心不全になっているかどうかを診断するには、さまざまな検査が行われます。検査の流れとその診断の実際について、鳥取大学医学部附属病院第一内科診療科群の主任診療科長である山本一博教授にお話をうかがいました。
心不全の検査では、基本的に以下の検査を行います。
診察では聴診器で胸の音を聴きます。高齢者に多くみられる大動脈弁狭窄(だいどうみゃくべんきょうさく・加齢とともに大動脈弁が固くなって開かなくなる)などの弁膜症があると、聴診時に雑音があるので判別できます。
心電図では心筋梗塞や不整脈がないかなどを調べることができます。また、レントゲン(胸部X線)検査では心拡大や肺うっ血の様子を知ることができます。
血液検査では特にBNPをチェックします。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心臓が分泌する循環調節ホルモンです。心不全の重症化にともなって上昇し、治療によって低下するため、慢性心不全の診断、重症度の判定、治療効果の評価に有効な指標です。
心不全の症状(関連記事「心不全の症状」参照)の多くは非特異的な症状なので、心不全以外の病気にも共通する部分があります。たとえばレントゲン(胸部X線)検査では心臓や肺の状態を細かくみることで、肺にも病気が隠れていないかどうかをある程度スクリーニングすることができます。
また、血液検査においても同じことがいえます。肝臓や腎臓が悪くなってくるとむくみが出たり、身体を動かしたときにだるさを感じることがありますが、血液検査ではBNPだけでなく肝臓や腎臓の機能をチェックすることもできます。
私たちは循環器内科という立場で病気を診ていますが、単に心臓の病気があるかないかだけではなく、肺の病気、あるいは肝臓の問題、腎機能の低下やネフローゼがないかなど、典型的なものについては最低限チェックができるような検査を行っています。
レントゲン(胸部X線)検査で心臓が明らかに拡張している様子が分かったとしても、その人の体質・体格によって(たとえば単に肥満というだけで)心臓が悪いわけではないのに大きくなっている場合があります。その逆に、心臓が悪くなっているのに心胸郭比(しんきょうかくひ・胸郭全体に占める心臓の割合)があまり大きくない人もいます。したがって、レントゲン像の所見だけで診断をするというわけではありません。
心電図に関してもやはり同じことがいえます。心電図の所見で異常が認められても、心臓に明確な病気がないケースは少なくありません。したがって、冒頭にお示ししたいくつかの検査の結果で明確に心臓がおかしいと判断できなくても、呼吸器や内分泌、消化器などその他の異常が認められないのであれば、やはり心臓に何かあるのではないかと考え、心エコー(超音波検査)などを行い注意深く調べていく必要があります。
極端な例ではありますが、心臓に腫瘍(がん)の転移が見つかった例もあります。このような場合、レントゲンや心電図ではっきりとした異常が分かるわけではありません。心臓に症状をきたす病態には、さまざまなケースが想定されます。
狭心症と呼ばれる虚血性心疾患では、胸の痛みが代表的な症状とされていますが、実は胸の痛みを自覚していない方も多いのです。このような方は動くとしんどい、胸が苦しいという心不全に似た症状を訴えますが、安静時にはレントゲンや心電図でも問題がなく、心エコーでも異常が見つかりません。その場合には運動負荷試験で心電図をとるなど、さらに詳しい検査が必要です。心不全の症状の中には、狭心症の症状が紛れ込んでいる場合がある、ということを念頭に置いた検査をしていくべきであると考えます。
鳥取大学 医学部病態情報内科 教授、鳥取大学医学部附属病院 第一内科診療科群(循環器内科、内分泌・代謝内科) 主任診療科長
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