インタビュー

インターバル速歩とは? 体力向上・生活習慣病の予防につながるウォーキング法

インターバル速歩とは? 体力向上・生活習慣病の予防につながるウォーキング法
能勢 博 先生

信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

この記事の最終更新は2017年09月27日です。

ウォーキングは、昔から健康増進に有効であるといわれてきました。たとえば、「1日1万歩」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

インターバル速歩は、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に行うことで、体力の向上や生活習慣病の改善につながる新たなトレーニング法です。しかし、効果はこれだけにとどまらず、さまざまな効果が認められています。では、どのような効果が立証されているのでしょうか。

今回はインターバル速歩の生みの親である信州大学 学術研究院医学系 特任教授 能勢 博先生に、インターバル速歩の効果についてお話しいただきました。

インターバル速歩は、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に行うことで、筋力や持久力を向上させることができる新たなトレーニング法です。

後ほど効果について詳しくお話ししますが、このインターバル速歩は体力向上に加え、骨密度の増加や生活習慣病リスクの改善などさまざまな効果があることがわかっています。

また、特別な運動器具を必要とせず、全体を通してトータル15分から取り組むことができる気軽さも大きなメリットであるでしょう。

歩くことさえできれば、老若男女どなたでも取り組むことができる、画期的な運動処方になっています。

歩いている男女

インターバル速歩は、以下のような流れで実施します。

インターバル速歩

  1. インターバル速歩に取り組む前には、ウォーミングアップとしてストレッチを十分行うことを推奨しています。特に下半身のストレッチに重点的に取り組むとよいでしょう。
  2. 呼吸を整えてゆっくりと歩く、「ゆっくり歩き」を3分間続けます。
  3. 次に、息が弾むように早歩きをする「さっさか歩き」を3分間続けます。
  4. 次に、再度「ゆっくり歩き」を3分間続けたら、「さっさか歩き」を3分間というように、交互に繰り返します。
  5. 最後に、クーリングダウンを十分に行うことを推奨しています。

インターバル速歩は、週4日を一つの目安として推奨していますが、たとえば平日忙しく週末しか時間がとれないという方もいるかもしれません。その場合には、週末にまとめて実施しても効果はほぼ変わりません。トータルの早歩きの時間が週60分であればよいでしょう。

さっさか歩きとゆっくり歩きは、どちらから開始しても効果に違いはありません。そのため、ゆっくり歩きから始めたほうが体に負担が少なく無難かもしれません。

インターバル速歩には、その効果を高めるためにトレーニングデータを測定・管理する装置とシステムが設けられています。

熟大メイトは、歩行トレーニング時の運動エネルギー測定機能、最大持久力測定機能、筋力測定機能を搭載した装置です。腰に装着し、運動エネルギーを測定しながら使用します。熟大メイトは、通常使用で約60日分のデータを記録することが可能です。蓄積したデータは、インターネットを経由しe-ヘルスプロモーションシステムへと転送します。

熟大メイト
熟大メイト 能勢 博先生ご提供

熟大メイトに記録されたデータは、e-ヘルスプロモーションシステムで管理されます。このe-ヘルスプロモーションシステムは、熟大メイトのデータはもちろんのこと、歩行者の血圧、体重、体脂肪、血液検査値、食事、メンタル質問結果など、歩行者に関するあらゆるデータを管理します。

さらに、これらのデータの分析結果から、担当の健康推進コーディネーターや保健師からの簡易なアドバイスを表示します。このe-ヘルスプロモーションシステムを使用することで全国どこにいてもインターネットによる遠隔指導を受けることが可能になります。

熟大メイトとe-ヘルスプロモーションシステムの使用をご希望の方は、以下までお問い合わせください。

NPO法人熟年体育大学リサーチセンター

私が副理事を務めるNPO法人熟年体育大学リサーチセンターでは、有効なトレーニング法を開発するため、さまざまなウォーキング法を検証しました。まず始めに検証を行ったのが「1日1万歩」です。検証の結果、1日1万歩は定着率が50%以下であることに加え、たとえ毎日実施したとしても、期待するほど体力の向上や生活習慣病の改善につながりませんでした。

このような検証を行うなかで、個人の最大持久力の70%以上の運動負荷をかける運動を継続すると、5か月で10〜20%体力が向上することがわかったのです。

では、自身の最大体力の70%以上の運動負荷をかけるには、どうしたらよいのでしょうか。本来であれば、ジムに行きマシンを使ってトレーニングを行い、トレーナーに指導してもらうことが有効でしょう。しかし、それでは費用もかかりますし、実施場所や時間を選ばなければいけません。そこで誕生したトレーニング法がインターバル速歩です。

お話しした熟大メイトによって最大持久力を測定することができますし、インターバル速歩によって最大持久力の70%以上の負荷をかける運動が可能です。さらに、先ほどご紹介したe-ヘルスプロモーションシステムを使用すれば、専門のトレーナーから遠隔で個別運動指導を受けることができます。

このように、インターバル速歩を実施すれば、ジムに通う場合の5分の1以下の費用で同じ効果が期待できることが明らかになりました。さらに、わざわざジムに行かなくとも、自分の好きな場所で、好きな時間にトレーニングに取り組むことができるのです。

インターバル速歩は、既にいくつかの科学論文により効果が立証されています。客観的な分子生物学的エビデンスとともに、国内外で効果が認められ始めているトレーニング法なのです。

たとえば、ある研究では、中高年者(平均年齢65歳)を対象に、5か月間のインターバル速歩と「1日1万歩」を目標とした従来の歩行トレーニングの効果を比較しました。

その結果、インターバル速歩を行ったグループでは、膝伸展・屈曲筋力がそれぞれ13%、17%増加し、最高酸素摂取量も10%増加しました。一方、1日1万歩では、これらの効果は得られませんでした。

ほかにも、インターバル速歩を5か月継続することで、初期持久力が下1/3の中高年者については持久力が平均で20%増加することがわかっています。さらに、以下のような効果が認められています。

インターバル速歩によって、生活習慣病が改善されることがわかっています。たとえば、5か月継続することで、代表的な生活習慣病である高血圧症糖尿病の症状を持つ被験者の30%で、それらの症状が消えることがわかっています。

また、肥満の改善も認められており、インターバル速歩を継続することで、5か月で平均1.5キロほど痩せることが明らかになっています。

肥満男性

変形性膝関節症と呼ばれる膝の軟骨面がすりきれる疾患があります。この疾患に罹患した患者さんもインターバル速歩を実施することにより、症状の50%が改善するといわれています。実際に、インターバル速歩によって、膝の痛みによって正座ができなかったような方ができるようになったケースもあります。

インターバル速歩によって、うつ症状が改善できることも明らかになっています。さらに、近年では、軽度認知症の症状が改善することも明らかになってきました。

なぜインターバル速歩によって軽度認知症が改善されるかというと、持久力をつけることで脳の血流量が増加するからではないか、と考えられています。脳血流量が増え、脳細胞が多くの酸素を供給されることで認知機能が改善するというわけです。

牛乳

また、運動の効果だけではなく、合わせて摂取すると有効な食品のデータもそろってきています。特に効果の高い食品として注目されているものは乳製品です。インターバル速歩の実施と乳製品の摂取を合わせて行うことで、乳たんぱくが筋肉を太くし、体力向上につながることが明らかになっています。

高齢化社会におけるインターバル速歩の役割と今後の可能性については記事2『高齢化社会におけるインターバル速歩の役割と今後の可能性』をご覧ください。

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