「食欲が湧かない」「食べ物を見ても食べたいと思えない」など、食べることへの意欲が下がることを“食欲不振”といいます。
食欲不振は体からのサインです。食欲不振にはいくつかのタイプがあり、それぞれ原因が異なります。
食欲が湧かない原因に、うつ病など“メンタルの不調”が大きく関係している場合があります。
実際に65歳以上の高齢者では、食欲不振によって病院を受診する方のうち、30%近くがうつ病と診断されたというデータもあります。
一方、15~39歳の若年者層では意図的な食事の拒否(摂食障害などが原因)が約20%でもっとも多く、次いでうつ病や身体的な病気の治療を目的とした食事制限が続きます。これらを総合的に考えると、食欲不振ではうつ病が原因となることも少なくありません。
食欲不振は、食道や胃、腸、肝臓、膵臓などのがんを含めた消化器系のトラブルが原因となっていることもあります。
そのほか、慢性腎不全やうっ血性心不全などの腎臓、心臓の病気や呼吸器の病気など、さまざまな病気によって食欲不振になることがあります。
食欲不振は、年齢(年代)によって考えられる原因が異なります。
若い年代では、そもそもがんなどの身体的な病気の可能性が比較的低いため、相対的に精神的な病気による割合が高くなります。うつ病や神経性無食欲症(神経性食欲不振症)がその例です。
ただし、年代を問わずかかることのある病気(甲状腺機能低下症、胃潰瘍など)には注意が必要です。
年齢とともに、がんを含め身体的な病気にかかる可能性が高くなってきます。
そのため、40~60歳代の方に食欲不振がある場合には、うつ病などの精神的な病気と、がんやそのほかの身体的な病気の双方の可能性を考える必要があります。
高齢者の場合、特に注意することとして、がんと認知症があります。
高齢者の食欲不振の原因に認知症が挙げられる理由は、空腹=食欲という連鎖がみられなくなる場合があるためです。認知症では食事を摂りたがらない、食べたがらないといった食事に対する意欲の低下がみられることがあり、食事を拒否するような場合もあります。
河北総合病院 副院長・消化器内科部長
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