インタビュー

胃潰瘍の原因とは? ピロリ菌感染とNSAIDs服薬

胃潰瘍の原因とは? ピロリ菌感染とNSAIDs服薬
山根 建樹 先生

国際医療福祉大学 教授、国際医療福祉大学塩谷病院 消化器内科部長

山根 建樹 先生

この記事の最終更新は2016年03月21日です。

胃壁が傷つき、出血や腹痛などが惹き起こされる「胃潰瘍」は、誰もが一度は耳にしたことのある身近な病気のひとつです。胃潰瘍の原因は2つあり、どちらが原因となっているかによって病態も治療法も異なります。胃潰瘍の2大原因とはどのようなものでしょうか。また、一般的に胃潰瘍を惹き起こすといわれるストレスや喫煙、飲酒は、実際に胃潰瘍の発生と関係しているのでしょうか。国際医療福祉大学塩谷病院消化器内科部長の山根建樹先生にお伺いしました。

ピロリ菌とは、酸性の環境である胃の中に生息できる細菌です。大腸菌よりもやや大型のらせん形をした桿菌(円筒状の原核生物)で、尿素を分解するウレアーゼという酵素を発生し胃酸を中和することで、酸性の胃の中に棲み続けることを可能にしています。

ピロリ菌は、胃潰瘍十二指腸潰瘍胃がんなど、様々な疾患を惹き起こす原因菌であることが広く知られていますが、これは菌がアンモニアをはじめ、胃粘膜に傷害をきたす種々のサイトカインを産生することによるものです。発展途上国での感染率が高いピロリ菌ですが、現在の日本でも小児期に感染した中高年層の方に多くみられます。ピロリ菌は長年胃の中に棲み続け、病気を惹き起こすという特徴があります。正式名称をヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:Hp)というため、本記事ではピロリ菌による胃潰瘍のことをHp潰瘍と記します。

変形性関節症腰痛症などで処方される「非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)」が原因で発生する胃潰瘍をNSAIDs潰瘍と記します。NSAIDsは、粘液分泌や血流を調整する胃粘膜の主要な防御因子のプロスタグランジン(PG)の産生に関連する酵素:COX-1(シクロオキシゲナーゼ-1)を阻害することからPGを減少させ、粘膜傷害を惹き起こします。また、膜透過性を亢進させるため、直接的に粘膜を傷害することもあります。

胃潰瘍の2大原因は、前項までにご説明した通り、ピロリ菌とNSAIDsです。ただし、現在の日本ではピロリ菌の非感染人口が増え、更に除菌療法が普及したことによってピロリ菌感染率は低下しています。一方、人口の高齢化に伴って循環器疾患や整形外科疾患を持つ方が増えたため低用量アスピリンを含めたNSAIDsの使用頻度は増加しています。このような背景があり、現在の日本ではNSAIDs潰瘍の割合が増えています。

上記2大原因のほか、内分泌腫瘍によるZollinger-Ellison症候群、サイトメガロウイルス感染、炎症性腸疾患クローン病骨粗鬆症治療薬のビスホスホネートなども胃潰瘍の原因となりますが、頻度は稀です。

しばしばストレスや喫煙胃潰瘍の原因となるといわれることがありますが、これらは誘因です。強度のストレス(重度の火傷や脳手術など)で胃潰瘍が発生することはありますが稀です。喫煙も胃粘膜の血流を障害し胃の防御因子を低下させることはあっても直接の原因とはなりません。胃潰瘍の誘因にはほかに、飲酒や香辛料、食塩、コーヒーなどのカフェイン摂取があります。

また、NSAIDs潰瘍の発生を助長する危険因子としては以下のようなものが挙げられます。

  • 胃潰瘍の既往(過去に罹患した経験)
  • 高齢
  • 複数もしくは高用量のNSAIDsの服用
  • ステロイド薬の併用
  • 抗血栓薬の併用
  • 心臓や肺、肝臓疾患の合併
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  • 国際医療福祉大学 教授、国際医療福祉大学塩谷病院 消化器内科部長

    山根 建樹 先生

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