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インタビュー

大動脈弁狭窄症と診断されたら——定期的な検査、適切なタイミングで治療を行うことの重要性

大動脈弁狭窄症と診断されたら——定期的な検査、適切なタイミングで治療を行うことの重要性
白井 伸一 先生

小倉記念病院 循環器内科 部長

白井 伸一 先生

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心臓弁膜症のひとつである大動脈弁狭窄症。65歳以上の2〜4%が罹患しているといわれ、その推定患者数は100万人にのぼります。重症かつ症状がある場合は大動脈弁を置き換える手術を行い、軽症・中等症の場合は経過観察となり、定期的に検査を行う必要があります。治療しなければ病気は徐々に進行していくため、症状の発現に注意し、適切なタイミングで手術を検討することが重要です。小倉記念病院 循環器内科 部長の白井(しらい) 伸一(しんいち)先生に、経過観察となった場合の留意点や検査内容について伺いました。

大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁という心臓にある弁が硬化して開きが悪くなる病気です。大動脈弁は左心室と大動脈の間にあり、逆流防止弁として機能していますが、加齢などにより大動脈弁が石灰化して硬くなると、弁がうまく開閉しなくなります。すると十分な血液を送り出そうとして左心室には負荷がかかり、徐々に左心室の筋肉が肥大、さらには左心室の内腔が狭くなるのです。

大動脈弁狭窄症

大動脈弁が狭窄していても無症状のことが多いのですが、徐々に心臓の余力がなくなっていき、息切れや動悸などの症状が現れます。また、病状の進行とともに、疲れやすさ、めまいや失神などの症状が出ることがあります。このような症状が出てからの進行は速く、治療せずに放置した場合には突然死のリスクを伴うため、適切なタイミングで治療を行うことが重要です。なお、大動脈弁狭窄症は弁の狭窄という器質的な要素の大きい病気であり、現状、薬などの内科的な治療で確立された方法はありません。

軽症・中等症であれば、すぐに手術という選択にはなりません。ただし例外もあります。たとえば動脈硬化による狭心症があり、冠動脈バイパス術が必要になった場合には、同時に大動脈弁置換術(大動脈弁を人工の弁に置き換える手術)を行うことがあります。

いずれにせよ大動脈弁狭窄症は治療をしなければ病状は進行していくため、経過観察で定期的な検査を行うことがとても重要です。

正常な大動脈弁の弁口面積(血液が出ていく部分の広さ)は3~4cm2ですが、大動脈弁狭窄症では弁口面積が狭くなります。軽症で1.5cm2以上、中等症で1〜1.5cm2、重症になると1cm2以下と言われています。どのくらいの速さで弁の狭窄が進行するかというと、当然のことながら個人差はありますが、慢性腎臓病でない方の場合1年に0.1cm2ずつ、透析を行う慢性腎臓病の患者さんでは0.23cm2ずつ減るとされています。これにより、病気の進み具合はおおよそ予測できます。

すぐに手術という選択にはならなかったとしても、経過観察中に病気が進行しないように注意することが大切です。たとえば動脈硬化高血圧糖尿病高脂血症にならないよう生活に気をつけ、すでにそれらの病気がある方は治療を行う必要があります。また、喫煙は動脈硬化を悪化させるため、禁煙していただくようお話しています。もし経過観察となったときには、決して病気を甘く見ることなく、病院を受診してしっかりと検査を受けていただきたいです。また、心臓だけでなくほかの病気がないかを検診などを通じて定期的に調べることも重要です。

経過観察

ガイドラインでは、軽症で3〜5年ごと、中等症で1〜2年ごと、重症で半年〜1年ごとの経過観察が推奨されています。しかしながら、患者さんの年齢や併存している病気などを考慮し、それよりも短い間隔で経過観察を行うこともあります。なぜなら、症状が現れた場合になるべく早く治療を検討する必要があるからです。

当院では、軽症・中等症の方であれば1年に1回の経過観察を実施しています。また、中等症であっても弁口面積が1cm2を下回る、あるいは平均圧較差が35以上、最高血流速度が3.5以上となった場合には、経過観察の頻度を調整することがあります。

経過観察中の検査では、まず問診で自覚症状の有無を確認し、心電図、胸部レントゲン、心エコー図、さらには必要に応じて運動負荷試験を行うことがあります。運動負荷試験とは、トレッドミル(屋内でジョギングなどを行う器具)やエルゴメータ(固定された自転車に抵抗をつけ、負荷をかけて運動を行う器具)などを用いて行う、運動時の心機能を評価するための検査です。

大動脈弁狭窄症は高齢の患者さんも多いです。足腰が弱っている方など、運動負荷試験にけがや骨折のリスクが伴う場合には、器具を使わず、6分間歩行による運動負荷試験を行うことがあります。また、ご家族に意見を伺うこともあります。たとえば、以前に比べて息切れしている、動きが緩慢になったという変化がある場合には、ご本人が気づいていなくても病気が進行している・症状が出始めている可能性があるからです。

私たちは普段、自分の体の調子に合わせて生活をしています。たとえば歩くのがしんどくなったら歩く速度を落としたり、出かける頻度を落としたりするでしょう。ですから患者さんご自身が症状を自覚するのは意外に難しいのです。もし今までと同じことをして息切れするようになった、靴下の跡が長時間残るようになったなどの変化を感じたら症状が進行した可能性があるので、早めに病院を受診してください。

また、ご家族が患者さんの変化に気づいてあげることも重要です。今までより動きが緩慢になった、少し動いただけで息切れする、一緒に歩いているときに遅れるといった変化があれば、経過観察の際にご相談いただければと思います。

基本的には、心エコー図検査で重症の大動脈弁狭窄症と診断がつき、かつ自覚症状が出ている場合には手術を行うタイミングと考えてよいでしょう。なお、無症状であっても、特に重症な場合には手術の対象になることがあります。

手術の対象になったら、次に手術方法を検討します。基本的には弁置換術(大動脈弁を人工弁に置き換える)を行うのですが、その方法には、胸部正中切開(胸の真ん中を大きく切開する)を必要とする“外科的手術”と、カテーテルという医療用の細い管を鼠径部などから挿入して人工弁を留置する“TAVI”(経カテーテル大動脈弁留置術:タビ)の2つがあります。外科的手術は身体的な負担が大きく、患者さんの年齢や体力などにより実施が難しい場合があり、そのようなときにはより身体的な負担の少ないTAVIを選択することがあります。

TAVIを行う白井先生(写真左)
TAVIを行う白井先生(写真左)

手術方法を決める際には、いくつかの検査を行い、重症度のみならず患者さんの全身状態や既往症、合併疾患などを調べたうえで、それらの情報を元に総合的に判断することが重要です。また、患者さんの価値観や希望も加味して、最終的には多職種で構成されるハートチームで議論し、方針を決定しています。

2020年3月に発表された弁膜症治療のガイドラインでは、手術方法を決定するための大まかな目安として、80歳以上の方にはTAVI、75歳未満の方には外科的手術と示されています。しかしながら、年齢は1つの目安でしかありません。もちろん患者さんのご希望はお伺いしますが、私たちは手術の直後だけでなく、将来的な可能性を含めてトータルで適切な手術を検討していますので、症例によっては年齢によらず外科的手術、あるいはTAVIが適している場合があることをご理解ください。

患者さんが適切なタイミングで手術を受けられるように、問診や心エコー図検査などから得られる情報を見逃さないよう細心の注意を払っています。実際、ご本人では症状に気づいていなかったり、心エコー図検査も撮影の方法によって重症度を正確に測りにくかったりすることがあります。そのため、患者さんの訴えや検査結果を総合し、多面的に病気を捉えるよう努めています。

また、手術適応になったとき、最初は「痛そうだから」「怖いから」という理由で手術を受けたくないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、当院では、手術のメリット・デメリットに加えて、病気を放置したとき将来的にどのようなことが起こり得るのかを詳しくご説明しています。そのような情報を理解したうえで、適切なタイミングで適切な手術を行うことが重要だからです。

大動脈弁狭窄症で経過観察となったときには、適切なタイミングで治療を受けられるよう病院を受診し、検査を受けていただければと思います。

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