
気分が上がったり下がったりすることは誰にでもあることです。しかし、通常の気分の浮き沈みとは違い、体を動かすことすらできないほど気持ちが辛くなり、不眠や食欲不振に陥ったり、逆に気分が高揚して突発的に高価な買い物をしたり、周囲に怒鳴り散らすなどの行為があった場合は、気分障害という疾患の可能性があります。
気分障害を発症するメカニズムの詳細は、まだ解明されていません。そのため、気分障害を発症したことのない方の一部には、気の持ちようだといって理解されないこともあります。しかし、気分障害の症状は、経験したことがないと理解できないほど辛く重苦しいもでもあり、適切な治療をする必要があります。
今回は、藤田医科大学 医学部 精神神経科学教授の岩田仲生先生に、気分障害の症状や行動、発症メカニズムを中心にお話をうかがいました。
気分は、人間が生きていくうえで上がったり下がったりするもので、ある程度であれば普通のことです。しかし気分障害では、通常の気分の上がり下がりとは違い、今までの人生のなかで一度も経験したことのないような、非常に重苦しく辛い気分に陥ります。
気分障害の苦しみは発症した方にしかわかりません。たとえば、心筋梗塞を発症したときの通常とは比較できないほどの胸の痛みであるとか、インフルエンザで40℃の熱がでて身動きするのも苦しいといった、経験してみないとわからない、そういった苦しみなのです。
気分障害のなかには、気持ちが落ち込むうつ病と、気持ちが過剰に高揚する躁(そう)の状態とうつ病の状態を交互に繰り返す双極性障害(Ⅰ型・Ⅱ型)*の大きく2つのタイプに分類できます。
重度の躁状態とうつ病を交互に発症する疾患が双極性Ⅰ型障害で、軽い躁とうつ病を交互に発症する疾患が双極性Ⅱ型障害。双極性障害は躁うつ病とも呼ばれています。
現在の医学では、うつ病や双極性障害などの気分障害がどういったメカニズムで発症するかについてはまだはっきりとは解明されていません。そのため、発症の仕組みを説明することは非常に困難であることに加え、気分の上がり下がりは誰にでも存在するため、気分障害にかかったことのない方のなかには、この疾患は「気の持ちようの問題」ではないかといった偏見を持っている方も多く存在します。しかし、実際には気分障害はさまざまな治療介入が必要な病気なのです。
気分障害を発症しているあいだは、多くの場合患者さんに病識(自分自身が疾患を患っているという自覚)はありません。症状が軽くなってきた時点で、あのときは異常だったとわかるようになります。以下では、うつ病と双極性障害にわけてさまざまなケースや症状を例示していきます。
うつ病を発症した場合は、すべてのことに興味がなくなり、次のような症状があらわれます。
不眠になると、朝までまったく眠くならないか、眠れても1日3時間程度という日々が続きます。また、食欲不振の場合、最初は食べ始めることができますが、少しすると食欲が一気になくなってしまい、食べられなくなってしまうという特徴があります。
この2つの症状が続くと体力が消耗されていき、最悪の場合まったく眠らず、何も食べず、何も喋らなくなって昏迷状態(自らの意思表示をせず、外からの刺激にも反応しない状態)に陥るケースもあります。
「死ね」という幻聴が聞こえたり、亡くなったおばあちゃんが手招きをしているなどの幻覚がみえたりする場合があります。また、「息子が人を殺したから、うちの家族はみんな死んで詫びなければいけない」といった妄想を持って譲らない患者さんや、「自分は全身にがんが転移しているから」といってうつ病の治療をすべて拒否する方もいます。
苦しいから生きたくないという考えが頭に浮かび、自殺を考えるようになります。「今ここで車が自分を轢いてくれたら生きなくてすむ」と思うような、とにかく生きていることが辛いから死んでしまいたいという感情になります。うつ病の症状としての自殺の企図は、死について反復して考えた末に、生きている意味がないから自殺したいという種類の自殺願望とは少々異なっています。
(うつ病の状態が治らないまま長く続くと、躁の症状が現れることも少なくありません。この場合はうつ病ではなく、たまたま最初にでた症状がうつであっただけであり、双極性障害と診断されます)
双極性障害のⅠ型とⅡ型は、うつ病の症状に関しては同様ですが、躁の症状の重さが異なります。
重度の躁状態とうつ病の症状を交互に現す疾患が、双極性Ⅰ型障害です。双極性Ⅰ型障害の躁エピソードは、精神病の患者さんと区別がつかないほどの症状があらわれ、日常生活に支障をきたすようになります。
具体的なエピソードとしては、自尊心が誇大しイライラとして仕事をやり散らかしたり、周囲に怒鳴り散らしたりします。また逆に、自分は何でもできるといった万能感がわき起こり、何でも自分に任せろといった感じで、常ににこにことした笑顔をみせるパターンもあります。
前者のようなイライラとして怒り出す躁の症状を、我々は「プリプリ躁」と呼んでいます。人間は、自分が不当な扱いを受けたと感じたときに怒るようになっています。そのため、自尊心が誇大すると自分がとても偉い人間に思え、すべての扱いが不当と考えるようになるため、周囲に怒り出すのです。
また、様々なことのアイディアが次々と浮かんでくるので、少しやっては放り出しを繰り返し、収集がつかなくなることもあります。他には、突然車などの高額な買い物をしたり、海外で違法ドラックに手を出してしまったり、ということもあります。
双極性Ⅱ型障害とは軽躁(軽い症状の躁)の状態とうつ病の症状を、かわるがわるに発症する疾患のことです。
軽躁状態でも日常生活に支障をきたすことなく生活している方は、世の中に大勢いらっしゃいます。たとえば、日夜を問わず寝ないで仕事に没頭する方は、軽躁状態といえるでしょう。私のまわりの医師にも当てはまる方は沢山います。その他にも、海外旅行に行った際に、寝る間を惜しんででも、ガイドブックに載っている場所をすべて回りきらないと気が済まないという方も軽躁状態といえるかもしれません。
また、人間は、危険なところに踏み入ったり、新しいものを食べてみたりといった軽躁状態の冒険心を持った方がいたからこそ、進歩してきたという面があるのも事実です。もっとも、軽躁状態のエピソードだけでは、双極性Ⅱ型障害とは診断されません。軽躁エピソードに加え、うつ病の症状がみられた場合に初めて、双極性Ⅱ型障害と診断されます。
藤田医科大学 医学部 精神神経科学 教授
周辺でうつ病の実績がある医師
恵比寿駅前メンタルクリニック 院長
日本大学医学部附属板橋病院 精神神経科 部長
血液内科、腎臓・内分泌内科、糖尿病・代謝内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器・肝臓内科、腫瘍内科、脳神経内科、心療内科、小児科・新生児内科、精神科、皮膚科、消化器外科、心臓外科、血管外科、小児外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科、形成外科、脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科、放射線診断科、放射線治療科、疼痛緩和外科、麻酔科、歯科口腔外科、病理診断科、臨床検査科、救急科
東京都板橋区大谷口上町30-1
東武東上線「中板橋」バス・タクシー乗り場なし 徒歩20分、東京メトロ有楽町線「千川」国際興業バス 日大病院行 バス10分
東京慈恵会医科大学附属第三病院 院長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、消化器内科、肝臓内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、肝胆膵外科、肛門外科、内分泌外科、頭頸部外科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
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慶應義塾大学医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
東京都新宿区信濃町35
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六番町メンタルクリニック 非常勤
心療内科、精神科
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親と婚約者からの言葉のDV
先生初めまして。 今私は心療内科にかかっています。診断は鬱ですが、今大分症状が落ち着き、隔週の通院も1ヶ月に一回となりました。今回ご相談したいのは、婚約者と実母から受けている言葉のDVです。言葉としては婚約者からは『気狂い』『頭おかしいんじゃねえの?』等実母からは『あんたはいつまでも結婚も決めないで居候しやがって』『お前のせいで血圧が高いんだよ!』等毎日のように言われていて、もうこんな毎日を過ごしているので。自殺願望が出てきました。取材からはその場から離れなさいとしかアドバイスは受けられず話せる相手もいません。台所で自分で調理をしていれば包丁で自分を刺そうとしたこともありました。助けてください。
うつ病と診断されましたが頼れる人がいません。
3日前に心療内科を受診し、うつ病と診断されました。 症状は、倦怠感、やる気がでない、食欲がない、泣いたり笑ったりを繰り返す、眠れない、仕事に行っても2,3時間しか働けない、疲れやすいなどです。 ご飯に関しては、誰かが一緒にいないと食べれません。 今は彼氏が頼みの綱で、彼氏がお盆休みなので看病してくれてますが、来週の木曜日から通常勤務になるので看病してもらうのが難しくなります。親とはいい関係ではないので正直頼りたくないです。職場の人も気を使ってくれてご飯を一緒に食べに行ってくれたりして嬉しいですが、話していてどっと疲れてしまいます。 一人でいると買い物もできないし、日常生活に支障がでているので、誰か頼りたいのですが頼れず困ってます。施設に入って入院でもした方がいいのでしょうか。
ここ一週間鬱のような感じ
先月くらいからもしかしたら鬱かな?と とにかく朝起床が辛く仕事に行けてません。午前中ずっと横になってます、午後になると少し落ち着く感じですが食欲が落ち体重も減ってしまいました。 仕事の負担感やコロナ不安などあるのでしょうか? 心療内科はどこもいっぱいみたいで、予約が取れたのが月末です。 その日まで大丈夫かな?と不安で仕方ないです。
抗うつ薬に抵抗があります。
主人は、抗うつ薬の副作用が怖く、出来れば漢方が良いのですが、うつ病に漢方薬は効くのでしょうか? 神経内科の医師にパーキンソン病と診断されていますが、運動機能よりも、うつ症状の方が強い為、まずはこちらを治すという判断でした。
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