胃がんや大腸がんなどの消化器がんに対する治療では、抗がん薬を用いる化学療法が行われることがあります。化学療法で用いられる薬は、どのような要素を考慮して選択されるのでしょうか。また、抗がん薬を使用すると副作用が現れることがあります。上手に抗がん薬とつきあうためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
本記事では胃がん・大腸がんに対する化学療法の効果とともに、患者さんが治療中に心がけるべきことについて解説します。
がんを切除する手術の前後に行われる化学療法の主な目的は“手術による治療の効果を高めること”です。たとえば、手術後には、体内にわずかに残っているかもしれないがん細胞を破壊するために、手術の補助的な治療として化学療法を行うことがあります。この場合は、抗がん薬によって現れる副作用をサポートしながら、しっかりと治療を行っていきます。
ステージIVなどの進行がんに対して行われる化学療法の目的は、病気の進行を遅らせるとともに、症状の緩和など、病気による体への悪影響を抑えることです。治療の効果と副作用のバランスを確認しながら、病気と共存するために治療を行っていきます。
消化器がんの抗がん薬治療では、複数の薬を組み合わせて治療する併用療法が行われることがあります。研究(臨床試験)によって効果と安全性が証明された治療法、つまり標準治療を選択することが推奨されていますが、副作用出現時の悪影響などを前もって考慮して治療法を選択することもあります。そのうえで、個々の患者さんの状態に応じて、抗がん薬の量や支持療法*を治療前や治療中に調整していきます。体力や年齢、症状など患者さんの状態によっては、単一の薬で治療を行うこともあります。
*支持療法:がん治療に関連する症状を軽減させるための治療のこと
当院では、主に以下の3つの要素を考慮して、抗がん薬治療で用いる薬を選択しています。
考慮すべき要素の1つは、患者さんの病気の状態です。主に、がんが発生している場所やその状態、病気の進行スピード、副作用出現時に懸念される患者さんへの影響度などを考慮し、有効性(その薬や治療法による治療効果の割合や期間)や副作用の種類・頻度なども合わせて、薬や治療法を選択します。
患者さんの年齢や体力、ほかに抱えている病気なども、考慮すべき要素の1つです。具体的には、心臓の病気を患っていないか、腎臓の機能が悪くないかなど、患者さんの体の状態を確認していきます。
また、臓器の機能の状態以外に、ほかに抱えている病気によっても薬の種類を変更したり、薬の量を減らしたりするなどの調整を行うことがあります。
患者さんのライフスタイルも、考慮すべき要素の1つです。たとえば、患者さんの仕事内容によっては、避けたほうがよい副作用もあります。あるいは、患者さんが置かれている経済的な状況から、費用の面を考慮しなくてはならないケースもあるでしょう。
また、ご家族など周囲のサポートをどれくらい受けることができるのかということも、薬の選択の際に考慮します。たとえば、副作用が現れたとき、身近な人からサポートを得ることができず、すぐに受診することが難しい状況であれば、副作用の強い薬を避けることもあります。
がんの抗がん薬治療では、さまざまな副作用が現れる可能性があります。そのため、抗がん薬治療を受けるときには、次の2つのことを心がけるとよいでしょう。
抗がん薬治療を受けているときには、主治医との対話を大切にしましょう。特に、現れる可能性のある副作用について、しっかりと主治医と相談しながら、治療を受けていただくことが大切です。治療に対する知識をお互い共有しながら、セルフケアも日々の生活で大切になってきます。診察ごとに主治医と状況を確認しあいながら治療を進めていきましょう。また、副作用があまりにも強い場合には、主治医と相談のうえ、休薬や薬の変更などの調整について話し合うとよいでしょう。
副作用に対する緊急時の対応については、治療の説明のときに医師よりある程度伝えられます。たとえば、ご自宅でできる対応として、熱が出た場合には特定の薬を飲むよう指導されることがあります。また、副作用による症状が長く続く場合には、休日や夜間であっても受診することも大切です。
そして、副作用が現れたときに必要なサポートを受けられるよう、ご家族にも治療によって起こりうる副作用について理解してもらうことが重要です。そのため、治療に関する話し合いのときには、できるだけご家族も一緒に説明を聞いておくのがおすすめです。仕事を続けながら抗がん薬治療を受ける場合は、職場の方にも副作用について理解してもらうとよいでしょう。
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