インタビュー

うつ病の症状―気分の落ち込みのほか、体の痛みなどの身体症状があることも

うつ病の症状―気分の落ち込みのほか、体の痛みなどの身体症状があることも
功刀 浩 先生

帝京大学医学部精神神経科学講座 帝京大学医学部附属病院 メンタルヘルス科 教授

功刀 浩 先生

この記事の最終更新は2018年01月16日です。

うつ病は、誰でもかかる可能性のある心の病気です。うつ病の症状というと「気分の落ち込み」が一般的ですが、そうした精神的な症状のほかに、身体的な症状が出ることもあります。うつ病の症状について、国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第三部 部長・気分障害先端治療センター センター長の功刀 浩先生にお話をうかがいました。

落ち込む日本人

うつ病の症状は、気持ちとして生じる心の症状と、体に現れる症状の2通りがあります。症状の出方は個人により異なるため、典型的なうつ病の症状というものを定義することは難しいです。以下は心の症状、体の症状の一例です。ここに記されていない、一見うつ病の症状ではないようなものも、うつ病の症状である場合があります。

  • 一日中気分が落ち込む
  • 趣味など今まで楽しかったことが楽しめない、何にも興味がわかない
  • この世から消えたい、死にたいと思う
  • 自分は無価値な人間だと思う
  • 妄想や幻覚(うつ病で幻覚が出現することはまれ) 
  • 物事を決断できない など
  • 食欲がない、体重が減る
  • 食欲が増す
  • 寝つきが悪い、夜中や朝方に目が覚める
  • 疲れやすい、気力がわかない
  • 性欲低下
  • 仕事や家事などに集中できない
  • 体を動かすことがおっくうになる
  • 話し方や動作が以前よりも遅い
  • イライラ、そわそわして落ち着かない
  • 心臓がどきどきする
  • 手や足が震える
  • 呼吸が苦しくなる、過呼吸
  • 汗が出る
  • 胃痛
  • 頭痛 など

うつ病には、典型的な症状の経過がありません。そのため、典型的な初期症状も定義しにくいです。ですが、初期には寝つけない、何度も目が覚めるといった不眠、不安による症状(胃痛や腹痛など)が生じることが多く、それにより「うつ病ではないか」と気づきやすいです。

前章の症状一覧も含めて、不眠や不安などの症状が2週間以上続くとうつ病の可能性があります。

うつ病の初期症状についてはこちら

うつ病が進行して重症となると、下記の症状が現れます。

今までは泣くようなことがなかった場面で泣いてしまうことが増えます。女性に多い症状です。

昏迷状態(こんめいじょうたい)といって、呼びかけても反応がない、意識はあるが動けない状態が長く続きます。これは無意識に外の世界の情報を遮断し、外の世界に注意が向いていないために起こります。

実際にはそうでないにもかかわらず、そう思い込んでしまうというような、妄想の症状が生じることがあります。以下はうつ病の患者さんに多い妄想です。

  • 自分は罰せられるべきだ
  • 生きている価値がない
  • (病気でないにもかかわらず)重い病にかかってしまった
  • 自分は貧しい、借金がある
  • 周囲の人に嫌われている、嫌がらせを受けている

うつ病が進行すると、消えたい・死にたいと思うことがあります。この気持ちが強くなると自分を傷つける(自傷行為)、自殺未遂や自殺に至る危険性が高まります。消えたい・死にたい気持ちが強くなる場合には、病院を受診し早急な治療が必要です。

うつ病 ✔リスト

A

  1. 毎日、一日中、気分が沈んでいる。
  2. なにに対しても楽しめなくて、興味がわかない

B

  1. 食欲がない。もしくは体重が減った。
  2. 寝つけない。夜中や朝方に目が覚めたりする。
  3. 話し方や動作が遅くなった。もしくは、イライラしたり落ち着きがない。
  4. 気力がなく、疲れやすい。
  5. 仕事や家事などに集中できない。
  6. 「自分には価値がない」とか「◯◯に対して申し訳ない」と感じる。
  7. この世から消えてしまいたいとか、死にたいと考える。

①Aのどちらか、あるいは両方が当てはまり、AとBを合わせて5項目以上当てはまる。

②該当した症状が2週間以上続き、その症状により強い苦痛を感じていたり、社会的な機能(仕事や家事など)が障害されていたりする。

この場合、大うつ病(典型的なうつ病)と判断されます。

出典:功刀 浩『こころに効く精神栄養学』p15

うつ病の症状に男女差はそれほどありません。ですが、女性に多い症状があります。

うつ病の女性に多い症状

  • すぐに泣いてしまう(涙もろい)
  • 自傷行為・自殺未遂(リストカット、薬の多量服用(オーバードーズ・OD)など)                 

更年期の日本人女性

更年期障害によるうつ症状は、一般的なうつ病と同様です。しかしながら、更年期障害で生じるうつ症状は更年期障害の治療をすることで回復することもあります。

すでに更年期障害がある、または更年期障害の生じる年代でうつ症状がみられた場合は、まず婦人科を受診してみるといいでしょう。ただし、重度のうつ状態である場合には、精神科への受診が必要となることが少なくありません。

男性も、女性ほど顕著ではないですが加齢やストレスなどで男性ホルモンが減るため、更年期障害があるといわれます。男性の更年期障害でうつ症状が出ている場合に、男性ホルモンを投与すると抑うつ症状が改善することもあります。

しかし、男性ホルモンの投与でうつ状態から回復する例が必ずしも多いわけではなく、中高年の男性うつ症状は、泌尿器科でなく精神科で治療することが一般的です。また、泌尿器科で男性ホルモン治療を行うと、男性ホルモンを自分で産生する能力が低下するため、長期的なホルモン治療が必要となるというデメリットもあります。

うつ病の治療は長期にわたります。また、治療の中心も丁寧な問診に基づいた薬物治療や認知行動療法などになることから、一緒に治療について考えてくれ、自分が話しやすいと思う医師を選ぶことが大切です。自身の話に耳をかたむけてくれる医師がよいでしょう。

受診する診療科は、精神科や心療内科が一般的です。

うつ病の認知度が高まったものの、やはり精神科や心療内科の受診はハードルが高いと感じる方もおられることでしょう。その場合は、かかりつけの内科医や、職場の産業医、学校の養護教諭(保健の先生)や保健センター、市区町村の保健所などでも相談ができます。

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    功刀 浩 先生

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    東京慈恵会医科大学附属第三病院 院長

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    内科、血液内科、リウマチ科、外科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、消化器内科、肝臓内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、肝胆膵外科、肛門外科、内分泌外科、頭頸部外科、精神神経科、総合診療科、病理診断科

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    慶應義塾大学医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授

    きしもと たいしろう

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