
胃がんの治療方法にはさまざまなものがありますが、胃がんに対してもっとも有効かつ標準的な治療方法が手術です。手術では、胃を切除するとともに周囲のリンパ節を切除し、がん細胞を全て取り除くことによって治癒を目指します。
しかし、手術によって合併症や後遺症が起こることがあります。そのため、リスクがあるということもしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、胃がん手術の内容、方法、合併症や後遺症、手術後の食事などについて解説します。
手術ではがんのある部分を切除しますが、周囲のリンパ節にがんが転移している可能性があるため、決められた範囲のリンパ節を併せて切除します。これを“リンパ節郭清”と呼びます。また、胃を切除すると食物の通り道が途絶えてしまうため、切除後に食物の通り道を作り直す必要があります。これを“再建”と呼びます。
胃の切除範囲は、がんのある部位やがんの深さ、リンパ節転移の有無などによって異なります。代表的なものは以下のとおりです。
胃切除のアプローチには、おなかを切開して行う“開腹手術”、おなかに小さな穴を開けて腹腔鏡という細長いカメラを挿入して行う“腹腔鏡下手術”、手術用のロボットを操作して腹腔鏡下手術を行う“ロボット手術”の3つの方法があります。
みぞおちからおへそ辺りまで縦に20cm程度切開し、外科医がおなかの中を直接見て、触りながら行う手術方法です。進行がんにおいては開腹手術が標準となります。
手術時間は術式によって異なります。通常、開腹幽門側胃切除術では約3~4時間、開腹胃全摘術では約4~5時間です。術式にかかわらず保険が適用され、目安として3割負担の場合約40~50万円の自己負担となります。
おなかに5~12mm程度の小さな穴を複数開けて腹腔鏡や鉗子という手術器具を挿入し、モニターに映し出された画像を見ながら手術する方法です。ステージⅠの比較的初期のがんに対して標準的に行われています。
開腹手術のようにおなかを大きく切開する必要がないため、傷の痛みや感染などのトラブルが少なく、手術後の早期回復が可能となります。
手術操作が難しいため、開腹手術と比べて1~2時間ほど長くかかります。保険が適用となり、費用の目安は3割負担で約45~55万円です。
アームがついた手術用ロボットを外科医が操作して行う方法で、腹腔鏡下手術をロボット支援下に行うことになります。ロボットアーム先端に装着する鉗子には、540度回転する関節機能がついているほか、手振れを補正する機能がついており、人の手で行う通常の腹腔鏡下手術よりも繊細で正確な操作を行うことができるとされています。
ロボット手術の時間は、腹腔鏡下手術よりも1~2時間ほど長くなります。ロボット手術はほかのがんに対しても行われていますが、胃がんにおいては2018年4月に保険適用となりました。ただし、保険適用で手術ができるのは厚生労働省が定めた基準を満たす施設に限られます。また、術式などによっても適用の可否が異なります。保険適用の場合、費用は腹腔鏡下手術と同等です。
胃がんの手術で起こりうる合併症として、縫合不全、膵液ろう、出血、腹腔内膿瘍、創感染、腸閉塞、他臓器損傷などがあります。合併症の内容と程度によっては再手術が必要になることがあります。出血量が多い場合には輸血が必要になることもあります。
手術後に起こりうる後遺症として、ダンピング症候群、小胃症状、体重減少、貧血、骨粗しょう症、逆流性食道炎、下痢などが挙げられます。
ダンピング症候群は、胃の切除に伴って食物が一気に腸に流れていくことなどによるもので、食後30以内に冷や汗や動悸、めまい、脱力感、頭痛、呼吸困難が起きたり(早期ダンピング症候群)、食後2~3時間経過した頃にめまい、脱力感、発汗、震えなどが起こったりします(後期ダンピング症候群)。
これらの症状は主に食事に関連して生じるため、手術後はよくかんでゆっくり食べる、1回の食事量を少なめにして食事回数を増やすなど、食事の工夫が必要となります。
手術には上記のような合併症や後遺症のリスクがつきまとうため、担当医からの説明をよく聞き、納得したうえで手術を受けることが大切です。
また、入院中や退院後には食事や運動などに関する注意点がいくつかあります。よりよい生活を送るために、医師や看護師、栄養士などの説明をよく聞いて、参考にしましょう。
がん研有明病院 消化器センター 胃外科 医長
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