し、さらに再狭窄という問題を解決するために開発された方法が、ステントと呼ばれる筒状の金属を用いたカテーテル治療です。日本では、1994年から冠動脈ステントが保険適応となり、本格的に使用され始めました。

ステントのカテーテル治療
画像提供:PIXTA

ステント治療では、バルーンカテーテルを用いて、血管が狭くなった箇所でバルーンを膨らませることでステントを拡張させます。血管を押し広げて、中の風船だけを取り出すと、血管を支える支柱のように金属の管が血管を支えます。

ステント治療は、バルーンカテーテル治療の課題を改善しました。ステントを用いたカテーテル治療は、バルーンカテーテル治療と比べて、再狭窄の発生率を低下させることが報告されました。また、バルーンカテーテル治療の際には急性冠閉塞を起こす可能性がありますが、ステント治療を併せて行うことで、一度閉塞しても、冠動脈を再び拡張させるという対処ができるようになりました。

ステント治療によって再狭窄を起こす割合は低下したものの、ステントを用いたカテーテル治療においても、再狭窄が20〜35%ほどのケースで起こることがわかりました。そこで、再狭窄を回避するために、ステントに薬液を塗布させた薬物溶出性ステントが開発されました。

日本では2004年から保険適応となり、本格的に使用され始めました。

日比先生

これまで述べてきたように、カテーテル治療は大きく進歩しました。現在では、冠動脈疾患のみならず、足や手の動脈(末梢動脈)が詰まって血液の流れが悪くなる末梢動脈疾患や、心臓の弁がうまく動かなくなる心臓弁膜症など、さまざまな病気の治療にも用いられています。

記事2では、重症の大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)について詳しくご説明します。

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