基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)
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がんがあると、血液中に特定の物質が増えることがあります。このような物質を総称して「腫瘍マーカー」といい、腫瘍マーカーのひと一つがCA19-9です。CA19-9は血液検査で調べることができ、血液中のCA19-9の濃度は特に膵臓や胆管、胆嚢、胃、大腸などの消化器系のがんで高くなりますが、子宮体がん、卵巣がん、肺がんでも高くなることがあります。このためCA19-9の測定は多くの場合、消化器系のがんの有無を診断するときや、がんの治療中・治療後に行なわれます。
CA19-9は、すい管、胆管、胆嚢、胃、大腸の消化器や、子宮内膜、唾液腺、気管支腺、前立腺などの細胞で微量に作られていますが、細胞ががん化すると大量に作られるようになります。大量に作られると血液中の濃度が高くなることから、血液中の濃度を調べることで、がんの有無を確認できる場合があるのです。
しかし、CA19-9の値は必ずしもがん(悪性腫瘍)で高くなるわけではなく、良性腫瘍や膵炎、胆嚢炎、胆管炎や、胆石症、肝炎、糖尿病、気管支炎や、気管支拡張症、子宮内膜症など、がん以外の病気でも上昇することがあります。
さらには、明らかな原因が特定されなくても上昇することがあります。この場合には経過を追ってみると数値が上がったり下がったり変動します。また、がんがあっても必ず上昇するとは限りません。
CA19-9は、がんの存在を示す目印になることから、がんの可能性が疑われる場合に検査が行われます。また、子宮内膜症などの病気で高値になることもあるので、がん以外の病気の検査として行われる場合もあります。
医師の指示のもと検査をするケースが多いですが、人間ドッグのオプションに含まれているので、ご自身の判断で検査を受けることも可能です。
診断のためだけでなく、関連する病気に罹患している方の治療効果の評価や、経過観察、手術後のがん遺残・再発の確認を目的として、検査が行われることもあります。
ただし、CA19-9のみで病気を特定できるわけではありません。また、病気の進行度を推し量ることも、がんの発生部位を判断することもできません。あくまで補助的な役割となります。
CA19-9を含めた腫瘍マーカーは、一般的な血液検査で測定します。血液検査の項目によっては食事や服薬の影響を受けますが、CA19-9においては影響を受けません。したがって、検査前に注意することは特にありません。
腕の血管から採血を行うのが一般的で、腕が隠れた衣類を着用している場合には袖をまくり上げて採血します。
袖周りのきつい衣類を着用していると採血後に血液が漏れやすくなってしまうので、ゆとりがあり袖がまくりやすい衣類を着用していくのがよいでしょう。
スムーズに採血ができれば数分以内に終わります。
採血は血管に細い針を刺すので、針を刺すとき時に軽い痛みを感じることがあります。激しい痛みを感じた場合には我慢せず、採血担当者にその旨を伝えましょう。
CA19-9の基準値は37.0 U/ml以下です。この値を超えた場合に陽性となります。
ただし、測定方法や検査機関によって基準値が異なる場合があります。結果については、担当医の説明をしっかりと聞くようにしましょう。
CA19-9は、膵がんや胆管がん、胆嚢がんなどで高値を示すことが多いですが、早期のがんでの陽性率は低く、実際にがんがあっても陽性になるとは限りません。
また、がん以外でも陽性になる場合があります。さらには明らかな原因が特定されなくても陽性になることがあります。
このため、CA19-9はあくまで診断の補助として用いられ、がんの有無を特定するためには精密検査が必要になります。どのような検査が行われるかは疑われるがんによって異なりますが、代表的なものに超音波検査、CTや、MRI、血管造影、超音波内視鏡などがあります。
また、CA19-9はがん患者さんに対する治療効果判定や経過観察、再発を確認するために用いられることも多い検査です。治療中の場合、CA19-9値の推移やほか他の検査データ次第で治療薬の変更などが行われることもありますが、高値であっても治療が順調に進んでいると判断され、特別な対処を必要とせずに現行の治療が継続されることもあります。
CA19-9はがんの可能性を示唆するものではありますが、基準値を超えたからといって必ずしもがんがあるとは限りません。また、CA19-9の値が高ければ高いほど、がんが進行しているというわけでもありません。
値が高いと不安になってしまうものですが、決して値の上下のみでがんの存在や病態の悪化を判断できるものではないので、値の上下に一喜一憂しないことが大切といえます。
ただし、楽観視しすぎるのはすすめられません。陽性の場合には医師の指示に従って精密検査や治療、経過観察を行い、自己判断で中断してしまうことがないようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。