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ピロリ菌感染

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

Helicobacter pylori、通称ピロリ菌に感染している状態を指します。ピロリ菌は胃の表層を覆う粘液の中に住みつく菌で、感染したまま放置しておくと慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)胃がんなどが引き起こされることがあります。

1982年、オーストラリアの研究者であるBarry MarshallとRobin Warrenがピロリ菌の単離、培養にはじめて成功し、2005年にはこの功績によりノーベル医学生理学賞を受賞しています。ピロリ菌の感染率には衛生環境が関連するといわれており、日本では中高年に多く、若年層では近年減少傾向にあります。

ピロリ菌は1~2週間の治療で除菌することが可能です。これまでに、胃・十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病などに対してピロリ菌除菌が有効であることがわかっています。また、ピロリ菌感染と胃がん発症の因果関係が報告されています。日本において胃がんは患者数が多いがんであり、胃がんを予防するという意味でもピロリ菌除菌の有用性が示されています。

原因

ピロリ菌の感染経路に関しては、現在(2017年)のところ完全にはわかっていませんが、経口感染するのではないかと考えられています。具体的には、ピロリ菌に感染している大人から赤ちゃんに口移しで食べ物を与える、糞便に汚染された食物・水の摂取などが考えられます。

また、衛生環境がピロリ菌感染に関係していることがわかっています。そのため、発展途上国においてピロリ菌感染者が多く認められます。日本においては60歳以上の80%が感染しているとされていますが、衛生環境の改善に伴い若年層の感染率は減少傾向にあり、10代以下の感染率は10%以下といわれています。

また、ピロリ菌に感染する時期としては、ほとんどの場合、免疫機構が十分に発達していない乳幼児、特に4歳以下であるといわれています。

症状

ピロリ菌に感染しても、初期のうちは特徴的な自覚症状がないことがほとんどです。しかし、感染したまま放置しておくと、胃炎胃潰瘍十二指腸潰瘍萎縮(いしゅく)性胃炎、さらには胃がんなどを引き起こします。これらの病気が起きると、胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの自覚症状が認められるようになります。この他にも、MALTリンパ腫といった血液の病気を引き起こしてしまうこともあります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍は、ピロリ菌感染者の10~15%程度が発症するといわれています。また、ピロリ菌に感染し数十年の経過を経ると、3~5%程度が胃がんを発症するといわれています。

検査・診断

ピロリ菌感染を調べる検査はさまざまで、施設によって実施される検査が異なる場合があります。大まかには、胃カメラ (上部消化管内視鏡) を必要とし、患者さんの体への負担が大きい検査と、胃カメラを必要とせず患者さんの体への負担も少ない検査に分けられます。

胃カメラを使用する検査

内視鏡により胃の粘膜を採取 (生検) し、その検体を用いて迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法といった方法を用いて検査を行います。

迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が持っているウレアーゼという酵素が試薬内の尿素を分解してアンモニアを生じさせることを利用した方法です。生じたアンモニアによりpH指示薬に色調変化がおこり、ピロリ菌が感染しているかどうかを短時間で判定することが可能です。

鏡検法

採取した胃の粘膜にさまざまな染色を行い、顕微鏡下でピロリ菌を検索するとともに組織学的な評価を行います。

培養法

検体をすりつぶして5~7日程度培養し、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。鏡検法や培養法は菌そのものを確認できる利点はありますが、採取した部分にピロリ菌がいない場合には偽陰性となることもあるため注意が必要です。

胃カメラを必要としない検査

尿素呼気試験、抗体測定、糞便抗原測定があります。

尿素呼気試験

検査用の薬を服用する前と後に呼気を採取する簡便かつ精度の高い検査です。

抗体検査

血中や尿中のピロリ菌に対する抗体を調べます。

糞便抗原測定

糞便中のピロリ菌抗原の有無を調べる検査です。

治療

ピロリ菌の除菌治療には、プロトンポンプ阻害剤 (ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、ボノプラゾンのいずれか) と「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」という2種類の抗生物質を組み合わせた多剤併用療法が行われます。これら3種類の薬を1日2回7日間続けて服用します。この1次除菌治療で70%以上の方が除菌に成功し、治癒します。以前は80%以上の成功率といわれていましたが、近年クラリスロマイシンへの耐性菌が増加し、若干の低下傾向にあります。

2015年に発売されたボノプラザンを用いた除菌療法が、現在主流となっており、ボノプラザンを用いた場合、90%以上の成功率となっています。

1次除菌治療終了後、4週以上期間をあけてから再度検査を行い、除菌できているかを調べます。治療に使用するプロトンポンプ阻害剤は、薬の服用を中止してからも4週程度ピロリ菌に対する静菌作用が続くとされています。そのため現在の指針では、1次除菌治療終了後4週間あけてから検査を実施することになっています。

1次除菌で効果が認められない場合には、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更し、同様に1日2回7日間続けて服用、2次除菌を行います。2次除菌まで行った場合には、全体の90%の方が治癒できます。

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