インタビュー

高齢化社会におけるインターバル速歩の役割と今後の可能性

高齢化社会におけるインターバル速歩の役割と今後の可能性
能勢 博 先生

信州大学 学術研究院医学系 特任教授

能勢 博 先生

この記事の最終更新は2017年09月28日です。

インターバル速歩は、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に行うことで、体力の向上や生活習慣病の改善につながる新たなトレーニング法です。近年では、軽度認知症の改善にも有効であることがわかってきました。

では、このインターバル速歩は、進行する高齢化社会においてどのような役割を果たすといわれているのでしょうか。

今回はインターバル速歩の生みの親である信州大学 学術研究院医学系 特任教授 能勢 博先生に、インターバル速歩の高齢化社会における役割と、今後の可能性についてお話しいただきました。

インターバル速歩の効果については記事1『インターバル速歩とは? 体力向上・生活習慣病の予防につながるウォーキング法』をご覧ください。

私は、急速に進行する高齢化社会において、インターバル速歩は大きな役割を果たすと考えています。インターバル速歩によって体力向上や生活習慣病の改善につながれば、老後を楽しむことができる高齢者が増加するのではないでしょうか。それは、高齢者ご本人やご家族にとって非常に明るいニュースであると思います。

さらに、高齢化に伴い医療費は今後ますます高騰すると見込まれています。記事1でお話ししたように、インターバル速歩によって、生活習慣病や軽度認知症が改善されれば、医療費の抑制にもつながるでしょう。

提供:PIXTA

ここでは、インターバル速歩のいくつかの可能性についてお話ししたいと考えています。

まず、私はインターバル速歩を体力向上の目的に留まらず、治療の一手段として取り組んでほしいと考えています。実際に、デンマークのコペンハーゲン大学では、糖尿病の治療法のひとつとしてインターバル速歩を取り入れようとしています。

日本でも、将来的に治療法として保険適用されれば、さまざまな疾患に効果を発揮するのではないでしょうか。

さらに、近年の術後のリハビリのスタンスは変化しつつあります。たとえば、近年では、術後、比較的早く動くことが推奨されています。さらに、手術前に運動トレーニングをさせるケースもあります。これは、術前に筋肉を太くすると術後の傷の治りが早くなるからです。傷の治りが早くなると在院日数も少なくなるわけです。

筋肉は、使わないと萎縮し細くなってしまいます。それは、年齢が若い方も例外ではありません。たとえば、骨折しベッドで長期間に渡り安静にしていると筋肉は痩せて細くなってしまいます。

このように筋力を落とさないためには、マシンを使わないインターバル速歩が最適であると考えており、今後は広く適応されることを期待しています。

一般的に、運動処方効果のエビデンスを集めるとなると、たとえば、10〜20名をジムに来てもらい、検証実験するしかありませんでした。しかし、記事1でお話ししたようなe-ヘルスプロモーションシステムを使えば、一気に100〜200名のデータを取得することが可能なのです。

私たちは、すでに5か月間のインターバル速歩効果のエビデンスについて7300名のデータベースを構築しています。さらに、2017年現在、年間1500名くらいの方がインターバル速歩を実施していますので、このデータベースはますます大きくなっていきます。

これらを活用し、体質による運動処方の効果の違いなどを明らかにする研究の準備をしています。今後は集まったデータを活用し、さらに効果的なトレーニング法の実施へとつなげていきたいと考えています。

インターバル速歩の対象は、現状では中高年世代が中心です。一般的に中高年であると時間に余裕のある方が多いので、地域公民館などに集まりみんなでインターバル速歩に取り組むようなモデルが確立しています。

今後は、さらに中高年以外にも広めていきたいと考えています。

特に、若い方や学生などを対象にいかにインターバル速歩を広めていけるかは、大きな課題の一つです。その解決策の一つとして、スマホで使用できるアプリの展開があります。

最新のスマホであると、気圧計など測定に必要な装置が搭載されている商品が多いので、それらを利用して、アプリで従来の装置と同様に歩行時のデータを測定することが可能になります。

私は、アプリを用いて以下のようなことを実現したいと考えています。

たとえば、アプリを用いてデータに基づき未来予想をし、今のままの生活を続けると数年後にどのような健康上のリスクがあるか予測しフィードバックします。さらに、5か月インターバル速歩に取り組むことで、どれくらい健康状態が改善されるかなどの未来予測を個人にフィードバックするサービスを検討しています。ほかにも、ライバルと競い合わせるような仕掛けをつくりたいとも考えています。

お話ししてきたような可能性に加えて、インターバル速歩をコミュニティーの形成にもつなげたいと考えています。

同じ行為をしている人に対し、人は親近感を持つようにできていると考えています。これは理屈ではありません。同じ行為をすることは、心理的なバリアを取り除く効果があるのではないでしょうか。今後は、インターバル速歩をする人同士のつながりが形成されることに期待していますし、地域のコミュニティーの形成に役立てたいと考えています。

 能勢 博先生

インターバル速歩については、国内外より取材がきています。それほど、注目を集めている新たな運動処方なのです。私は、みんなが楽しくインターバル速歩に取り組むことができ、その効果がわかれば、より多くの方に取り組んでもらえると考えています。

特に、高齢化が進行する日本社会のなかで、元気に生活できる高齢者を増やすとともに、医療費の削減にもつながっていくでしょう。

さらに、お話ししてきたような可能性を実現していくことができるよう、今度も注力していきます。

インターバル速歩には、インストラクター養成講座を設けています。現状では有料になりますが、2泊3日で講習を受けられるようになっています。インターバル速歩を会得したいという方は、この養成講座に参加してもらうこともおすすめです。

また、インストラクター養成講座を修了した方は既に全国で60名くらいいらっしゃいますので、彼らにインストラクターの教えを請うことも可能でしょう。

インターバル速歩に興味がある方は、以下までお問い合わせください。

NPO法人熟年体育大学リサーチセンター

  • 信州大学 学術研究院医学系 特任教授

    能勢 博 先生

    画期的な効果で、これまでのウォーキングの常識を変えたといわれるインターバル速歩を提唱。趣味は登山。長野県の常念診療所長などを歴任し、1981年には中国・天山山脈の未踏峰・ボゴダオーラ峰(5445m)に医師として同行、自らも登頂した。

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