近年、高齢者を中心に、心不全の患者さんが増加しており、55歳で健康である人の3人に1人が、その生涯において心不全を発症するといわれています。心不全の発症原因はさまざまですが、主にどのような原因があるのでしょうか。今回は、心不全の発症原因や予防法について、相生山病院 院長の佐藤貴久先生にお話を伺います。
心不全の原因はさまざまですが、急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では、心不全をきたす原因となる病気として、以下のようなものが挙げられています。
なかでも、心不全の原因疾患として代表的なものが、虚血性心疾患*、弁膜症**、高血圧の3つです。日本で行われたある研究では、心不全で入院した方の32.0%が虚血性心疾患、27.7%が弁膜症、24.6%が高血圧であったと報告されています。
*虚血性心疾患:心筋(心臓の筋肉)に血液を供給している冠動脈が狭くなったり、完全に詰まったりする病気の総称。狭心症や心筋梗塞など。
**弁膜症:心臓にある弁がうまく閉じなくなったり、開かなくなったりする病気の総称。
心不全のもっとも大きな原因である虚血性心疾患は、動脈硬化*が原因です。動脈硬化は、年齢が上がるにつれて誰でも進行していきます。喫煙、運動不足、塩分の過剰摂取などは、動脈硬化の進行を促すため、そのような習慣がある方は注意が必要です。動脈硬化の危険因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病をお持ちの方は、特に注意が必要です。
*動脈硬化:血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が硬くなり、血液の流れが悪くなった状態。
近年、心不全は老人病といわれており、心不全は、高齢になればなるほどかかりやすくなります。そのため、高齢化が進む日本では、心不全の患者さんが、年々増加傾向にあります。その数は、2020年には120万人、2030年には130万人に達すると予想されています。
貧血の方や腎機能が低下した方は、心不全に陥る可能性が高く、陥った場合には重症化しやすく、寿命にも影響するため、特に注意が必要です。
上図をご覧いただくと分かるように、心不全はA、B、C、Dの4つのステージに分類されます。このうち、ステージAは心不全の危険因子はあるものの、心機能は保たれており、心臓の病気や心不全の症状はない状態を指します。そのため、ステージAの段階で心不全を発症させない対策を行うことが重要です。たとえば、心不全を発症しやすくする動脈硬化を進行させるような病気を予防したり、生活習慣の改善に努めたりすることが大切です。
医療法人清水会 理事長、相生山病院 院長
医療法人清水会 理事長、相生山病院 院長
日本内科学会 認定内科医日本循環器学会 循環器専門医日本医師会 認定産業医
1996年藤田保健衛生大学医学部卒業後、名古屋第一赤十字病院循環器内科、藤田保健衛生大学医学部循環器内科等を経て、2007年に相生山病院副院長に就任。2013年には院長、2016年に理事長に就任する。
「日本一優しい病院」をモットーに、ホスピタリティー向上に努め「まごころの医療」を実践している。高齢患者の健康寿命を延ばすため、運動療法の普及や認知症予防にも積極的に取り組んでいるほか、介護施設も多数運営している。地域で先駆けて市の委託事業「域包括支援センター」も運営し、地域の医療・介護サービスの充実を目指している。趣味はトライアスロン、ゴルフ。
佐藤 貴久 先生の所属医療機関
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