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インタビュー

ピロリ菌とは―なぜ危険?感染経路は?

ピロリ菌とは―なぜ危険?感染経路は?
森下 鉄夫 先生

慶應義塾大学医学部 客員教授

森下 鉄夫 先生

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この記事の最終更新は2015年06月17日です。

ピロリ菌は、それ自体が症状を起こすわけではありませんが、放っておくと胃潰瘍十二指腸潰瘍、場合によっては胃がんのリスクにもなる菌です。ピロリ菌とはどのような菌なのでしょうか? どのように感染するのでしょうか? 森下鉄夫先生にお話をお聞きしました。

ピロリ菌は、胃の粘膜表面に生息している菌で、放置しておくと胃や十二指腸の病気を引き起こすことがあります。
胃の中には、食べ物の消化を助けるための胃液があります。胃液には塩酸が含まれています。これは非常に強い酸性であり、ほとんどの菌は生息できません。ピロリ菌も同様に酸性の中では生きられません。

しかし、それでもピロリ菌は胃の中で生き続けます。これは、ピロリ菌が「ウレアーゼ」という酵素を出すことができるからです。ウレアーゼは、胃の中にある尿素を分解してアンモニアというアルカリ性の物質を作りだします。このアンモニアにより塩酸が中和され、環境が酸性ではなくなります。これにより、ピロリ菌は胃の中でも生き続けることができます。

ピロリ菌に感染しても最初のうちはあまり特徴的な自覚症状がありません。特に、子どもの頃に感染した場合は症状がはっきりしません。

一方、大人の場合は感染して早い段階で症状が出ることがあると言われています。一時的に急性胃炎、「表層性胃炎」(胃の表面の炎症)が起きることがあるからです。
しかし、それがどの段階で出てくるのか、どれくらいの頻度で出てくるのかははっきりしません。そもそもお腹がいたい、気持ち悪いなどは「よくある症状」のため、特異的なものとはいえません。

しかし、たとえ症状がなくてもピロリ菌への感染は危険です。それは、放置しておくと胃や十二指腸にまで慢性の病気や癌を引き起こしてしまうからです。

胃炎・胃潰瘍十二指腸潰瘍萎縮性胃炎・さらには胃がんなどの怖い病気を引き起こします。これらの病気が起きると、胃のむかつき・胃の痛み・吐き気などの自覚症状が出現することが多くなります。血液の病気を引き起こしてしまうこともあります。

ピロリ菌が住み着いてから数十年の経過を経ると、3~5%程度が胃がんを発症すると言われています。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍は、ピロリ菌感染者のおおむね10~15%程度が発症します。これらのリスクを抑えていくためにも、ピロリ菌を除菌する必要があります。

かつては胃潰瘍・十二指腸潰瘍は「胃潰瘍症」「十二指腸潰瘍症」などと呼ばれ、何度も何度も、場合によっては一生を通して繰り返す病気であると認識されてきて、精神的な面からも研究が行われてきました。そして、ピロリ菌が感染することによりこれらが繰り返されることが分かってきました。
昔からの研究者の中には「胃潰瘍症・十二指腸潰瘍症からの離脱が除菌によってもたらされた」というような表現をする方もいます。

ピロリ菌の感染経路はまだはっきりと分かりませんが、水や食べ物と一緒に口から入るという説が考えられています。海外のデータを見ると、欧米諸国においては公衆衛生の整備が早く、早期からきれいな水や食物を飲食していたためにピロリ菌の感染者が少ないと考えられます。

一方で、公衆衛生の整備が未発展の発展途上国においてはピロリ菌の感染者は多くなります。日本では60歳代以上の80%が感染しているとされています。若くなればなるほど感染率は下がります。

ピロリ菌が感染するのは、ほとんどの方の場合、免疫機構が十分に発達していない乳幼児、特に4歳以下のときであるといわれています。また、成人になると、ステロイドを使っている人など、免疫をずっと抑えている状況の方が発症しやすくなります(易感染性と言います)。慢性の腎臓病の方も感染しやすくなります。

しかし、先述したように、公衆衛生が非常によくなったおかげでピロリ菌に感染する確率は低くなりつつあり、今では10代以下のピロリ菌感染率は10%以下程度であるといわれています。

記事1:ピロリ菌とは―なぜ危険?感染経路は?
記事2:ピロリ菌の検査いろいろ
記事3:ピロリ菌の治療―除菌について

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    森下 鉄夫 先生

    慶應義塾大学、東京歯科大学市川総合病院内科学主任教授・副院長・3病院機能統括部長さらに山王メディカルセンター院長などを経て現在国際医療福祉大学で教授を務めた。胃や十二指腸、消化管疾患のエキスパートであり、ピロリ菌や感染性腸疾患では豊富な臨床経験だけでなく多数の研究業績を持つ。アメリカUCLA、フィリピン、バングラデッシュなど海外での医療・研究活動に加え、日本ーボリビア医療友好協会理事長、ボリビアキリスト教大学正教授を務めており、国際交流にも力を注ぐ。

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