インタビュー

うつ病の症状

うつ病の症状
平安 良雄 先生

医療法人へいあん 平安病院 法人統括院長・臨床研修センター長、横浜市立大学 名誉教授

平安 良雄 先生

この記事の最終更新は2016年04月22日です。

近年増加しているうつ病。厚生労働省によると日本では100人に6~7人という割合でうつ病を生涯に一度は経験するという調査結果が出ており、現在では誰でも罹患する可能性がある「心の風邪」と例えられ、昔に比べより身近な病気になりました。ではどのような症状があれば「うつ病」というのでしょうか。横浜市立大学病院 精神科 診療部長・主任教授 平安良雄先生にお話をお伺いしました。

うつ病の症状とはどのような状態を指すのでしょうか。以下によくみられる症状を記載します。

自分で感じる症状

憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れない、自信が無い、人に迷惑をかけている

周囲から見てわかる症状

表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える

体に出る症状

食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く

参照:厚生労働省 「うつ病とは」

疲れやすい・頭痛・肩こりなど一般的な症状が多いので、発見が遅れてしまうことがあります。しかし最近は大企業などですと、産業医がいたり、メンタルヘルスのチェックをするようになったり、啓発も行ったりしているので、比較的早めの対応ができるようになっています。一方で、実際には約8割位の方は中小企業で働いているのでそのような制度が十分に普及していませんので、個人でいかに気づけるかということが問題となってきます。

また、うつ状態であることを周囲に見せないようにしようとしている方も沢山います。「普段は頑張っているが、一人になった時に落ち込んでしまう。」そのような状態を周囲が見抜くのは難しいですが体は正直に反応するので、痩せたり・眠れなくなったり・ぼんやりしたりという症状が続き、ある限界を超えた時点でやっとうつ病だったとわかることも多いです。 

本来「うつ病」の症状は上記でお伝えしましたように、わかりやすい症状です。また、人は誰でも元気がなくなったり、生きていく中で色々な体験をして辛くなったり悲しくなったり落ち落ち込んだりします。このような心の動き(うつ状態)は日々発生することです。ですからこの心の不安定な動きからは逃れられることができないのが当たり前なのです。

しかしその症状はそもそも病気なのか。どこからが病気で、どこからが通常の心の動きなのか、線引きをするのが大変難しいのです。結果としては、どこかで線引きしなければならないのですが、病気なのか病気ではないのか診断をつけるのが困難なのが現状です。

例えば、その人が元々持っている能力や元気さが明らかに落ちてしまうと、周囲もその異変に気付きますし、ご本人もおかしいと思われますので、そこは比較的明快に診断ができます。しかし実際には、「うつ病」「うつ状態」は連続性があるので、軽症の内に見つけることはとても難しい病気です。

前述いたしましたように「病気なのかどうか」と問われた場合、様々な観点から「何かしらの病気である」という定義付けはできます。しかし、結局そこの線引きが患者さんにとっても難しいため、非常に多くの方が受診までに至っていなかったり、逆に通常の心の動きの反応の範疇であるのに、病気として治療されてしまったりということも起きています。

うつ病」に対しては、前述のように線引きが曖昧だからこそより一層きっちりと診断しなければいけないという意見もありますし、症状が重くなっても病院に行っていない方に対して早期に受診を促すべきであるという意見もあります。精神科の医療の裾野が比較的広がってきた中、医師の間では受診や診断についての見解に混乱が起きてしまっているのが現状です。ですから、実際の現場ではどのような状況になっているのか、様々な方が色々な角度で整理している最中です。

ただし、現在のところ、うつ病の定義・診断基準(※参照:厚生労働省 「うつ病とは」)に変更はありません。

冒頭でも触れましたが、実際にうつ病の患者さんが増えているのは「誰も彼もうつ病と診断されているからなのではないか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。また、「うつ病かもしれない」と思っていても受診していない方が圧倒的に多いのが現状です。さらに「うつ病」に関する普及・啓発は十分には進んでいないですし、偏見も未だに解消されていません。

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