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胃がんの腹腔鏡手術−現状と今後の進歩
傷が小さく痛みも少なくて済む胃がんの腹腔鏡手術は年々増加傾向にあり、今後もさらに増えていくことが予想されています。今回は、横浜市立大学附属市民総合医療センター病院副病院長/消化器病センター外科教...
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胃がんの腹腔鏡手術−現状と今後の進歩

公開日 2018 年 10 月 29 日 | 更新日 2018 年 10 月 29 日

胃がんの腹腔鏡手術−現状と今後の進歩
國崎 主税 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 外科 教授

國崎 主税 先生

目次

傷が小さく痛みも少なくて済む胃がんの腹腔鏡手術は年々増加傾向にあり、今後もさらに増えていくことが予想されています。

今回は、横浜市立大学附属市民総合医療センター病院副病院長/消化器病センター外科 教授・部長である國崎主税先生に、胃がんの腹腔鏡手術についてお話を伺いました。

胃がんの腹腔鏡手術の方法

腹腔鏡手術とは、お腹に小さな傷をいくつか開け、そこから腹腔鏡(お腹の中を確認するための小型カメラ)や鉗子(かんし)(手術で組織をつかんだり引っ張ったりするために使用する器具)などを挿入し、腹腔鏡が映し出す映像を確認しながら行う手術です。お腹を大きく切って行う開腹手術と比べて、傷が小さく、術後の痛みも少なくて済むなどの利点があります。

腹腔鏡手術の方法

通常の方法

腹腔鏡手術 通常

多くの病院で一般的に行われている腹腔鏡手術は、お腹に5つの穴を開けて行う方法です。

左右の側腹部に2箇所ずつ穴を開けて鉗子類を挿入し、お(へそ)に開けた穴から腹腔鏡を挿入します。そして、二酸化炭素ガスでお腹を膨らませて、お腹の中を見渡せるようにしてから手術を行います。

また手術の最後には、上腹部を5㎝ほど切開して、そこから切り取った胃を取り出したり、吻合を行ったりします。

しかし、近年は上腹部の切開を行わないことが多くなってきています。お臍は、すり鉢状にへこんだ形状をしているため、2〜3㎝ほど小さく切開するだけで、めくり上がるように広がります。そこから、胃を取り出すことが可能です。また、お臍を使用することで、傷跡も目立ちにくくなります。

さらに、自動縫合器を用いて体腔内吻合を行う手技が一般的になってきたことから上腹部の切開を行う必要がなくなってきたのです。

RPS(Reduced Port Surgery)

RPS

近年は、RPS(Reduced Port Surgery)とよばれる穴の数を減少させて行う腹腔鏡手術も普及してきており、当院でもこの方法を用いています。

お臍の部分を2.5〜4㎝ほど切開し、そこにマルチアクセスポートという複数個の穴が開いた機器を装着します。その穴から、腹腔鏡や鉗子を挿入して手術を行います。また、鉗子や切開装置を挿入・操作するための12mmほどの切開創を右側腹部に作ります。

5つの穴を開けて行う腹腔鏡手術よりも、さらに傷跡が目立たず整容性に優れた方法です。

しかし、胃がんの手術において整容性は第一優先ではなく、あくまでも手術の質は維持する必要があります。そのため、体格がよい患者さんなどで、お腹の中の操作が難しくなると予想される場合には、5つの穴を開ける腹腔鏡手術を行うこともあります。

胃の切除方法

 

胃の切除

胃の切除方法には、大きく3通りの方法があります。どの方法で手術を行うかは、がんの発生場所によって選択します。

  • 胃全摘術…胃のすべてを切除する方法
  • 幽門側(ゆうもんそく)胃切除術…胃の下側3分の2程度を切除する方法
  • 噴門側(ふんもんそく)胃切除術…胃の上側3分の1~2分の1程度を切除する方法

胃がんの腹腔鏡手術の適応

開腹手術を選択するのはどんなとき?

胃がんの腹腔鏡手術は、以下のような患者さんには適応とならず、開腹手術を行うことがあります。

  • ステージIIA以上の進行胃がん
  • 何度も開腹歴があり、癒着がひどいとき
  • 心臓や肺の機能が非常に悪いとき

ステージIIA以上の進行胃がん

胃がんステージグラフ

2018年9月現在、日本胃癌学会による胃癌治療ガイドライン第5版では、胃がんの腹腔鏡手術は、早期胃がんとよばれるステージIAまたはIBの場合に推奨されています。

しかし現在、ステージIIやⅢの進行胃がんに対する腹腔鏡手術の有用性を証明する多施設共同研究も行われています。この研究で、ステージIIやⅢの進行胃がんでも開腹手術と同等、あるいは同等以上のものであると証明されれば、将来的に胃がんの腹腔鏡手術の適応が拡大される可能性があります。

何度も開腹歴があるとき

過去に開腹手術を何度も受けたことのある患者さんは、お腹の中の臓器の癒着(ゆちゃく)が懸念されるため、腹腔鏡手術が困難な場合があります。

そのような患者さんでも、時間をかけて癒着している部分を剥離していけば、腹腔鏡手術を行うことは技術的には可能です。しかしながら、手術時間が長くなり、手術によるリスクも高まるため、腹腔鏡手術の「患者さんの負担を少なくする」という本来の目的とは相反する結果になりえます。

よって、このような理由であらかじめ腹腔鏡手術が困難なものになると予想される場合には、開腹手術を選択します。

心肺機能が悪いとき

腹腔鏡手術は、開腹手術よりも1時間ほど手術時間が長くなります。心肺機能が非常に悪い患者さんの場合、手術時間は少しでも短くすることが望ましいため、腹腔鏡手術が行えない場合があります。

また冒頭でもお話ししたように、腹腔鏡手術では、お腹に二酸化炭素ガスを注入して手術を行います。この二酸化炭素ガスによって、心臓や肺に負担がかかることからも、心肺機能が悪い患者さんには開腹手術を選択することが多いです。

高齢でも腹腔鏡手術はできる

年齢によって腹腔鏡手術の適応を決めることはありません。80代以上の高齢の方でも、全身機能を評価して問題なければ、腹腔鏡手術を行うことが可能です。

術中に開腹手術へ移行することもある

術前に早期胃がんと診断されたにもかかわらず、腹腔鏡手術を行っているときに、がんが胃壁の一番外側の漿膜(しょうまく)、あるいはそれ以上にまで広がっているとわかった場合、途中で開腹手術に移行します。

これは、漿膜にまでがんが広がっていると、がん細胞がお腹の中に広がる「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」を起こしている可能性があるためです。腹腔鏡だけでは、この腹膜播種を見逃す恐れがあることから、開腹して直接お腹の中を観察し、腹膜播種のないことを確認してから胃の切除を行います。

胃がんの腹腔鏡手術の術後

当院の場合、腹腔鏡手術後、翌日には離床して歩行をしていただくようにしています。全身状態を回復したり、胃腸のぜん動運動を促したりするためにも、術後早期に動いていただくことは重要です。また、術後3日目には食事をしていただくことがほとんどです。

胃がんの腹腔鏡手術の利点

腹腔鏡手術による患者さんにとっての大きな利点としては、傷が小さいことと痛みが少ないことが挙げられます。

そのほか、開腹手術に比べて出血量が少ないことや、術後早期に深呼吸ができるため心肺機能の回復が早いことも利点といえます。また、お腹の中の臓器を直接手で触れることがほとんどないため、術後の癒着が起きにくく、開腹手術に比べて腸閉塞(イレウス)()の合併が少ない利点もあります。

腸閉塞…腸内の内容物が塞がれている状態

胃がんの腹腔鏡手術の課題

一方で、腹腔鏡手術の課題としては、技術を習得することが難しいという課題があります。

胃に限らず、消化器疾患全般に対する腹腔鏡手術に対して、日本内視鏡外科学会認定の「技術認定医」という資格があります。技術認定医取得のためには、ブタの生体を使って実際の腹腔鏡手術の手技の習得を行ったり、シミュレーターを使って縫合の練習などを行いながら修練を積みますが、毎年の合格率は20〜30%程度と厳しいものとなっています。

今後、腹腔鏡手術の割合が増加していくと考えられる中で、後進の医師の教育は喫緊な課題といえます。

胃がんの腹腔鏡手術の今後の進歩

國崎先生

2018年4月、ロボットを使った腹腔鏡手術が保険適用になりました。それ以降、徐々に普及しつつありますが、私自身としては、ロボット手術に頼りすぎるのではなく、まずは通常の腹腔鏡手術をしっかりと行うことが重要だと思っています。

先ほどお話ししたように、現在進行胃がんに対する腹腔鏡手術の有用性を証明するための他施設共同研究が行われています。進行胃がんに対する腹腔鏡手術の有用性が証明されれば、今後腹腔鏡手術がさらに増加していくでしょう。

ですから私たち外科医は、患者さんの身体的負担を軽減しながら、がん治療の質も維持していけるよう、腹腔鏡手術のレベルアップを目指していく必要があると考えています。

 

胃がん・食道がん (國崎 主税 先生)の連載記事

1986年より消化器外科医師としてキャリアをはじめる。2008年には横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科教授に就任。上部消化管外科学を専門とし、臨床・研究ともに日本をリードすべく、精力的に取り組んでいる。2013年から日本外科系連合学会理事、2016年からは日本胃癌学会理事に就任。

「胃がん」についての相談が13件あります

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