うつ病は、再発しやすい病気です。実際におよそ6割の患者さんが再発するといわれています。再発予防のためには、ストレスを溜めないほかにも、うつ病を確実に治すことが大切です。うつ病と再発について、東邦大学医療センター大森病院 心療内科 教授の端詰 勝敬先生にうかがいました。
うつ病は再発の可能性が高い病気です。患者さんの約6割が再発するといわれています。
うつ病の多くは年単位で再発し、3〜4年で再発することもあれば、30年以上経って再発することもあります。再発までの期間は個人による部分が大きいです。
一方、数か月で再発した場合は、それは再発でなく再燃の可能性が高いでしょう。再燃とは、実際は治っていないのに、治ったと思い込むなどして治療を中止してしまい、症状が悪化してしまうことを指します。
1度だけでなく、何度も繰り返してうつ病が再発する方もいます。
何度もうつ病を繰り返すタイプは、反復性短期うつ病(反復性うつ病)と呼ばれます。反復性短期うつ病とは、うつ病の症状が月経周期に関係なく少なくとも月に1回、12か月以上連続して生じるうつ病です。
また、双極性障害である可能性も考えられます。特に、躁(そう)の症状が出ていない場合に病院を受診すると、うつ病との鑑別が難しい場合があります。双極性障害の場合はうつ病と治療方法が変わってくることから、何度もうつ病を繰り返していたり、抗うつ薬を飲んで気分が高揚したりする場合には医師に相談してください。
うつ病の再発のきっかけは、1度目と同様に人によりさまざまです。仕事の場合もあれば家庭環境の場合もありますし、1度目ときっかけが同じこともあれば違うことも多いです。
先に述べたように、再発までの期間は数年〜十数年が一般的です。これだけ期間が長ければ、1度目のうつ病を発症したときと、今とでは患者さんが置かれている環境もずいぶんと変わってくるでしょう。
うつ病は多くの場合、心当たりのある発症のきっかけがありますが、一部のケースではこれといった発症のきっかけが見当たらないまま発症に至ります。この場合は、器質的にうつ症状が出やすい傾向があると考えられます。
器質的な傾向とは、うつ病の発症に関わるドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の減少が体質として起きやすい、といったことなどを指します。
うつ病の再発防止には、ストレスを溜めない、無理をしないことが大切です。自分がストレスを発散できる方法や無理をしないための交渉術などを身につけておくとよいでしょう。
一方で、うつ病は再発しやすいことから、これからお伝えする「うつ病が再発したときにどうするか」ということも考えておくことが大切です。そうすればできるだけ早い段階でうつ病の再発に気づき早期に病院を受診することができます。
1度以上再発をしたことのある患者さんの場合は、再発防止として、うつ病の症状が改善したあとも薬を飲み続けることがあります。確かに症状がよくなったら薬をやめたくなる気持ちはよくわかります。しかしながら、再発防止として処方されている薬を正しく服用せずに、症状が悪化してしまう方もいます。
ですから、再発を防ぐためにも、通院を続けて医師の指示通りに薬を飲んでください。
うつ病の再発の兆候は、うつ病の初期症状と同じです。不眠や食欲低下、今まで楽しめていたことが楽しめない、などが挙げられます。
再発時の症状は、1度目と異なることもあります。1度目は身体症状が強かったが、再発時は精神症状が強く現れるなどです。
自分の体調を把握し再発の兆候を早く知るために私がおすすめしているのは、自分の不調を測るバロメーターを持つことです。心の調子が悪くなると、最初に睡眠に現れる方や食事に現れる方、趣味が楽しめなくなる方など、人によって不調を測るバロメーターは異なります。
自分が体調を崩した際にまずどこに不調が現れやすいかを知っておくことで、早くうつ病の再発の兆候を知ることができます。
もし、うつ病の再発の兆候に気づいたら、迷わずにすぐに医師に相談してください。すぐに治療を開始することで、生活への影響を小さくして対処することが可能です。
うつ病の再発は、家族など周囲の方が先に気づくことも多いです。ですから周囲の方も、もし様子が変だな、と感じたら、本人の話を聞き、再発が疑われる場合は病院の受診をすすめてもらえればと思います。
東邦大学医療センター大森病院 心療内科 教授
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