胃の粘膜が胃酸などにより傷害され、腹痛や吐き気を惹き起こす「胃潰瘍」は、胃の疾患の中でも比較的身近な病気です。胃潰瘍とはどのような病気で、罹患した場合胃の内部はどのような状態になるのでしょうか。国際医療福祉大学塩谷病院消化器内科部長の山根建樹先生に、ステージごとの症例写真と共に解説していただきました。
健康な胃は「攻撃因子」である胃酸やペプシンなどから自己を守るために、胃粘液を分泌するなどの「防御因子」により粘膜表面を保護しています。ところが、粘膜の粘液や血流の減少などから、「防御因子」が弱まると、攻撃因子が優位になるため胃粘膜が傷害されてしまいます。このように防御因子が弱ってしまう主な原因には、ピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の2つが挙げられます。
胃壁は粘膜固有層・粘膜下層・固有筋層・漿膜(しょうまく)などからなっており、傷害は損傷される深さによってびらんと潰瘍に分類されます。粘膜固有層までの傷害がびらんですが、本記事では粘膜下層よりも深部にまで傷が及ぶ「胃潰瘍」についてご説明していきます。
十二指腸潰瘍では図のように自由穿孔がみられることもありますが、本記事で取り扱う「胃潰瘍」で胃壁が自由穿孔することはあまりありません。
まず、活動期(active stage)・治癒過程期(healing stage)・瘢痕期(scarring stage)の3つに大別され、それぞれが更に2段階に分けられます。この分類法は、1961年に国立がんセンターの崎田隆夫教授、三輪剛教授らが作成したため「崎田・三輪分類」とも呼ばれており、内視鏡による検査や治療の際の重要な指標となっています。各ステージの症状やその特徴を、症例写真と共にみていきましょう。
ステージごとに症状が異なります。画像とともに詳細を紹介します。
潰瘍が活発に活動している急性期で、潰瘍底は厚みのある白苔(はくたい)に覆われ、凝血塊の付着や血管の露出、出血などがみられ、また潰瘍の辺縁は浮腫状に膨らみます。この写真では、潰瘍底に凝血塊の付着がみられます。
潰瘍底はA1に比べきれいな白苔に覆われるようになり、露出血管や凝血塊の付着はなくなり、潰瘍辺縁部の浮腫も減退します。この写真は上に示した症例の治療開始後のもので、凝血塊の付着はなくなっています。
潰瘍が小さくなり始める時期です。白苔は薄くなり、潰瘍辺縁の浮腫は消褪し赤色の再生上皮の出現がみられます。
※この写真は上部に掲載している前庭部の巨大潰瘍とは異なるNSAIDs潰瘍(多発性潰瘍)の症例写真です。
潰瘍が更に小さくなり、再生上皮が著明となります。
潰瘍の白苔は消失し、赤色の瘢痕となります。写真は上に示した症例の治療後のものです。
発赤が消失し、白色の瘢痕となります。
症例写真提供:全て山根建樹先生より
胃潰瘍は、原因がピロリ菌(Helicobacter pylori:Hp)感染によるHp潰瘍と、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服薬が原因となるNSAIDs潰瘍に分けられます。
どちらの胃潰瘍も罹りやすさに性差はありませんが、患者さんの年齢層には違いがみられます。
Hp潰瘍は40歳から50歳で発症しやすく、高齢になると胃酸分泌が低下することから罹患しにくくなります。一方、NSAIDs潰瘍は消炎鎮痛作用を持つ薬剤によるものですので、腰や膝に痛みを抱え、NSAIDsを服用している高齢者の方に多くみられます。胃潰瘍の治療方針は、Hp潰瘍かNSAIDs潰瘍かを明確に見極めたうえで考えていく必要があります。
国際医療福祉大学 教授、国際医療福祉大学塩谷病院 消化器内科部長
関連の医療相談が41件あります
胃潰瘍で気を付けることは?
胃潰瘍で避ける因子と食生活で気を付けることは?
胃の消化不良
半年前の極度のストレスから、あまり物を食べる気もしなくなり、好きだったお菓子やお酒にも興味がなくなってしまったのですが(なんに関しても食べるた後のことを考えると、そっちの方自体が怖くなってしまい)3時間経っても、食べたものの臭いなどが上がってきたり、胃のあたりの不快感があり、胃潰瘍や吐き気止め、ストレスに対してのお薬の処方もしていただいていますが、以前よりは良くなったものの、完治はしておらず、その間に食も細くなり、半年で8キロ痩せてしまいました。 元々痩せ型ではなかったので、今体系的には良いのかもしれませんが、やつれた感、体力が落ちてふらふらしてしまうので、同時に気をつける方があれば、早急に取り入れたいなぁと思いご相談させていただきました。
みぞおち左側の鈍い痛みについて
お世話になります。 人間ドックでγ-gtpを指摘され4月に再検査でMRIを受けたところ3ミリほどの膵嚢胞が見つかりました。経過観察で10月に再度MRI検査を受けることとなっております。 その事と関係するかはわからないのですが、最近よくみぞおち左側に鈍く刺すような痛みが続きます。少しすると落ち着くのですが、忘れた頃にたまに同じ症状があらわれます。 膵嚢胞が原因なのか、またそうでなければどのような原因が考えられるかを知りたく投稿させていただきました。場合によっては病院へかかった方がいいかをご教授ください。 よろしくお願い致します。
薬の副作用について
3-4カ月前より腰回りに痛みがあり、原因が分からないため(CT 、レントゲン、血液検査は実施)とりあえずの鎮痛剤を病院で処方される。かなり強い鎮痛剤だったようで、徐々に胃腸の調子が悪くなり、先日体調がおかしくなり(吐気、だるさ)救急で病院で診察を受けるが、血液検査等では異常がなく、現在は自宅にて療養中 食欲がなく、怠さが続いている。 何科を受診すればいいのか。 薬についてはどうしたらいいのか。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「胃潰瘍」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。