概要
十二指腸がんは胃と小腸をつなぐ消化管である十二指腸にできるがんです。空腸がん、回腸がんと共に小腸がんの1つとされています。十二指腸にできる悪性腫瘍にはいくつか種類がありますが、十二指腸がんというと十二指腸の上皮組織から発生する十二指腸腺がんを指すことが多いです。
その他の十二指腸の悪性腫瘍には、神経内分泌腫瘍、悪性リンパ腫、GIST(消化管間質腫瘍)などがあります。
小腸がんはがんの中でも比較的珍しいがんで、1年間に小腸がんと診断される人は約3,200人です。十二指腸がんは小腸がんの中ではもっとも頻度が高く、約45%を占めています。小腸は診断に用いられる内視鏡が届きにくい消化管であるため発見が遅れがちでしたが、近年は検査技術の進歩に伴い早期に発見されることが多くなってきています。
原因
十二指腸腺がんをはじめとして、小腸腺がんが発生する詳しい原因は分かっていません。
症状
早い時期の十二指腸がんの場合、自覚症状がほとんどありません。進行すると、消化管からの出血により便潜血陽性や貧血といった症状や、腸が狭くなることで吐き気、腹痛や腸閉塞といった症状が現れます。また、胆汁の流れが止まってしまうことで、黄疸がみられる場合もあります。
検査・診断
がんが十二指腸の手前にある場合は、通常の胃内視鏡検査の際に偶然見つかる場合があります。十二指腸の奥側は通常の内視鏡で観察が難しいことがあるため、側視型十二指腸内視鏡、あるいはダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡と呼ばれる新しいタイプの内視鏡を使って病変を観察します。
内視鏡でがんが疑われる場合、生検(病変の一部を切り取って、顕微鏡で観察すること)を行って確定診断します。通常の内視鏡やダブルバルーン内視鏡では病変を観察したタイミングで組織を採取できることもあります。
十二指腸がんの診断は内視鏡検査が中心ですが、がんの位置や進行度の評価のために消化管造影検査、腹部超音波検査、腹部CT検査などが必要になります。手術を行う前になると、全身・内臓機能の評価を行うために採血、心電図、肺機能検査などを行います。
また、十二指腸がんがある場合、腫瘍マーカーと呼ばれるCEAやCA19-9が異常値を示すことがあります。腫瘍マーカーは採血だけで調べることができます。ただし、これらの腫瘍マーカーは十二指腸がんのほかのがんでも上昇する場合があることや、十二指腸がんの全ての患者さんが異常値を示すとは限らないことなどから、あくまで診断の補助として使われます。
治療
腫瘍や周辺組織の切除(内視鏡的切除または外科的切除)や、薬物療法が主な治療です。
どのような治療を行うかは、病気の進行度(ステージ)を参考に決定します。
- ステージI:リンパ節転移がなく、病巣が粘膜の比較的表面にとどまっているもの
- ステージII:リンパ節転移がなく、病巣が粘膜の深部(粘膜下層)に達しているもの
- ステージIII:病巣の深さに関係なく、リンパ節転移がみられるもの
- ステージIV:ほかの臓器への遠隔転移がみられるもの
腫瘍や周辺組織の切除
遠隔転移がないステージIIIまでの十二指腸腺がんの場合、病巣の切除を基本とします。このうち、病巣が浅いステージIの場合は内視鏡的切除で治療可能なことがあります。内視鏡的切除は、内視鏡を用いて小腸の内部からがんを切除する方法です。傷口が小さく済むため体の負担が少ないというメリットがありますが、十二指腸は壁が薄く内視鏡的切除によって壁に穴が開く穿孔のリスクが高いとされています。
ステージIでも内視鏡的切除が難しいケースやステージIIからIIIの場合は、お腹を切り開いてがんやその周辺組織を切除する外科的切除が行われます。がんの広がりが大きい場合は周囲のリンパ節も含めて切除する必要があるため、膵頭十二指腸切除術が行われることが多いです。
薬物療法
ほかの臓器への転移がみられるステージIVや手術後の再発の場合は、全身のがん細胞に効果を示す薬物療法が必要になります。ただし、現時点では十二指腸腺がんに効果があると証明された薬が存在しないため、大腸がんに準じた治療、あるいは胃がんに準じた治療が行われることが一般的です。
用いられる薬剤には、フルオロウラシル(5-FU)、レボホリナートカルシウム、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)、カペシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、トラスツズマブ、ラムシルマブ、ニボルマブなどがあります。これらを用いた単独療法、あるいは多剤併用療法が行われます。
多剤併用療法には、胃がんに準じたCF療法、CS療法、SOX療法など、大腸がんに準じたFOLFOX療法、CAPOX療法があり、さらに最近では分子標的薬を併用する治療も行われています。
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