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胃がん・大腸がんなどの消化管がんの検査について

胃がん・大腸がんなどの消化管がんの検査について
平澤 欣吾 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内視鏡部 准教授

平澤 欣吾 先生

目次
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胃がん大腸がんなど、高齢になるほど罹患率が増加する傾向にある消化管がん。消化管がんの治療では、早期発見が重要です。そして、がんの早期発見のためには、検査が欠かせません。今回は、消化管がんの検査の中で特に重要となる内視鏡検査を中心に、横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター内視鏡部の准教授である平澤欣吾先生にお話を伺いました。

消化器がんとは?
素材提供:PIXTA

消化管がんとは、食べ物を消化するための通り道である食道・胃・小腸・大腸の中にできる固形がんを指します。本記事では、罹患者数が多い胃がん大腸がんを中心に、消化管がんの検査についてお話しします。

国立がん研究センターがん情報サービスによると、男女合わせた部位別のがん罹患数(2017年の全国合計値)は、大腸がんがもっとも多く、続いて胃がんが多くなっています。

部位別のがん罹患数

小腸は、消化管の中でもがんの発症率が低い部位です。小腸がん(十二指腸がん、空腸がん、回腸がん)は、消化管がん(消化管悪性腫瘍(しょうかかんあくせいしゅよう))全体に占める割合は1%~2%とされています。

近年、消化管がんの検査は、内視鏡検査が基本となっています。消化管がんの検査というと、バリウムを内服し、胃の中を撮影するX線検査を想像される方も多いでしょう。しかし、胃や大腸などの内部を詳しく診るためには、内視鏡検査が欠かせません。

内視鏡検査では、先端にカメラの付いた内視鏡を口から挿入し、胃や大腸などの臓器の内部を詳しく診ます。これは、内視鏡で直接病変を観察することによって、早期がんのわずかな病変を発見することができるからです。加えて、内視鏡検査であれば病変を採取し、病理検査を同時に行うことも可能です。

内視鏡検査でがんの病変が認められた場合、周囲の臓器やリンパ節などへの転移がないかを検査する必要があります。そこで、全身を詳しく診るためにCT検査やMRI検査を実施します。

当院では、大腸と小腸に対しても内視鏡を用いて検査を行っています。ただし、小腸の内視鏡検査には特殊な内視鏡が必要であり、基本的には病気を疑った場合に実施することがほとんどです。

ダブルバルーン内視鏡検査

小腸に特化した風船(バルーン)の付いたスコープを口、または肛門から挿入するダブルバルーン内視鏡検査を行います。

カプセル内視鏡検査

大腸や小腸の内視鏡が届きにくい箇所を観察したい場合に、カプセル内視鏡検査と呼ばれるカプセル型の内視鏡を飲み込む検査を実施します。

当院では、消化管がんの早期発見とがんの様子を詳細に把握するために、画像強調内視鏡(Image-Enhanced Endoscopy:IEE)を用いた検査を実施しています。

IEEとは、色の波長を調整したり限定したりすることによって、画像を鮮明に映し出すことができる検査です。消化管がんの内視鏡治療前には、特に病変や血管の様子を細かく診ることが求められます。この波長を絞り込むこと(狭帯域化)によって、病変部を詳しく診ることが可能になります。そのため、画像強調内視鏡を用いた内視鏡検査を実施します。

がんの診断では、血管の分布や密度と表面の模様を観察することが大切です。画像強調内視鏡を用いることで、病理検査前に生体内で血流を確認しながら病変部を拡大して診ることもできます。このように、生体内で正確かつ詳細に診ることができる画像強調内視鏡は、消化管がんの診断において重要な検査の1つになってきています。

画像強調内視鏡で診た病変部の様子
画像強調内視鏡で診た病変部の様子

厚生労働省は、予防の観点から、胃がん子宮頸(しきゅうけい)がん肺がん乳がん大腸がんについて、がん検診の受診を推奨しています。胃がん・大腸がんの検診は、以下のようになっています。

胃がん検診

  • 検査項目:問診、X線検査または内視鏡検査のどちらか
  • 対象者:50歳以上の方
  • 受診間隔:2年に1度

大腸がん検診

  • 検査項目:問診、便潜血検査*
  • 対象者:40歳以上の方
  • 受診間隔:1年に1度

*便潜血検査では、早期発見が難しい場合もあります。

胃がんに対する内視鏡検査の実施件数は増加しています。内視鏡検査では、胃の中を細かく診ることができるため、早期発見につながっています。

そのため、大腸も内視鏡検査を実施することによって、可能な限り早い段階でがんを発見し、早期治療につなげたいと考えています。2019年10月時点では、検診では大腸の内視鏡検査を実施していません。そこで、大腸の内視鏡検査を普及させることによって、早期発見・早期治療に結びつけることが今後の課題であると考えます。

当院には、地域の医療機関からの紹介患者さんが来院されます。紹介患者さんは、地域の医療機関ですでに内視鏡検査を実施している場合もあります。当院では、すでに内視鏡検査を受けられている紹介患者さんに対しても、基本的には再度、内視鏡検査を受けていただきます。

患者さんの中には、内視鏡検査を当院で再度受けていただくことをお伝えすると驚かれる方もいらっしゃいます。しかし、内視鏡治療を行う前に、がんの状態をはじめ、患者さんの臓器の大きさや形状などを正確に把握することが必要不可欠であると判断し、実施しています。特に、胃がん大腸がんは、複数箇所にがんがある場合があります。そのため、当院の消化器病センターでは、消化器内科医が内視鏡検査で正確ながんの状態を診たうえで、内視鏡手術を行うことをポリシーとしています。

内視鏡検査を実施し、がんの状態を精査することによって、隠れたがんを見落とすことなく、可能な限り一度の手術で治療できるように尽力しています。

内視鏡検査で苦痛を感じてしまったことをきっかけに、「もう検査を受けたくない」と思ってしまう患者さんもいらっしゃるでしょう。当院では、鎮静剤を適切に用いて、内視鏡検査の際に患者さんが痛みを感じることが少なくなるように注意を払っています。そのため、リラックスして受けていただきたいと思います。なお、検査時間には個人差がありますが、10分程度になります。

40歳になったら、市町村の検診などを利用して、胃の内視鏡検査を受けてください。

また、胃だけではなく大腸も、40歳になったら1度は内視鏡検査を受けることをおすすめします。これらの検査によって、がんの早期発見・早期治療に努めていただきたいと思います。

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  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 内視鏡部 准教授

    平澤 欣吾 先生

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